不動産投資による節税の理解のために
先日のブログ、「不動産投資は減価償却にもレバレッジをかけられる」で、簡単に不動産投資の節税の仕組みについてお話をしましたが、どのような人が節税できるのか、いくらくらいの物件を買えばいいのか、頭金の割合、保有期間など、具体的な例を上げながら総合的な説明をシリーズでお伝えしようと思います。今回は、その序論として、税金の計算と節税の仕組みを簡単にご説明します。
念のために書いておきますが、このブログは個人の所得税の話であって、法人税ではありませんので、ご注意ください。
課税所得の計算
税金を計算するには、課税所得をまず出さなければなりませんが、以下は、給与収入しかないサラリーマンの例です。話をややこしくいないために、復興特別所得税は計算から省きます。
- 給与収入-給与所得控除=給与所得
- 給与所得-所得控除=課税所得
給与収入とは、勤務先から受ける給料、賞与などの収入を言います。給与所得控除は、事業者がいろいろな出費を経費として落とせるのに比べ、サラリーマンはそれができないので、公平にするために設けられたものです。額は、給与等の収入金額に応じて、次のようになります。
所得控除とは、基礎控除と社会保険料控除以外、各納税者の個人的な事情を加味して税負担を調整するもので、以下があります。前述した給与所得控除と基礎控除と社会保険料控除は、個人の事情に関係なく同じように計算しますが、そのほかの控除は、人によって額が異なり、0のものもあります。
所得控除の中で最も大きいものが社会保険料です。健康保険、厚生年金保険、雇用保険と3つあります。その中で健康保険は地域によって多少違いがあります。最も低い地域は新潟県で9.63%、最も高い地域は佐賀県で10.75%です。ちなみに東京は9.9%です。
所得控除と税額控除の違いを理解する
ここで注意しなければならないのが所得控除と税額控除の違いです。今まで話してきたのはすべて所得控除で、控除される額だけ課税所得が減るという意味です。1万円の所得控除があると、課税所得が1万円減りますが、税金自体が1万円減るわけではありません。それにくらべて、税額控除は税額から差し引けるもので、住宅ローン控除はその一つの例です。例えば不動産業者からワンルームマンション投資を勧められた場合、〇〇万円の控除がありますと言われても、その額税金が減ると考えてはいけません。そう勘違いして投資したとしても、業者は嘘をついているわけではありませんから、訴えることはできません。
このようにして課税所得を出し、それをもとに税金を計算します。以下の式はそれを簡単に表していますが、一つ誤解を招くことがありますので、それは後で説明します。
- 課税所得×所得税率=所得税
所得税の算出
具体的な数を示したのが、以下の表です。
この表は、左の欄が課税所得で、千円の位に切り捨ててあります。それでは、前述した誤解がないように説明しますが、課税所得が4千万以上の人は、全額に45%の税率をかけるのではなく、最初の1,949,000円は5%の税率をかけます。1,950,000~3,299,000円は10%をかけ、同じプロセスを39,999,000円まで続けます。45%をかけるのは、4千万円以上の課税所得だけです。
いちいちこの計算をするのは面倒なので、右に控除額という欄が設けてありますが、次のように使います。この「控除」という言葉は混乱を招きますが、所得控除と税額控除とは関係ありませんので、課税所得×税率から「引く額」と理解してください。
- 課税所得×税率-控除額=所得税
例えば、課税所得が2千万円の人の所得税は、以下のように計算します。
- 20,000,000×40%=8,000,000
8,000,000-2,795,000=5,205,000 ←これが納税額になります。
給与収入の税率早見表
以下は、給与収入の税率がすぐにわかる表です。この表は、全員同じように計算される給与所得控除と基礎控除と社会保険料控除は考慮していますが、その他の所得控除額は状況によって異なりますので、計算に入れていません。また、税率は、住民税を入れた率にしてありますので、国税の税率だけの場合より10%高くなっています。住民税は、地域によってわずかに異なりますが、ほぼ10%ですので、一律10%で計算しました。
最後に、念のためご注意しておきますが、納税額は、給与収入に税率をかけて出すのではありません。給与所得(給与収入-給与所得控除)に税率をかけて出すのでもありません。給与所得から適用されるすべての所得控除を引いて出した課税所得に税率をかけますが、これも前述しましたように、全額に同じ税率をかけるわけではなく、段階的にかけますので、くれぐれもご注意ください。