Youtubeで不動産コラムをながら聴き

割引キャッシュフロー攻略⑤DCR(債務回収比率)  

DCR:債務回収比率

今回は、もう一つ新しい言葉をご紹介しましょう。DCRDebt Coverage Ratio)は債務回収比率とか、借入償還余裕率などと訳されます。DSCRDebt Service Coverage Ratio)とも呼ばれますが、同じ意味です。

計算は、NOI営業純利益)÷ADS(年間負債支払額)=DCRです。ということは、ADSNOI÷DCRということになりますし、NOI=ADS×DCRということにもなります。これは、貸出限度額を計算するために銀行が使うもので、例えばDCR1.25であれば、ADS100円につき125円のNOIがなければならないということになります。NOIが予想できれば、ADSの上限が計算できますので、それが分かれば、ローンの貸出限度額もわかるというわけです。それではちょっとやってみましょう。いつもおなじみの物件を例にしてみます。

銀行が要求するDCRからローン限度額を計算する

ある投資家が、5千万円のNOIがある物件を10億円で購入することを考えています。ローンの条件は、30年ローンで金利3%す。銀行が要求するDCR1.25だとします。ということは、ADS5千万円÷1.2540,000,000円以下でなければならないということです。これをさらに12で割ると、毎月の支払限度額が出ますが、3,333,333円です。これをもとにローンの額を計算すると、790,631,193となります。実際にはこんな端数を借りることはないと思いますので、7.9円ということになるでしょうか。

LTV:ローン資産価値比率との関係

仮にこの銀行のLTVが最大80%であるとすると、LTVを使って計算した貸出限度額は8億円ですが、債務回収比率を使った貸出限度額は7.9億円ということになりますので、通常少ない方の額に基づいて限度額を設定します。銀行は、資本的支出も引いてNOIを少なく評価する傾向がありますので、その場合はさらに低い額になるということです。

米国・日本の相場の違い

米国のDCRの相場は、1.151.35くらいですが、日本はもっと高いようです。家賃が値上がりするのが普通である米国では、家賃収入が増えていきますので、NOIも増えます。ある日本の投資家が、去年ハワイで物件を購入し、もうすぐ家賃が3%ちょっと上がりますという報告を先日したばかりですが、随分喜んでくださいました。私が貸している物件もちょうど今日入居者に3余りの値上げの通知をしましたが、その値段で更新してくれるそうです。これはアメリカではごく普通のことです。場所によりますが、日本では家賃収入が下がる可能性が大きいので、NOIも減りますNOIが減るとDCRも下がりますので、最初にちょっと余裕を持たせる必要があるのでしょう。

バブル経済崩壊の一因

30年前、日本の銀行がちゃんと収益還元法を使って物件の価値を出し、その価値とLTV(ローン資産価値比率)に基づいてローンを出していれば、バブルの崩壊はなかったでしょう。また、仮に正しい物件評価ができなかったとしても、債務回収比率を使って貸出限度額を設定していれば、日本の歴史は変わっていたかもしれません。