アメリカで5番目に買ったハワイの家
私は、2002年の秋、ホノルルのマキキと言う地域に300平米以上もある6LDKの大きな家を買いました。有名なアラモアナ・ショッピングセンターから山に向かって行って、高速道路を越えたところ辺りです。当時は、3人の子供たちもまだ学生でしたし、どうせホームステイを頼まれることは分かっていましたので、部屋数が多くて便利な場所にしたのです。予想通り、買ったその日からホームステイを頼まれ、家族だけで住んだ日は一日もありませんでした。何十人のも方がホームステイしたり、部屋借りをしたりしましたし、一晩でも泊まった人を全部数えると、何百人もいると思います。
息子の16歳の同級生がホームレスになったので何か月か住まわせたこともあったし、日本で産むことを恥じた未婚の母がうちに来て赤ちゃんを生んだこともありました。拳銃強盗をしたお母さんが更生して娘さんと一緒に住んだこともありましたし、日本人高校生が奇跡的な巡り合わせでハワイ一のオペラ・プロダクションで歌ったこともありました。レイプの犠牲者で対人恐怖症の女性もいれば、ハーバード卒の日系人心理学者もいました。
しかし、次男以外は子供たちも家を出て行き、empty nester(小鳥が巣立って空の巣に住んでいる親鳥)になってしまった私たちは、次男に勧められて(ねだられて)、彼と半分づつお金を出して2LDKのマンションを買い、引っ越すことにしたのです。となるとこの家を貸さなければならないのですが、ちょうどその時、次男が働いているホームレスシェルターから、家を貸してくれないかと言う話がありました。
ホームレスの養護施設として貸出
ホームレスの方は、退院してもすぐにはホームレスの生活には戻ることが困難で、またすぐに病気が悪化して入退院を繰り返すことになります。ホームレスでも低所得者向けの健康保険に入ることは可能ですが、どうせ自己負担分を払うお金がないので、わざわざ保険に入らない人が多いのです。しかし、病院は法律上治療を断ることはできません。1年で1億円ほどの医療費を使う人もいるので、病院や納税者にとって大きな負担になるのです。
と言うわけで家を貸すことにしました。家賃はハワイ一のクイーンズ病院と、キャッスル病院が出しています。最初の1年だけでも、数億円の医療費を削減することができたそうです。
アメリカのマイホーム控除
それは良いのですが、一つ困ったことが浮かび上がりました。日本と同じように、アメリカにもマイホーム控除と言うのがあります。夫婦の場合は50万ドルで、キャピタルゲイン税率が20%ですから、最高10万ドルの節税が可能です。日本の場合、よほど大昔に買った家でない限り、大きな売却益が出ることはありませんが、16年前に買ったこの家は、2.5倍以上の価値に膨れ上がっていますので、売却益は50万ドル以上あります。
ところが、売却時前の5年間のうち2年間その家に住んでないと、この控除がなくなるのです。つまり、3年以上続けて貸すとなくなるということです。それを復活させるためにはまた戻って2年住まなければなりません。そんなことはできないので、売ることにしました。ちょうどそのころ、私はコールドウェルバンカーのエージェントになったのです。と言うわけで、自分の家が最初の売り物件になりました。
日本で買い手を探したが・・・
養護施設として使い続けてもらいたかったので、マイホームを探している人ではなく、投資家に売ることにしました。日本の不動産業者をたくさん知っていますので、日本の投資家に売ったらどうかと思いました。というのは、シェルターがほぼすべて管理してくれるので、オーナーはすることがほとんどありませんし、ほとんどの修理代はシェルターが出してくれますので、ネットリースのようなものです。また、ハワイでは、物件をシェルターのような非営利団体に貸すと、固定資産税が年間一律$300に減ります。
すぐに売れるだろうと思って探りを入れたのですが、思ったほど簡単ではありませんでした。と言うのは、日本の方は、ホームレスの養護施設に投資をするということに、抵抗を感じる方が多いようです。ハワイの投資と言うと、ビーチに面した高級物件などを思い浮かべると思いますが、ホームレスはちょっと…、と言う方が多いのです。ハワイは家賃が高いせいもあり、アメリカでは人口当たりのホームレスの数が一番多い州なので、良い社会貢献だと思うのですが、なかなかそうはいきませんでした。
投資物件として物件を再アレンジ
そこで、正式に売りに出す前に、市場家賃を調べてみました。月$4,100で貸していたのですが、このサイズの家の市場の平均は$5,500でした。私は早速シェルターに連絡して、このままでは売れないかもしれないので、市場家賃に上げるよう提案しました。シェルター側も快く承諾してくれました。こうして、16年前に50万ドルで買った家を135万ドルで売りに出したのです。キャップレートは4.5%で、これは一軒家としては良い数ですし(市場家賃で貸して経費が低いので)、アパートと比べても悪くありません。
こうして売りに出して2か月後、129.5万ドルで無事売買契約をすることができました。2か月と言うのは、投資物件としては平均的です。この養護施設はとても役に立っていますので、シェルターはもう一軒家を借りることを計画中だそうです。と言うわけで、売れてできたお金で養護施設用の大きな家を買おうかと考えています。皆さんも、ご興味のある方はご連絡ください。
ホームレス養護施設とは
この物件のテナントは、Institute of Human Servicesというハワイの非営利団体です。IHSはいろいろな活動をしていますが、この家は、病気になって退院したばかりの住宅確保困難者の方のための、介護療養施設として使われています。退院しても、落ち着いて住める家がないと、病気が完治せず、入退院を繰り返すことになりますので、そのような方を支援するのが目的です。全員、病院での審査を受けた方ばかりですので、集団生活ができないような精神的問題を抱えた方が来ることはありません。資金は、ハワイ最高の医療施設であるクイーンズ病院とキャッスル病院が出しており、初年度(2016年度)だけでも数億円の医療費の削減ができ、病院と納税者に大きな社会貢献をしています。