遺産相続に争いは付き物です。相続争いを避けるためにも、遺言を準備しておくことをお勧めします。
遺書と遺言書
遺書と遺言とは異なります。一般的に、遺書は、「兄弟仲良くしなさい」とか、「お母さんの面倒をちゃんと見てあげなさい」など、死期の迫った人がその思いを綴るもので、形式は自由です。遺言は、法律に厳格に従った形で作成する必要があります。遺言には法的効力があり、財産をどう分けるかなどを記載します。遺書の内容に当たる内容を一緒に書くこともありますが、そのような内容に法的効力はありません。
特に法定相続人以外の人に遺贈したい場合などは、遺言書が必要です。また、考えが変わった時は、新しく作り直すことができ、最新のものが有効とみなされます。古い遺言と抵触しない部分については、古い遺言がそのまま残ります。
遺言書には以下の3種類があります。
自筆証書遺言
遺言者が特定の形式に従って手書きで作成し、署名・押印します。証人は必要ありませんので、いつでも気が向いたときに作成でき、費用も掛かりません。ただし、遺言書の書き方のルールは非常に厳格なので、専門家の助言を得ずに作成された自筆証書遺言が無効になってしまう例も多く見られます。
自筆証書遺言は、それが作成されていることを相続人が知らなかったり、知っていても見つけられなかったり、発見されても隠蔽されたり破棄されたりする可能性があります。開封するためには裁判所の検認が必要になります。
これらの問題を回避するためには、法務局で死後50年後まで保管してもらうことも可能ですが、料金はかかります。そうすれば、発見されない、隠蔽される、破棄されるなどの可能性もなくなり、検認も必要ありません。
自筆証書遺言の場合でも、財産目録は手書きでなくても構いません。しかし、その場合は、各ページに署名押印してください。また不動産や預金については、不動産登記事項証明書や通帳などのコピーを財産目録として利用するのでも構いません。
公正証書遺言
遺言者が公証人に遺言の内容を口頭、手話、筆談などで伝え、公証人が遺言書を作成します。二人の証人と作成料が必要ですが、隠蔽や破棄の心配はありません。専門家が作成するので、無効になるリスクも少ないです。トラブルを避けるためには、これが最も効果的です。ただし、遺留分を侵害する遺言であっても公証人は作成してくれますので、公正証書遺言だからといって死後に遺留分の問題が生じないというわけではありません。
秘密証書遺言
遺言者が内容を秘密にしたまま遺言書を作成し、封印して公証人と二人の証人に提出し、自分の遺言書であることを伝えます。自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的なもので、生前にその内容を他人に知られることはありません。しかし、公証役場には遺言書の封紙の控えだけが保管されるため、隠匿や破棄、死後発見されないなどの危険性を完全に排除することはできず、裁判所の検認も必要です。