今日は、米国の有名な不動産ポータルサイト、realtor.comの記事を紹介します。2022年の米国住宅市場は、認識と現実の間に大きなずれがあるというものです。
認識:2年間の急成長が終わり、不動産はインフレと金利上昇に打ちのめされて急ブレーキ。
現実:未だに、家を探している人の方が売りに出ている家より多い。
認識:過去に類のない住宅の在庫不足が続いたが、今は売り物件が急増している。
現実:在庫は確かに増えているが、歴史的に見るとまだ最低レベル。
認識:住宅価格の上昇は終わり、これからは下がるかもしれない。
現実:価格上昇は全市場で鈍化しているわけではない。
「売主は期待を下げつつあり、安く買えるかもしれないという買主の期待は膨らんでいますが、全国的にみて、前年比で住宅価格の中央値がいまだに上昇しているところはまだあります。30%以上も上がっているところも。」
これは間違いではありませんが、前年比で比べて上がっているから、未だに上がっているということにはなりません。前世紀と比べて上がっているからいまだに上がっていると言うのと同じです。
同じことがインフレでも言えます。2022年7月の米国のインフレは8.5%でした。しかし、バイデン大統領は、インフレはゼロだったと発表しました。8.5%と言うのは、2021年の7月と比べた数です。バイデン大統領が、7月のインフレは0だったと言ったのは、2022年の6月と比べた数です。
不動産も同じです。前年比で上がっているからと言って、前月比で上がっているとは限りません。ホノルル・ボード・オブ・リアルタースの2022年7月オアフ島住宅市場統計でも話しましたが、コンドは、前月比では下がっています。戸建ては少し上がりましたが、5月に比べると3.9%下がっています。
話を元に戻しますが、realtor.comは、まだ価格の上がっているトップ10市場を発表しました。
「全国の住宅市場がバイヤー・フレンドリーな方向にバランスを取り戻していることを示すインジケーターはいくつかあります。しかし、この10市場は、価格の上げ幅が大きく、他の市場ほどバランスが取れていません。」(ダニエル・ヘイルrealtor.com主席エコノミスト)
価格上昇が最も長期化している市場を特定するために、realtor.comは、米国の大都市100市場を調べ、去年と比べて今年の7月の売出価格が最も上昇した市場を探しました。つまり、戸建てと集合住宅の去年7月と今年7月の売出価格を比べたのです。その結果、トップ10市場のうち8つは、住宅価格が全国と比べて安い市場でした。つまり、まだ伸びしろのある市場だということです。
「10市場のうち8市場は、住宅価格の中央値が全米の平均よりもかなり低いことがわかりました。例外の2市場はマイアミとホノルルで、リモートワークによる暖かい地域への移住や、国内外の旅行が再開したことがその理由だと思われます。」(ダニエル・ヘイルrealtor.com主席エコノミスト)
これによると、ホノルルは、中央値が$849,000で前年比上昇率が23.5%です。ホノルル・ボード・オブ・リアルターズの統計と全く違いますが、理由は二つあります。一つは、戸建てとコンドをまとめていることです。今年7月のホノルルの戸建ての中央値は$1,107,944、コンドはちょうど$500,000でした。全部一緒にすると$849,000だということです。メインランドにはコンドがほとんどない市場も多いので、分けないこともあります。
もう一つは、既にここまで読んで気が付かれた方もいらっしゃると思いますが、realtor.comが調べたのは売出価格であって、売買価格ではないのです。ホノルルの戸建ての売買価格は前年比で11.6%、コンドは5.3%しか上がっておらず、realtor.comが発表した23.5%の半分にもなりません。
しかし、ホノルル市場では売出価格以上で売れる物件の方が多いので、こんなに差が出るわけはないはずです。この差の原因は、売出物件の中には売れないものもあるということです。どのような物件であれ、値段さえよければ売れるはずです。隣に殺人鬼が住んでいようと、それなりの値段をつければ売れるでしょう。
つまり、付け値が高すぎて売れない物件も計算に入れているから、このように倍以上の差が出たと思われます。実際、私が市場を見た印象では、今は売りに出る物件よりも、値段を下げる物件の方が多いです。また、高く売れるなら売ろうという売主が多いせいか、売止になる物件も増えたという印象です。
Realtor.comには悪いですが、所詮ここは不動産ポータルサイト。読者を買う気にさせたいというバイアスがかかるのは当然でしょう。数字はどうにでも料理できますので、気を付けてください。
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