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ケラー・モーゲージ、大量採用後150人解雇  ーインマンー

日本にも上陸した不動産フランチャイズのケラー・ウィリアムズ(KW)は、エージェント数では米国一です。不動産取引を総合的に取り扱うことができるようにするため、多くの関連産業に参入し、住宅ローンのケラー・モーゲージもその一つですが、今日は、複数のインマンの記事から、経営が期待通りに行ってないことを解説します。

ケラー・モーゲージに何が起こったのか?大量採用後の大量解雇

ケラー・モーゲージは、金利の下落でローンの借り換えが増え、コロナ・ワクチンの普及で住宅購入の新規ローンも増えることを予想して、1年足らずで530人の従業員を1,000人に増やしたのですが、その後まもなく、150人を解雇するになりました。金利が上がり始め、借り換えも売買も減ったのが原因ではないかと言われていますが、他の住宅金融業者もリストラするかもしれません。

金利(折れ線)と目的別のローン件数(2018年10月~21年9月)
紺:購入、黄:残高以上の借り換え、青:残高借り換え

 

ケラー・モーゲージのローンは、購入目的が多く、2020年に出した$56.3億のローンの69%が購入のための新規ローンでした。グラフを見ると、米国全体では、逆に60%以上が借り換えです。ちなみに、日本で借り換えをする場合は、通常ローン残高を借り換えますが、米国では、残高以上に借りて、既存ローンを完済して残る非課税のお金を自由に使うこともよくあります。

KWは低金利の時期だけではなく長期的に社員に投資すると謳ったツイッター広告

 

つまり、ケラー・モーゲージは、売買に使うローンの増加を見込んで2020年8月から採用募集を始めました。その多くは、ローン審査などの事務系の従業員で、本社はオハイオ州コロンバス郊外のダブリンですが、全国各地で在宅勤務をしていました。求人広告には、ケラー・ウィリアムズのエージェントがビジネスを持ってくるということが謳われています。その場合は購入者のローン手数料は0で、その他の購入費用を$1,000出してくれます。

千人達成を祝うリンクトインのポスト(2021年5月)

 

こうして、21年5月、社員1,000名になり、1年足らずでほぼ倍増しました。しかし、これをリンクトインにポストした人事課の募集担当も、7月には解雇されました。ある元社員の話によると、仕事の量が足りなかったとのこと。別の元社員は、「個人的には、もっと深い問題があると思う…会社を成長させるための計画が他にもあるようだが、うまく行っていない」と述べています。

KWのCEOインタビュー:在庫とIPO

 

ケラー・ウィリアムズにとってケラー・モーゲージとは

KWの持ち株会社KWxのCEOとして雇われたカール・リーバート氏の最初の仕事は、KW不動産やケラー・モーゲージなどの子会社を新持ち株会社の構造に埋め込むことだったと述べています。IPOをするとしても、会社がまとまっていなければならないというわけです。第2四半期の報告によると、KWのエージェントは海外も含めて4,277人増え、米国カナダの売買総額は$1,453億で、前年比で70.3%増です。しかし、ケラー・モーゲージに関する報告はありませんでした。

KWの2021年第2四半期報告

 

私のような部外者が物申すのは顰蹙を買うかもしれませんが、私から見ると問題は明らかです。この記事の記者がなぜそれに触れていないのかが不思議なくらいですが、売買の総額が四半期で$1,453億あるにもかかわらず、ローン総額は1年に$56.3億しかないのです。売買総額は、今年の第2四半期は前年比で70.3%も増えていますし、ローンの額が売買価格より低いことも計算に入れなければなりませんが、2桁も違うのです。

KWのモデルは、エージェントにとって特に利益はありません。先ほどの求人広告に、エージェントが仕事を持ってくると書いてありましたが、彼らにとっては、顧客がどこからローンを借りようが、関係ないのです。私も、以前米国の巨大フランチャイズに属していたことがありましたが、その持ち株会社には不動産管理のフランチャイズもありました。しかし、エージェント達は、そこは良くないから頼まないと、堂々と公言していました。エージェントは社員ではなく自営業ですし、それでなくても米国には関連会社を使わなければならないというプレッシャーは日本ほどありませんので、個人的に信頼できる管理会社を紹介していたのです。

ケラー・モーゲージの金利やポイント(1ポイントはローン総額の1%で、手数料とは別)が競合他社と比較してどうかは知りませんが、手数料は大した額ではないので、それを0にしたくらいでは、大きなインセンチブにはならないでしょう。金利やポイントに比べると、微々たるものですので、ローン自体に競争力がなければならず、仲介したのがKWだからローンもKWに頼むという理由はないのです。

ベター・モーゲージとの違いは?

それに比べて、先日のブログでご紹介したベター・モーゲージは、仲介業にも参入し、ベター不動産を利用した場合のコミッションは0です。通常5.5~6%のコミッションが0になるのですから、顧客はベター不動産を利用するでしょう。0にできるのは、ベター不動産のエージェントは、ベター・モーゲージから仕事が来るので、営業にほとんど時間をかける必要がなく、コミッション0でも、ベター・モーゲージの利益の中から給料をもらえるからなのです。これが両社のモデルの決定的な違いです。どちらももうすぐ株式公開をする予定ですが、私ならベターに懸けます。

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 KWが、不動産取引を総合的に取り扱うことができるようにするため、多くの関連産業に参入し、住宅ローンのケラー・モーゲージもその一つですが、今日は、複数のインマンの記事から、経営が期待通りに行ってないことを解説しました。このチャンネルではハワイの物件情報や、アメリカ・ハワイの不動産マーケットの情報をお届けしています。アメリカの不動産に興味のある方、ハワイで不動産を持ちたい方は是非チャンネル登録をお願いします。

ケラー・モーゲージ、大量採用後150人解雇:インマンより
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