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マウイ島の火事で不動産価格25%減

 去年、マウイ島はひどい災害に見舞われました。ラハイナ周辺の山火事で2,000以上の建物が破壊され、数千人が家を失ったのです。炎は家を破壊しただけでなく、島の心理的、経済的状況も一変しました。このような大災害は、不動産市場にどのような影響を与えるのでしょうか。供給の減少で価格が急騰すると予想されるかもしれませんが、マウイ島の住宅データを見ると、結果はこの予想に反しています。

 山火事により、マウイ島の平均住宅価格は25%下落し、中央値は15%下落しました。日本では、中央値を使うことはあまりないので、この二つの下落が異なる原因が分かりにくいかもしれません。住宅価格は、平均値が中央値を上回るのが普通です。一部の非常に高価な豪邸が、平均値を釣り上げているのです。平均値の方が中央値より下落幅が大きいということは、豪邸の価格が下がった、あるいは売れなくなったことを意味しています。

 住宅供給が限られている状況では、通常価格は急騰するはずです。被災地で食料品などが値上がりするのと同じです。しかし、マウイでは逆です。一体、何が起こっているのでしょうか。

 いくつかの要因が関係している可能性があります。初めて経験したこのような大火災が、マウイ島が安全な場所であるという認識を変えたのかもしれません。それによる需要の減少は一時的なものかもしれませんが、真の楽園であるマウイ島にセカンドハウスや別荘を所有したいという人々の欲求に水をかけたのかもしれません。

 しかし、他の同様の地域も、最近、100年に一度の規模の自然災害に見舞われていますが、必ずしも住宅価格が下落しているわけではありません。例えば、フロリダ州では、2年前にハリケーン・イアンによって約8,000軒の家屋が破壊され、さらに約60,000軒の家屋が被害を受けました。数十億ドルの損害を引き起こし、州政府および民間の保険・再保険業界に深刻な打撃を与えました。にもかかわらず、イアンの後もフロリダの住宅価格が上がり続けているのはなぜでしょうか。

 答えは、心理的変化にあるかもしれません。フロリダ州の自然災害の歴史は、既知のリスクです。フロリダの住宅購入者、特に海岸沿いの高級住宅を購入する人は、フロリダがハリケーンの脅威にさらされていることを熟知しているはずです。

 イアンのフロリダへの影響は壊滅的でしたが、フロリダの住宅市場に対する人々の心理的認識を根本的に変えることはなかったのでしょう。もちろん、最近のハリケーン・ヘレンとミルトンや今後の災害がそれを変えてしまう可能性がないとは言えません。

 対照的に、マウイ島は真の楽園と思われていましたが、山火事が多くの人々の認識を揺るがしたのです。島はもはや楽園ではなくなりました。日々の現実から逃れることができるはずの島に、危険が潜んでいたのです。

 データはこれを裏付けています。山火事以来、平均売出価格は、中央値よりも10%以上下落しています。それはまさに心理的な価格の下落から予想されることです。平均値は、州外の別荘を探している人によって大きく左右されます。別荘の購入は、必要に駆られてするわけではないので、心理的要因の影響を受けやすくなります。

 対照的に中央値は、普通の人が買う普通の家の価格を反映しています。セカンドハウスを購入する州外のバイヤーとは異なり、カマ・アイナ(地元住民)が主導で、自分や家族のための主たる住居の購入価格に大きく影響されます。

 彼らはすでにここに住み、働いているので、ここで住宅を購入するかどうかの決定は、別荘やセカンドハウスの購入を検討している人ほど裁量の余地がないのです。彼らの購入は、新しい心理的認識よりも、実用的な必要性と現実によって動かされています。

 したがって、マウイ島の価格は、山火事による心理的変化によって崩壊し、それがマウイ島の平均売出価格に最も明確に現れていると思われます。火災は地域経済に打撃を与えましたので、島の非高級住宅市場価格が下落しているのは理にかなっています。しかし興味深いことに、最も急激な価格下落は、経済的な懸念の影響が小さいと思われる高級住宅市場で起きているのです。

 しかし、マウイ島に対する認識の深い心理的変化だけで平均価格が25%も下落するでしょうか。もう一つ考えられるのが保険の急騰です。超富裕層は失業や日々の経済変動に怯むことはないかもしれませんが、数百万ドルの住宅を失う可能性や保険料については気にするでしょう。高級住宅は保険料が持続不可能なレベルまで上昇して、その価値が大幅に下落しているのかもしれません。

 フロリダ州の住宅保険および再保険市場は、2022年のハリケーン「イアン」の影響で数多くの課題に直面しました。イアンのフロリダの住宅産業への実際の経済的影響は、非常に深刻でした。

 フロリダ州の多くの保険会社は、破産したり、フロリダで保険を出すのを止めたりしました。残った会社も、住宅所有者保険料を大きく値上げしました。翌年のフロリダ州の住宅所有者保険の平均年間保険料は年間約6,000ドルで、これは全国平均の4倍です。

 フロリダ州政府は、ハリケーンが保険に与える影響を理解しており、以前から対策をしてきたことが、不動産が下がらなかった理由だと考える人もいます。ハワイ州も遅ればせながら介入しましたが、その効果がまだ出ていないのかもしれません。山火事と言うこの新しい問題に、ハワイ州がどれだけ迅速かつ効果的に取り組めるか、それを見守っているのかもしれません。

 その一つがマウイ州の新バケレン法案です。私がハワイで通っている教会の牧師は、ちょっと変わった経歴の人で、大学の商学部の元教授でした。個人が最も手軽に資産形成をする方法は不動産投資であると考えており、マウイ島にも2件のバケレン物件を所有していました。

 しかし、今年1件売って、来年2件目を売る予定です。今年中に両方とも売らなかった理由は、節税だそうです。売った理由について詳しく聞いてはいませんが、バケレンの法律改正が理由ではないかと思います。この法案は、マウイ島民を助けるためのものではありますが、規制がまた一つ増えるだけで、住宅不足の根本的な解決にはならないでしょう。

 私はマウイに住んだことはありませんし、今後マウイ市場がどうなるか、予想することはできません。法律の影響がどうなるか、再建が順調に行くかなど、市場が読めるようになってくれば、また上がり始めるかもしれません。

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マウイの火事で不動産価格25%減
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