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ハワイのシロアリ対策:被害額全米14位

 ハワイでの不動産購入は、まさに夢の実現です。しかし、この楽園には、その温暖な気候ゆえに避けて通れない「シロアリ」という現実があります。年間を通じて活発に活動するシロアリは、ハワイの不動産にとって常に潜在的な脅威です。特に物件購入を検討している方にとって、シロアリ対策はデューデリジェンスの重要な一部となります。

 この記事では、ハワイで物件を購入する際に知っておくべきシロアリ対策のポイントに焦点を当て、戸建てとコンドミニアムそれぞれの注意点、そして信頼できる専門業者選びのヒントをご紹介します。

ハワイのシロアリ事情:知っておくべきこと

 ハワイは、年間1億ドルものシロアリ被害が発生すると言われるほど、シロアリ問題が深刻な地域です。特にホノルルは、全米のシロアリ被害ランキングで上位に位置しています。

 ハワイのシロアリは、その生態や習性から大きく3つのタイプに分けられます。

  • Ground termites(地下シロアリ): 主に地面の下に巣を作り、地下トンネルを通って建物に侵入する最も破壊的なタイプです。
    • **Formosan subterranean termite(イエシロアリ)Taiwanese subterranean termite(タイワン地下シロアリ)**がこれに該当します。
  • Wood termites(木材シロアリ): 地面とは切り離された、乾燥した木材の中に直接巣を作るタイプです。
    • **Drywood termites(カンザイシロアリ)**がこれに該当し、家具や屋根の梁などを食害します。
  • Swarming termites(羽アリ): これはシロアリの種類ではなく、繁殖のために飛び立つシロアリの姿を指します。すべてのシロアリは、コロニーが成熟すると羽アリを発生させます。特に暖かくなる5月から6月にかけて多く見られ、その存在に気づくきっかけとなります。コンドミニアムの高い階層で発見されるシロアリの多くは、この羽アリであることが多いとされています。

物件購入時のシロアリ対策:最重要ポイント

 ハワイでの不動産購入において、シロアリ対策は法律で義務付けられているか、または非常に一般的な商慣習となっています。これは、買主を予期せぬリスクから守るための重要なプロセスです。

1. シロアリ検査(Termite Inspection)の義務とプロセス

 ハワイでは、温暖な気候によるシロアリ被害の多さから、不動産売買契約においてシロアリ検査が「コンティンジェンシー(契約キャンセル可能な条件)」の一つとして組み込まれていることがほとんどです。

  • 検査の実施: 売買契約成立後、エスクローオープンから規定期間内に、買主が専門のシロアリ検査官を選定し、調査報告書を提出することが求められます。
    • 【補足】エスクローとは

 不動産取引の安全を確保するために、売主と買主の間に立ち、代金の支払いと所有権移転の手続きを代行する第三者機関、またはその手続きのことです。

  • 費用負担: シロアリ検査の費用は、通常、売主が負担します。費用は$200〜$500程度です。

2. シロアリ発見時の売主の責任と買主の権利

 もしシロアリの生息が確認された場合、その駆除費用も売主が負担し、駆除作業を行う義務があります。ただし、売主には「シロアリ予防」を行う義務はないとされています。将来的な予防措置については、買主の負担となる場合があります。

 シロアリ検査の結果、被害が深刻であったり、建物の構造上重要な部分が大きく蝕まれていたりして、修理や駆除に多大な費用や時間を要すると判断される場合、買主は売買契約を解除する選択権が与えられています。これは、買主が予期せぬ高額な修繕費用から保護されるための重要な権利です。

