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正直不動産第5話:売家のインスペクション

 登坂不動産で営業トップの永瀬財地(山下智久)は、詐欺まがいの商法で成績を上げてきました。ところが、ある日突然、たたりで嘘がつけなくなり、成績が急降下。第5話では、長瀬の部下の月下(福原遥)が、母と離婚して行方が分からなくなっていた父と出会い、家探しを助けるというエピソードです。

 父が見つけたのは、悪徳業者、ミネルバ不動産が転売しようとしていた分譲タワマン。築5年であるにもかかわらず、修繕に大金を使ったばかり。何かあると勘繰った長瀬は、欠陥があるに違いないと言って、契約寸前の月下の父を止めます。何の根拠もなく契約を邪魔されたミネルバ不動産は、マンションの点検は既に済ませていると主張。まずここが問題です。売主がした点検を信じるのはバカ。月下の父はコンサルタントだそうですが、何のコンサルをしているのやら…。

日本では点検しない

 家を買う前に点検するということは、日本ではあまりありません。するとしたらシロアリの検査くらいでしょうか。弊社が、あるビルの仲介をした時の話です。買主がアスベストの有無を点検したいと言ったところ、売主は、親戚の建築士に頼んで建ててもらったもので、アスベストは絶対に使ってないと主張しました。

 買主はプロでしたので、見つからなければ点検費用は買主が持ち、見つかった場合は売主が持つという条件を出して、点検をしました。後で文句を言われないよう、売主立ち合いの下で調べたところ、見つかったのです。シロアリやアスベストに限らず、なぜ日本でももっと点検をしないのか、不思議です。

米国ではする

 米国では、家の点検は買主がします。必ずと言っていいほど点検をしますが、最近は売り手市場なので、その権利を放棄する買主もいます。瑕疵が見つかったときにどうするかの交渉や契約破棄の可能性がなくなりますので、売主にとっては、より確実に契約価格で売れ、有利です。複数のオファーがある場合に、点検の権利放棄をした買主が選ばれる可能性が高くなるのです。

 ところで、いったん見つかった瑕疵は、次の買主にも開示しなければなりません。日本ではこの義務がないので、同じことを何度も繰り返し、時間も費用も無駄になります。

するのは売主か買主か

 しかし、最近、点検は売主がすることにしたらどうかと考える人も増えてきました。買主だって、物件にどのような問題があるのかないのかを知っていた方が、安心してオファーできます。オファーした後に瑕疵が見つかって、それに対処するのは、買主にとってもいやです。問題は、売主が雇ったインスペクターを信用できるかという点です。

 鑑定は、ローンを借りるために必要で、買主がします。しかし、買主は鑑定士を選ぶことができない仕組みになっています。同じように、インスペクターも選べないような仕組みを作れば、売主が売りに出す前に点検を済ませても、信頼できるのではないかというわけです。

 話を元に戻しますが、月下は、自分でインスペクターを雇い、ウォーターベッドが裂けて床が水浸しになり、床下のコンクリートがちゃんと乾燥していないことを発見。無事、父を欠陥マンションから守ることができました。

 ウォーターベッドの水でコンクリートが爆裂し、タワマンの床が崩れるかもしれないと言う長瀬のセリフはちょっとオーバーですかね。カビでフローリングの取り換えなければならなくなる、くらいの方が現実的かも。いずれにしろ、乾燥には何週間もかかりますので、購入して引っ越してから発見した場合は、大変な目に逢っていたでしょう。

 ポイントは、一生で最も高額の買い物をするというのに、点検もしないで、不動産業者を信じてしまっていいのかということです。このお父さん、もともと悪徳不動産会社に勧められて無理なローンを組んでマイホームを買い、支払いができなくなったことが原因で離婚しました。この欠陥マンションは、再婚して新しい家族と住むためのものだったのですが、また同じような目に会うところでした。

 ところで、そもそも長瀬はどのようにして修理をしたことを発見したのでしょうか。この水漏れは、タワマンの共用部分にも被害をもたらした可能性が高く、それは組合の記録に残っているはずです。戸建ての場合は、近所の人にでも聞かなければわからないでしょう。

 しかし、米国では、ほとんどの場合、大規模な修繕には建築許可が必要で、それは情報公開されています。しかし、ちゃんと許可を取らないで修理をすることもあります。特にハワイは許可を取るのに時間がかかり、降りるまで、水漏れなどの修理をずっと待っていることはできません。結局、許可なしに修理してしまうことが多いので、ご注意ください。