フォーチュンのような全国誌にハワイの不動産の記事が載ることはそう多くはありません。ハワイに住んでいる私たちから見れば、そんなことは言われなくても分かっているという内容もありました。しかし、今更のようにハワイの住宅難の深刻さを感じさせる内容もありましたし、日本の皆さんはご存じない、興味深い内容もありましたので、ご紹介したいと思います。
パーディーさんは4人家族でした。親戚と一緒に4LDKを借りて、家族全員一つの寝室に寝ていました。全部で9人が住んでいたのですが、それでもバーディーさんが払う分の家賃は$2,300だったそうです。その支払いが大変で、仕事に追われ、子供たちと遊ぶ時間もないということで、4年前にラスベガスに引っ越しました。
2021年の米国国勢調査局の推定によると、ハワイ人を含む太平洋諸島出身者の人口が最も増えているのが、ラスベガスのあるネバダ州クラーク郡で、その次がカリフォルニア州の州都があるサクラメント郡です。逆に、ハワイ人の人口が最も減っているのがホノルルです。 それもそのはず、先日のブログにも書きましたが、ハワイでは、収入の平均42.06%が家賃に使われています。次に高いのがカルフォルニア州ですが、ぐっと下がって28.47%です。
カリフォルニア州には、サンフランシスコのように家賃の高い都市もありますが、安い田舎もあります。それに比べて、ハワイ州の人口はホノルルが占める割合が高く、カウアイ島やマウイ島なども安くはありません。また、観光関係のサービス業が多く、賃金が低いのです。しかも、ほとんどを輸入に頼るハワイは、家賃以外のものも軒並みメインランドより高いのですから、パラダイスに住む代価は安くはありません。
ハワイ州の戸建ての中央値はパンデミック中に$90万を超え、オアフ島は$100万を超えました。ハワイ州の調査によると、2020年の時点で、時給$18以上なければフルタイムで働いてもハワイに住むことはできないという結果が出ています。
現在州の最低賃金は時給$12。2028年までに$18にするという法案が去年可決され、これから他の州に追い越される可能性はありますが、今のところ全国で最高です。しかし、最近のインフレで、既に家賃も物価も上がっています。
アメリカン・コミュニティー調査によると、2011年、ハワイに住んでいたハワイ人は296,400人、メインランドは221,600人でした。それがたった10年で逆転し、21年はそれぞれ309,800人と370,000人です。
ところで、なぜラスベガスなのでしょう。それは、ハワイ住民の間で人気のある旅行先だからです。直行便もあり、ラスベガスに住めば、家族親戚もよく訪ねて来てくれるというわけです。ハワイ大学のフットボール・チームは、同じリーグのネバダ州立ラスベガス大学と毎年試合をします。アウェイゲームで、ハワイ大学を応援する歓声がラスベガス大学に負けないほど強いのは、そのせいです。
では、なぜハワイ人はラスベガスでバケーションするのでしょうか。1975年、ラスベガスのダウンタウンで、あるホテルが開業しました。当初はカリフォルニアからの観光客をターゲットにしたのですが、うまく行かず、「ここではアロハ語をしゃべっています」というキャッチフレーズで、ハワイ住民をターゲットにしたのが当たったのです。
ハワイ人はギャンブルが好きですが、ハワイでは違法なので、そこを狙ったのです。ハワイでも合法化の話が時々上がりますが、ハマって生活が破綻する人が出ることを懸念しているのかもしれません。そのため、観光客のみをターゲットにしたクルーズ船上でのギャンブルが検討されたこともありますが、実現していません。
もちろんそれだけが理由ではありません。ハワイなら$100万以上する3LDKが、ラスベガスなら$30万ほどで買えます。家賃も、2LDKが$1,000ほどです。ハワイなら間借りもままならない値段です。ハワイのホームステイは$1,000以上しますが、一部屋借りるだけでもそのくらいはするのです。ラスベガスは物価も安く、パーディーさんが引っ越して数カ月のうちに、20人ほどの親戚が引っ越してきたそうです。
英語に、水から上げられた魚という表現がありますが、ハワイ人が砂漠のど真ん中に住むのは環境が変わりすぎて大変だと思うかもしれません。しかし、今ではハワイ食のレストランもあれば、ハワイ人向けの不動産会社もあります。どこに行ってもハワイ人を見かけるので、そう苦にはならないそうです。
ところがそのパーディーさん、最近またハワイに戻ってきました。奥さんのお母さんの介護のためです。また親戚と一緒に住むことにしたのですが、ラスベガスで3人目が生まれて今は5人家族。今回は二つの寝室に5人で寝ているそうです。
私の長男も、ラスベガスではありませんが、真剣にメインランドに引っ越すことを検討していました。私の家内はハワイ人が2番目に多いサクラメント出身ですが、近いうちに姉夫婦の家で2週間ほど過ごす予定です。家内はハワイ人ではなく、白人ですが、サクラメントに引っ越したいなどと言い出すかも…。
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