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米国投資不動産の所有形態:LLCが最適

 私はIREM(全米不動産管理協会)とCCIM(全米認定不動産投資顧問協会)の通訳をしています。両協会のすべてのコンフェレンスや、資格を取るために必要なセミナーの通訳、またその教科書の翻訳をしてきました。

 私が翻訳をするときは、外来語を知らない人でもわかるように、できるだけ日本語の訳語を使うようにしています。ほとんどの場合それでいいのですが、実際に米国で投資をする人にとっては、少しでも英語を覚えたほうが役に立ちます。私も、このブログで時々大切な用語の説明をすることがありますが、これからはもっと説明を増やしていきたいと思っています。不動産英語の学習サイトとしても利用していただければ幸いです。

 ところで今日のトピックは、投資不動産の所有形態です。住居や別荘など、個人の所有形態に関しては、「【単独?夫婦の所有?共同?】ハワイ不動産の所有形態」をご覧ください。投資不動産は、法人が所有することが多いと思います。メインランドに法人を作ってハワイ州の物件に投資をすることもあると思いますので、米国全体の話を簡単に解説したいと思います。

 ちょっとその前に但し書きを書いておきますが、私は弁護士ではありませんので、ここに書いてあることのみを頼りにして所有形態を決めることは避けてください。必ず、弁護士や公認会計士などの専門家の意見を聞いてください。これは米国ではよく言われることで、私は、不動産エージェントはコンドの内規でさえ自分で読んでクライアントに意見を述べるべきではない、と教わりました。コンドの内規は法律文書ですので、弁護士に読んでもらってくださいとクライアントに言うべきだというのです。

Tenancy in common

 それでは本題に入りましょう。まず、上記のブログにも書いた共有不動産権(tenancy in common)から始めたいと思います。この形態は、親族間、あるいは親しい友人と別荘を購入したりするときに使われることがありますが、投資でも使われることがあり、法人を作る必要がありません。最低二人以上の所有者が必要で、それぞれが決められたパーセンテージ所有権を持つことになります。

 管理運営は、全員がその権利を持ちます。債務は連帯責任です。税金申告は、それぞれの所有権のパーセンテージに沿って損益を申告します。

General partnership

法人の場合は、まずジェネラル・パートナーシップ(general partnership)があります。最低二人必要で、全員ジェネラル・パートナー(general partner)になります。日本語では無限責任パートナーです。全員が管理運営に携わることができ、レンダー(lender)、つまり金融業者とディベロッパーが協力して物件を開発するときなどによく使われます。それぞれが専門家ですので、強力な管理運営チームになれます。

 ジェネラル・パートナーは、投資した額に関係なく、全員がパートナーシップの負債に対して全責任を負います。例えば弊社の河野社長が$99万、私が$1万出資して物件を買って、破産したとしましょう。管理運営はほとんど河野社長がし、私は彼の通訳をしただけでも、河野社長が支払えなければ、私が全額支払わなければならなくなります。ですから、相手を選ぶことが非常に大切です。

Limited partnership

 次に、リミテッド・パートナーシップを設立して投資物件を所有する場合を説明しましょう。リミテッド・パートナーシップ(limited partnership)とは、少なくとも一人の無限責任を有するジェネラル・パートナー(general partner)が必要です。有限責任を有するリミテッド・パートナー(limited partner)は、パートナーシップの管理運営(マネージメント)をすることはできません。

LLC

 少人数で投資をする場合、ジェネラル・パートナーが無限責任を負い、リミテッド・パートナーがマネージメントに口を挟むことができないというは、好まれないことが多いです。そこでできたのが、LLC(limited liability company)です。直訳すれば有限責任会社ですが、日本の合同会社に似ているのではないでしょうか。しかし、英語を日本語に置き換えて覚えるのではなく、そのままLLCと覚えてください。

 LLCは、一人でも設立できます。LLCの場合、マネージメントをするのはジェネラル・パートナーではなく、マネージング・メンバー(managing member)と言います。日本語では、業務執行社員とか呼ばれるようですが、これもそのまま英語で覚えましょう。LLCでは、マネージング・メンバーも有限責任です。

 LLCでは、マネージング・メンバーだけでなく、すべてのメンバーが会社のマネージメントに関する投票権を持ちます。すべてのメンバーの責任が有限であること、またすべてのメンバーがマネージメントの問題に関して投票権があることが理由で、この所有形態が最も一般的です。

 例えば、私と社長の河野がお金を出し合って物件を購入したとしましょう。Kono & Ono LLCなどと何の変哲もない名前を付けてLLCを作り、そのLLCが物件の所有者になります。ですから、私も河野社長も、この物件のオーナーではありません。持っているのはLLCの一部です。私も河野社長も、この物件のマネージメントに携わることができます。しかし、これは、ジェネラル・パートナーシップ同様、相手次第ではよくないこともあり得ますので、くれぐれもご注意ください。

 ところで、責任が有限であるということはどういうことでしょうか。例えば、Kono & Ono LLCを作って物件を買い、河野社長が$99万、私が$1万投資したとします。最悪でも、この百万ドルがパーになるだけで、それ以外の資産で負債を支払わなければならないということはありません。LLCがローンを借りていて、返済できなくなったとしても、銀行はLLCの資産以外には手を付けることができないのです。

 もっと重要なことは、何かの事故があって、多額の賠償責任が発生した場合、それを個人的に負う必要がないので、資産家には最適の所有形態です。これがリミテッド・パートナーシップだったらどうなるでしょう。日本在住の河野は英語ができませんので、私がジェネラル・パートナーになったとしましょう。私は$1万しか投資していないのに、何かあったときには、河野社長の資産は守られて、私の少ない個人資産がすべて取られる可能性さえあります。

 ローンを借りる場合は、銀行は他のメンバーよりマネージング・メンバーの信用度を調べます。他のメンバーは投票権があり、つまり決定権があるわけですが、日ごろのマネージメントはマネージング・メンバーがするわけですので、その人の信用度が大切です。日本の投資家がローンを借りて投資をするときは、現地に住んでいて私のように信用度の高い人?にマネージング・メンバーになってもらうのも、一つのアイデアです。

 LLCもパートナーシップも、課税対象にはなりません。しかし、収益は私と河野社長で分けることになり、それは個別に課税されます。私がマネージング・メンバーであれば、マネージメント・フィーを取って、残りを99対1で分けることもできます。私の信用を利用してローンを借りた場合は、それを重視するべきだというのが私の個人的意見ですが、ま、私の意見と言うのは状況によって変わります。と言うわけですので、何をどうするかは、あらかじめ決めておかないと、後で面倒なことになりかねません。

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米国投資不動産の所有形態:LLCが最適
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