今日は、私の株を管理しているハーバード出のファンドマネージャーの話をご紹介します。彼は、キャピタルという大きな投資管理会社を早期退職し、今は、自分の株の管理をするついでに少数のクライアントの株も管理してくれています。私の専門外ですので、説明が足りない部分もあると思いますが、逆に、私でも理解できるようにしか説明できないので、一般の方にもわかりやすいかと思います。
ファニーメイ(Federal National Mortgage Association連邦住宅抵当公庫)は、アメリカ合衆国の政府関連企業の1つです。ファニーメイは、住宅ローンを銀行や金融機関から購入し、それらを証券化(Mortgage-backed Securities, MBS)して投資家に売却することで、流動性を提供しています。
銀行は住宅ローンを出して、その手数料で儲け、ローンをファニーメイに売り、ファニーメイはそれらのローンをまとめて証券化して、投資家に売る。銀行はローンを売ってできたお金をまたすぐに貸すという仕組みです。米国の住宅ローンの金利がほとんど固定なのも、銀行が金利変動リスクを負わなくていいからです。
ファニーメイは、住宅ローンの保証を通じて、金融機関が住宅ローンを発行する際のリスクを軽減し、住宅ローン市場の健全性を維持しているはずだったのです。ところが、サブプライムローン、つまり本来ならローンを借りられない人に住宅ローンを出し始め、リスクが上がってしまって、2008年、サブプライムローン危機に陥ってしまいました。
こりゃーどうにかせんといかんということで、ブッシュ政権はファニーメイを政府管理下に置き、79.9%の株主になります。1968年に民営化されるまでは政府が管理していましたので、これはそう驚くべきことではありませんでした。
こうして、2010年上場廃止になり、株はOTC(カウンター取引市場)で売買されています。OTC Bulletin Boardは、米国の非上場株式市場の1つで、多くの未公開株や小規模企業の株式が取引されます。どさくさに紛れて、オバマ政権は、配当金をすべて政府のものにしました。しかも、政府からのファニーメイへの援助金を配当金で完済した後も、それを続けたのです。
そりゃーいくらなんでも「違憲」でしょうということで、政府は裁判で負けます。トランプ政権は、再民営化を図りますが、IPO(新規株式公開)には$900億の純資産価値が必要。配当金を積み立てて、現在$730億までこぎつけました。約1年後には公開可能になります。
もしそうなったらどうなるか。企業の時価総額(市場価値)を計算する際に、発行済みの全ての普通株式だけでなく、潜在的に株式発行される可能性のある株式(希薄化株式)も考慮に入れます。それをDiluted market capと呼び、希薄化調整後時価総額と訳されるそうですが、現在の株価ではたったの$50億。収益が年$120億ですので、PER(株価収益率)がなんと0.42。公開して、低めに見積もってPERが10としても、時価総額は$1,200億ということになります。$50億が少なく見積もっても$1,200億になるのですから、24倍です。
サブプライム前の2007年の株価は$66でした。その後急落していわゆるペニー株に。半年前までは40セント。ところが、去年8月頃から急に上がり始めました。現在、2024年2月26日の終値は$1.27。ファンドマネージャーの話では、トランプの再選が現実味を帯びてきたことがその理由だと言います。もし彼が再選されれば、民営化は確実だという予想です。
「トランプだけは勘弁してくれ派」の私としては、複雑な心境ですが、ファンドマネージャーは、バイデンが再選されても民営化すると踏んでいます。オバマ政権は、本来なら株主に配当されるべきお金を好きなことに使っていたわけですが、もうそれはできません。だったら、民営化して儲けたお金で連邦赤字を$1,000億削減して、その手柄を自分のものにしたほうが得、と言うのです。今年の選挙でバイデンが勝ったとしても、そのうち共和党政権になってどうせ民営化されるのなら、自分でやったほうが得だというわけです。
彼は、もうすでに70セントくらいの時に買ってくれたのですが、バイデンが勝てば、またそのくらいまで落ちるかもしれないと考えています。もしそうなったら、また買い足すと言っています。悪くて70セントの損、うまく行けば$30の儲けということになり、しかも勝算は、バイデンが民営化に踏み切らなかったとしても半々。ほんまかいな。
半額になれば$0.70の損。ファニーメイは大き過ぎてつぶせないので、倒産するとは考えられません。リスクに下限のある投資だと言えるかもしれませんね。
私のファンドマネージャーは、かなり慎重な人で、リスクを嫌います。彼が買う株のほとんどはSP500です。その彼が買ったのですから、ひょっとするとひょっとするかも。と言っても彼のポートフォリオの0.5%ほどですが、予想が当たればポートフォリオが12%上がります。私のIRA(個人退職年金)のほとんどは流動性のない年金などですが、売れるものは全部売って、FNMAに買い替えようかと迷っている今日この頃です。
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