私は不動産の専門家であり、株式アナリストではありませんが、ファニーメイが不動産関連の重要な企業であることから、これまでも度々ブログで取り上げました。過去の投稿がきっかけで、本株に投資された読者の方もいらっしゃいます。株式投資の情報においては、上昇の可能性が報じられる一方で、売却の適切なタイミングに関する情報が見過ごされ、気づかぬうちに株価が下落しているという事態も少なくありません。このような背景から、私としては、これまでの情報発信に対する責任として、今回の芳しくないニュースについても皆様にお伝えするべきであると考え、本稿を書いています。
今日、ファニーメイの政府管理継続に関するニュースが市場を駆け巡りました。しかし、これは公式な発表というよりも、連邦住宅金融庁(FHFA)長官のコメントが引き起こした波紋のようです。この複雑な状況の背景には何があり、私たちの住宅市場や投資家にはどのような影響があるのでしょうか?
なぜファニーメイはまだ政府の管理下にあるのか?
ファニーメイとフレディマックは、2008年の金融危機時に住宅市場の安定化のため、FHFAのコンサーバトシップ下(政府が財政的に困難な企業を管理下に置き、その事業を監督・再建する法的措置)に置かれました。当初は一時的な措置とされていましたが、約17年が経過した今もその状態が続いています。
主な理由はいくつかあります。
- 自己資本の確保: ファニーメイとフレディマックは、合計で約3300億ドルの自己資本要件を課されています。現在、その約半分を積み上げていますが、目標達成にはまだ1〜2年かかると見られています。FHFAは、両社が資本、流動性、信用リスク移転に関するすべての要件を満たすことを優先しています。
- 政府保証の性質: コンサーバトシップ後の政府保証のあり方については、いまだに議論が続いています。市場の安定性を保つためには、住宅ローン担保証券に対する明示的な連邦政府保証が必要だという声が強く、これがなければ住宅ローン金利の上昇につながる可能性があります。
- 市場の安定性への配慮: 高金利環境下での拙速な民営化は、住宅ローン金利の急騰を招き、市場を混乱させるリスクがあります。FHFA長官候補のビル・パルト氏も、「住宅ローン金利に上昇圧力をかけることなく、住宅市場の安全性と健全性を確保するために慎重に計画されなければならない」と述べています。
市場の反応と投資家心理
2025年7月25日、FHFA長官のこのコメントを受けてファニーメイの株価は7%下落し、終値は7.89ドルとなりました。これは、即時の完全民営化への期待が一時的に後退したことを示しています。市場は、民営化の「タイミング」と「範囲」を再評価しているものの、将来的な何らかの形での「公開化」の可能性を諦めているわけではありません。
ビル・アックマンのような著名な投資家は、ファニーメイの普通株に多額の株式を保有しており、引き続きコンサーバトシップからの脱却を強く主張しています。アックマン氏は、政府が過半数の所有権を維持しつつ、約20%の株式を公開する可能性を示唆し、2026年または2027年までのIPOのロードマップさえ提示しています。彼のポートフォリオはリスクの分散ができておらず、最近かなり低迷していますので、何とかトランプ政権に上場させようとして、このような提案をしているのではないでしょうか。
政治情勢:トランプ政権と中間選挙
トランプ政権は、ファニーメイとフレディマックの「公開化」に意欲を示しており、同時に「米国政府はファニーメイとフレディマックに対する暗黙の保証を維持する」と強調しています。これは、市場の安定性を損なうことなく、より公開された構造への移行を目指す、慎重なアプローチを示しています。しかし、暗黙の保証では市場は納得せず、金利にリスクが上乗せされるでしょう。
米国の一般中間選挙は2年ごとに行われるため、次回は2026年になります。共和党は一般的に民営化を支持していますが、民主党は住宅ローン金利の上昇や手頃な価格の住宅へのアクセス減少を懸念しており、このイデオロギー的隔たりが包括的な立法解決を困難にしています。中間選挙では政権側の党が議席を失うことが圧倒的に多いので、特に下院は民主党が多数派になる可能性が大です。
2028年の期限:ワラント失効の可能性
政府が保有するファニーメイの普通株式の79.9%を取得するワラントは、2028年9月7日に失効します。このワラントの行使価格は名目的な0.00001ドルであり、もし政府がこれを行使すれば、既存株主にとって大規模な希薄化につながります。
しかし、もしこのワラントが行使されずに失効した場合、既存株主にとって潜在的な大規模な希薄化リスクが解消され、株価に大きなプラスの影響を与える可能性が高いです。この期限は、ファニーメイの将来の地位に関する政策決定を促す避けられない触媒として機能するでしょう。ビル・アックマン氏も、政府のワラントによる希薄化リスクが解決されるシナリオを前提に、2026年後半のIPOでファニーメイとフレディマックの合計評価額が1株あたり約34ドルになると予測しています。
私個人の視点から見ると、投資開始当初からファニーメイの株価は約10倍に成長し、株価上昇と追加投資で一時は私のポートフォリオの10%以上を占めるまでになりました。しかし、今回のFHFA長官のコメントを受け、ポートフォリオにおけるファニーメイの比率を約4%に減らしました。
この決断の背景には、公開がいつになるかより不明瞭になったという不確実性があります。また今は、AI関連など、ファニーメイと同程度の成長がより確実に期待できる多くの株がほかにもあります。これらがポートフォリオ調整の大きな理由となりました。
ちなみに、私のポートフォリオは年累計で29.05%上昇しており、この上昇の最大の理由はファニーメイの貢献です。同時期の主要インデックスと比較すると、S&P500は8.62%、ナズダックは9.31%、ダウ平均は5.54%の上昇となっており、私のポートフォリオはこれらと比較しても良好なパフォーマンスを示しています。私の優秀なファンドマネージャーのおかげです。
まとめ
ファニーメイのコンサーバトシップからの脱却は、自己資本の充足、政府保証の明確化、市場の安定性維持、そして政治的・経済的環境のバランスという複雑な課題を伴います。その将来は、これらの要素、特に2028年のワラント失効期限と今後の選挙サイクルによって大きく左右されるでしょう。今後の動向に注目が集まります。
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