Youtubeで不動産コラムをながら聴き

ハワイの事故物件:開示義務なし?!

 アロハ!ハワイでの夢のマイホーム探しや、理想の賃貸物件を見つけることは、多くの日本人にとって大きな目標かもしれません。しかし、不動産取引には、物件の「事故物件」としての側面に関する開示義務という、少し複雑なルールが存在します。特にハワイ州では、この開示義務に独自のポイントがありますので、安心して物件選びを進めるために、ぜひ知っておいていただきたい情報をご紹介します。

「事故物件」って何?ハワイの特別なルール

 一般的に「事故物件」とは、物理的な損傷がなくても、過去にその物件で心理的に嫌悪感を抱くような出来事があった不動産を指します。これには、殺人、自殺、自然死といった死亡事案だけでなく、過去に犯罪(例:麻薬の製造・売買、売春など)に利用された物件や、幽霊の噂などが含まれる場合があります。

 多くの州では、こうした心理的な出来事が物件の価値に影響を与える「重要な事実」として、売主や貸主が開示を義務付けられる場合があります。しかし、ハワイ州の法律は、この点で他の多くの州とは異なります。

 ハワイ州法における「重要な事実」の定義は、「合理的な人にとって、販売される居住用不動産の価値に測定可能な影響を与えると予想される、過去または現在の事実、欠陥、または状態」とされています。この定義は、主に物件の物理的な問題(屋根の損傷、配管の問題など)、法的な問題(地役権など)、そしてユーティリティ情報(上下水道、ガスなど)に焦点を当てています。

 そして、最も重要なのは、ハワイ州法第508D-8条によって、物件の「物理的な構造や環境、または改良に影響を与えなかった行為や出来事」については、売主が積極的に開示する義務がないと明確に定められている点です。これは、殺人、自殺、その他の死亡事案、あるいは超常現象の噂、さらには犯罪に利用された履歴であっても、物件に物理的な損傷を与えなかった心理的な出来事については、たとえそれが客観的に物件の市場価値に影響を与えるとしても、売主が自ら「この物件ではこんなことがありました」と伝える法的義務がない、という意味です。

 ただし、例外として、麻薬(特にメタンフェタミンなど)の製造に利用された物件は、化学物質による汚染の可能性があるため、これは物理的な影響と見なされ、開示が義務付けられます。

あなたが知っておくべきこと:買主・借主としての注意点

 ハワイのこの特別な法律は、物件を探すあなたにとって、重要な意味を持ちます。

  1. 積極的な開示は期待できない(非物理的汚名):

 売主や貸主は、物件の物理的な構造に影響を与えなかった心理的な汚名について、あなたに積極的に情報を提供する法的義務がありません。また、物件の居住者が後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹患していたか、または検査を受けていたかについても、連邦の公民権法により開示が禁止されています。

  1. 直接質問することの重要性:

 しかし、もしあなたが物件の履歴について(例えば、「この物件で過去に死亡事故はありましたか?」「何か特別な出来事がありましたか?」「犯罪に利用されたことはありますか?」など)直接質問した場合、不動産エージェントや貸主は、法的に、そして倫理的に真実を答えなければなりません。嘘をつくことは違法であり、後々問題になる可能性があります。ただし、売主や貸主には、法的に開示義務のない情報については、質問に答えない権利があることも覚えておきましょう。気になることがあれば、遠慮なく、具体的に質問することが非常に大切です。

  1. 不動産エージェントからの説明のニュアンスに注意:

 ハワイ州の売主開示書(SRPDS)では、物件の価値に影響を与える「重要な事実」の開示が求められています。そして、実際に事故物件(心理的汚名のある物件)は市場で安く取引されるなど、物件価値に影響を与えるのは事実です。しかし、ハワイ州法は、この「重要な事実」の定義を物理的な事柄に限定しており、心理的な汚名については売主に積極的な開示義務を課していません。

 このため、多くの不動産エージェントは、後々の訴訟リスクを避けるため、あるいは倫理的な観点から、法的な義務を超えて売主や貸主に対し、心理的な汚名についても開示を促すことがあります。あなたが物件の買主または借主である場合、エージェントからの説明が、法律上の「義務」に基づくものなのか、それともエージェントの判断や「推奨」に基づくものなのかを区別して理解することが重要です。

  1. 「現状有姿」(As Is)物件について:

 ハワイでは「現状有姿」(As Is)で売買される物件も多くあります。これは、売主が物件の欠陥について修理や費用負担をする意図がないことを意味します。しかし、「現状有姿」であっても、売主が知っている物理的な「重要な事実」を開示する義務は免除されません。買主は依然としてホームインスペクション(住宅検査)を受ける権利があり、その結果に不満があれば契約を解除できますので、必ず専門家による検査を行いましょう。

  1. 賃貸物件の新しいルール(2024年11月1日施行):

 賃貸物件についても、最近の法改正(上院法案2834号、2024年11月1日施行)により、貸主は借主の死亡歴や賃貸物件における死亡履歴を、潜在的な借主に開示する義務がないことが明確になりました。

あなたを守るためのベストプラクティス

 ハワイの法律は、心理的な汚名に関する積極的な開示を売主や貸主に義務付けていませんが、物件を探すあなた自身が、安心して取引を進めるためにできることがあります。

  • 気になることは積極的に質問する:

 物件の履歴について疑問や懸念がある場合は、遠慮せずに不動産エージェントや貸主に直接質問しましょう。具体的な質問をすることで、正確な情報を得られる可能性が高まります。ただし、売主や貸主が質問に答えない選択をすることもある点をご理解ください。

  • 徹底的なデューデリジェンス(物件調査)を行う:

 法的に開示義務がない情報については、あなた自身が調査を行う必要があります。

  • Diedinhouse.comのようなサービスを利用して、物件の過去の死亡履歴を調べることができます。
  • 地域の犯罪マップを確認し、周辺の治安状況を把握することも有効です。
  • 近隣住民に話を聞いてみるのも一つの方法です。
  • 専門家のアドバイスを求める:

 信頼できる不動産エージェントや弁護士に相談し、法的なアドバイスや物件調査に関するサポートを受けることを強くお勧めします。

  • 契約書の内容をしっかり確認する:

 購入契約書や賃貸契約書の内容を、署名する前に必ず隅々まで確認しましょう。不明な点があれば、専門家に質問し、納得した上で契約を進めてください。

結論

 ハワイ州における事故物件の開示義務は、物理的な欠陥と、物理的な影響を伴わない心理的な汚名とで明確に区別されています。売主や貸主には、心理的な汚名の積極的な開示義務はありませんが、あなたが直接質問した場合には真実を答える義務があります。

 ハワイでの不動産探しは、素晴らしい経験になるはずです。この独特の法的枠組みを理解し、あなた自身が積極的に情報を収集し、専門家のアドバイスを活用することで、安心して理想の物件を見つけることができるでしょう。

 マハロ!

このブログを動画でチェック

ハワイの事故物件、開示義務なし?!
元サイトで動画を視聴: YouTube.