今日は、米国の住宅の売れ行きが如何に好調かを肌で感じていただくために、いくつかのエピソードや統計をインマンの記事からご紹介したいと思います。また、このところ戸建ての中央値が毎月記録を更新し続ける、ホノルルの3月及び第一四半期の住宅市場統計も解説します。
郊外の価格が高騰
米国では、ニューヨークやサンフランシスコのように不動産が高いところもありますが、ちょっと郊外に行くとお手頃の物件が買えると皆が思っていました。しかし、パンデミックで郊外に戸建を購入する人が増え、しかも、在宅勤務でかなり離れた場所に住んでも差し支えなくなったので、大都市から1~2時間離れた場所でも価格が急騰しています。いや、そういう場所の方がむしろ上がっています。
現金でないと買えない?
今は、現金でオファーする人が絶対的に強く、ローンを借りることができたらという条件付きの人、特に、FHAと呼ばれる連邦住宅局の頭金が少なくて済むローンを借りないと購入できない人は、ローンの対象となる物件に関する規制が厳しいため、オファーが受け入れられることはほとんどないそうです。そういう人には、もう少し売れ行きが鈍るまで待ってからにしましょう、となだめるよりほかありません。
それ以外にも、ローン以外の条件を削除したり、手付金を高くしたり、中には通常行われる専門家による家の点検をしなくても良い、というオファーを出したりすることもあります。私がお世話したある物件も、ちょっと問題のある物件で、ローンが出ないかもしれないと心配していたのですが、売りに出した日に現金のオファーがありました。しかも、かなり高く売りに出したにもかかわらず、フルプライスのオファーだったのです。
パンデミックの影響で人気になった地域
テキサス州オースチンのティム・ヘイルさんが2009年にエージェントになった頃は、オースチンには2万戸近い在庫があったそうですが、現在は千近くまで減ったそうです。一日に百戸近く成約しますので、11日で在庫がなくなる計算です。ちなみに、健全な市場は6か月と言われています。彼が売った物件の中で最もオファーの数が多かったのは150。売出価格より$40万も高く売れた物件があるそうです。
オースチンでも人気のボールディン・クリークは、物件が売りに出るとオファーが30~100あるそうで、住宅価格の中央値は、2012年に$299,000だったのが、今は$650,000。その多くはコンドで、戸建ての最安物件は、たった75平米で$733,333。ずいぶん縁起を担いだ売値ですね。
それでもサンフランシスコ湾沿岸よりはましです。湾の東岸にあるオークランドは、サンフランシスコが高すぎて住めない人の市場でしたが、今はシリコンバレーで年収何十万ドル(何千万円)も稼いでいる人が買いあさって、売出価格より百万ドル(1億円以上)高く売れた物件もあるそうです。
大都市近郊だけではありません。サウス・キャロライナ州のアンダーソンは、アトランタとシャーロットに中間にある人口3万の市で、どちらからでも車で2時間余りですが、それでも売出価格より$25,000くらい高くオファーしないと買えないこともあるとか。こんな田舎でも、10回くらいオファーしてやっと買えたという人もいるそうで、売り側のエージェントが、売主がオファー断ったという連絡さえしてくれないこともあるそうです。百のオファーがあれば99人にその連絡をしなければなりませんので、当然かも。
家を買うための苦労
私の主任ブローカーは、「お涙ちょうだい」作戦に出ました。オファーがたくさんあるだろうということは分かっていましたので、家族の写真を添え、「この家が買えたら大事に使って良い想い出をたくさん作りたいです」風の手紙を添えて出したところ、何と23のオファーの中から選ばれたのです。宝くじが当たったみたいな感じですが、さすがですね。
ホノルルの住宅市場の状況
ホノルル市場の統計はどうなっているでしょうか。3月の戸建ての売買件数は、コロナの影響が出る前の去年の3月に比べて19%増ですが、コンドは何と53%増。今年と去年の第一四半期を見ても、それぞれ12%増と33%増ですので、コンドの上昇が目覚ましいです。しかし、中央値は戸建てが3月も第一四半期も前年比17%増で、$95万は3か月連続で新記録更新です。それに比べて、コンドは3月が4%増、第一四半期は6%増にすぎません。
第一四半期に売出価格以上で売れた戸建ては、去年が19%だったのが今年は50%。コンドは去年が10%で今年は29%です。戸建ての成約までにかかる日数は、過去3か月いずれも9日で、これもタイ記録です。コンドも3月は14日、第一四半期は17日で、前年比で45%減です。売出物件数は、四半期で見ると減っていますが、3月だけを見ると、前年比で戸建てが13%、コンドが17%増えています。しかし、去年が低かったので、全体的トレンドとして増えたとはまだ言えません。
戸建ては、$80万以下の物件取引が36%減ったのに対し、$150万以上は113%増。安い物件がなくなりつつあることを物語っています。戸建てが買えなくなるので、これからはコンドが増えるだろうという私の予想は当たっているようですが、価格の上昇はまだのようです。今が買い時なのか、それとも金利上昇で熱が冷めるのか、迷うところですが、慢性の住宅難は金利上昇で解決されるわけではありません。
私がお勧めする、ハワイで今買うべき地域
今コンドを買うとすれば、ワイキキをお勧めします。ワイキキは、3月の売買件数が前年度比で88%も増えているにもかかわらず、価格の中央値は2%下がっているのです。四半期で見ても、前年比で21%増えているにもかかわらず、価格は同じく2%下がっています。観光客の減少で、経済的に売らざるを得ない投資家が増えていたのではないでしょうか。ちなみに、2021年第一四半期の中央値は$395,000です。ホノルル全体より低いのは、ワンルームが多いからです。
参考 Inventory insanity: Notes from 'exhausted' agents on the front lines of a crazy marketinman 参考 America's hottest neighborhoods: Bouldin Creek in Austin, Texasinman
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