3. 戸建てとコンドミニアムのシロアリ対策の違い

 物件の種類によって、シロアリ検査や対策のアプローチが異なります。

  • 戸建て:
    • 検査対象: 建物全体が検査の対象となります。
    • 駆除方法: 被害状況に応じて、家全体を特殊なシートで覆い、強力なガスでシロアリを駆除するFumigation(ガス燻蒸/テント処理)が選択されることがあります。しかし、被害が部分的な場合は、特定の箇所に直接薬剤を注入するLocalized treatment(局所処理)も一般的に行われます。シロアリの習性を利用したBait systems(ベイトシステム)(例:Sentricon system)も効果的な駆除・予防方法として用いられます。
    • 新築時の予防: ハワイ州では、新築する際の木材全てに「加圧注入材」を使用することが義務づけられています。また、環境に優しく効果が持続する「ホウ素系」の薬剤(Borate treatment)による木部処理も一般的です。
  • コンドミニアム:
    • 検査対象: 主にキッチンやバスルームの木製キャビネットなど、専有部分の木材が検査対象となります。
    • 駆除方法の制約: 集合住宅であるため、戸建てのように建物全体をテントで覆うFumigationは一般的に不可能です。そのため、シロアリ被害が確認された特定の箇所に直接薬剤を注入する**Localized treatment(局所処理)**が一般的です。Bait systemsもコンドミニアムのシロアリ防除サービスとして推奨されています。
    • 管理組合(HOA/AOAO)との責任分担: コンドミニアムには、日本のマンション管理組合に相当するHOA(Home Owners Association)またはAOAO(Association of Apartment Owners)が存在し、建物の外観や共用部分のメンテナンスを担当します。しかし、内装やユニット自体(専有部分)のメンテナンスは、各オーナーの責任となります。シロアリは飛来したり、荷物に紛れて室内に入り込んだりすることもあるため、専有部分のシロアリ対策はオーナー自身の責任で行う必要があります。物件購入前に必ず管理規約を確認し、責任範囲を理解しておくことが不可欠です。
    • HO6保険: コンドミニアムのオーナーは、HO6と呼ばれる保険への加入を管理組合の規約によって義務付けられている場合が多いです。この保険は、ユニット内の動産や居住設備、使用不能損失などを補償する可能性があり、シロアリ被害による専有部分の構造的ダメージや動産への被害がカバーされるか、管理規約と合わせて確認することが重要です。

信頼できるシロアリ駆除業者の選び方

 ハワイでシロアリ対策を効果的に行うためには、信頼できる専門業者を選ぶことが不可欠です。

  • ハワイ州のライセンス: ハワイ州では、シロアリ駆除を含む害虫駆除を行う業者(Pest Control Operator)およびその営業担当者(Field Representative)は、厳格なライセンス取得が義務付けられています。業者選定の際は、必ずハワイ州のライセンスを保有しているかを確認しましょう。
  • 複数社からの見積もり: 少なくとも3社程度の業者から見積もりを取得し、サービス内容と費用を比較検討することが推奨されます。
  • 見積内容の明確性: 見積もりに明確な価格が記載されているか、詳細不明な経費やシロアリ駆除と関係ない工事が含まれていないかを厳しく確認しましょう。
  • 保証内容とアフターフォロー: 駆除後の再発に備え、提供される保証期間と保証内容(損害賠償保証か施工保証か、保証の範囲、免責事項など)を明確に確認することが不可欠です。薬剤処理の保証期間は一般的に5年ですが、Borate treatmentでは新築で最長15年、既存住宅で最長10年という長期保証が提供される場合があります。

まとめ

 ハワイでの物件購入は、シロアリ対策という特有の課題を伴いますが、適切な知識と準備があれば、安心して進めることができます。物件購入時には、シロアリ検査の義務、売主の責任、そして買主の権利をしっかりと理解することが重要です。また、戸建てとコンドミニアムでは対策のアプローチが異なるため、それぞれの特性を把握し、信頼できるライセンスを持った専門業者と連携することが、大切なハワイの不動産資産をシロアリ被害から守る鍵となります。

 購入後も、ハワイのシロアリは一年中活動するため、定期的な点検と湿気管理などの予防策を継続することが、長期的な安心につながります。

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ハワイのシロアリ対策:被害額は全米で14遺
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