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米国ホームワランティー:賢い使い方と落とし穴

 マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物のひとつ。しかし、その喜びも束の間、入居してすぐにエアコンが故障したり、食洗機から水漏れしたり…なんて悪夢、考えたくないですよね。😱そんな「まさか」の出費から家計を守るための制度として、アメリカには「ホームワランティ」というものがあります。

 一見すると、とても心強い味方のように思えますが、実は多くの落とし穴が潜んでいることも事実。この記事では、ホームワランティの基本から、賢い選び方、そして私の壮絶な体験談も交えながら、注意すべきポイントを徹底解説します!

そもそも「ホームワランティ」って何?保険とは違うの?

 ホームワランティとは、住宅の主要な設備(冷暖房、電気、配管など)や家電(冷蔵庫、食洗機など)が、普通に使っていて壊れてしまった場合に、その修理や交換の費用をカバーしてくれる年間契約のサービスです。

 ここで一番大切なポイントは、ホームワランティは**「保険」ではない**ということ。法的には「サービス契約」という位置づけで、保険に比べて規制が緩やかです。そのため、契約書には会社側に有利な細かい条件(免責事項)がたくさん書かれていることが多く、これを理解しないまま加入すると「こんなはずじゃなかった!」という事態になりかねません。

【実録】悪夢の食洗機修理:アポ5回キャンセル、新人技術者、そして3か月の格闘…

 「大手だから安心だろう」…そう思って私が契約したのは、誰もが知る「シアーズ(Sears)」のホームワランティでした。しかし、それが悪夢の始まりだったのです。

 ある日、食洗機が故障。早速ワランティ会社に連絡したものの、約束の日時に業者は来ません。なんと、アポイントメントを5回も連続でキャンセルされたのです。

 らちが明かず、消費者保護団体であるBetter Business Bureau (BBB) に通報。シアーズはBBBからの問い合わせに応答しませんでしたが、その効果があったのかは不明なまま、ようやく技術者が我が家へやってきました。しかし、やっと来てくれた技術者は開口一番、こう言ったのです。

「今日が初めての一人での仕事なんです」

 彼は食洗機に関する知識が全くない様子で、「トレーニングは3日しか受けていないとか、3週間しか受けていない」「以前は何十人もいた技術者が今は数人しかいない」など、会社の厳しい内情をポロリ。結局、素人の私たちと相談しながら「多分ポンプが壊れているだろう」と結論づけ、部品を注文することに。しかし翌週、部品の取り付けに来た別の担当者から「注文された部品の型番が間違っています」と衝撃の事実を告げられました…。

 正しい部品を再注文し、さらに数週間後、ようやく修理が完了。食洗機が壊れてから、実に3か月近くが経過していました。この経験から学んだのは、「会社の知名度だけではサービスの質は測れない」という厳しい現実でした。

大家さんにもメリットが?賃貸物件とホームワランティ

 ホームワランティは、持ち家だけでなく**賃貸物件のオーナー(大家さん)**にとっても有用なツールになり得ます。

  • 修理手配の手間を削減

 入居者から「お湯が出ない」「エアコンが動かない」といった連絡があった場合、自分で修理業者を探して手配するのは大変な手間です。ワランティに加入していれば、連絡はワランティ会社一本で済み、業者の手配を任せることができます。

  • 突発的な出費を平準化

 賃貸経営では、予期せぬ高額な修理費がキャッシュフローを圧迫することがあります。ワランティの年間料金を払っておくことで、突発的な大きな出費を避け、支出を予測しやすくすることができます。これは賃貸経営の安定化に繋がります。ただし、私の体験談のように、修理が遅延するリスクは常にあります。入居者の不満に繋がらないよう、迅速な対応を謳う、評判の良い会社を選ぶことが特に重要になります。

どの会社を選べばいい?評価の高い会社と要注意な会社

 私の体験談からも分かるように、会社選びは極めて重要です。企業の評判は玉石混交。客観的なデータから、いくつか特徴的な企業を見てみましょう。

柔軟性で選ぶなら:AFC Home Club

  • 長所: 自分で信頼できる修理業者を選べるのが最大のメリット。一度修理した箇所は契約期間中ずっと保証される長期保証も魅力です。
  • 注意点: 古い機器が交換になった際、「減価償却」を理由に支払額が著しく低くなるという苦情が多数報告されています。古い家にお住まいの方は特に注意が必要です。

顧客サポートで評価が高い:Liberty Home Guard

  • 長所: 40種類以上の豊富な追加オプションがあり、きめ細やかなカスタマイズが可能。カスタマーサービスの対応が迅速で丁寧だという肯定的なレビューが多く見られます。
  • 注意点: 比較的新しい会社であり、高評価を鵜呑みにするのは慎重になった方が良いかもしれません。

【要注意】業界最大手の光と影:American Home Shield (AHS)

  • 長所: 業界最大手で、他社が保証しない錆や腐食による故障もカバーするなど、保証範囲は広範です。保証上限額も比較的高く設定されています。
  • 深刻な問題点: BBBには、過去3年間で17,000件を超える圧倒的な数の苦情が寄せられています。修理の大幅な遅延、不当な請求拒否、解約トラブルなどの報告が後を絶ちません。

【要注意】訴訟リスクを抱える:Choice Home Warranty

  • 深刻な問題点: 2019年にアリゾナ州司法長官から消費者詐欺で訴訟を起こされています。「虚偽の約束で顧客を誘い、意図的に支払いを拒否した」とされており、現在も係争中です。

契約書の「ワナ」に注意!何が保証されて、何が対象外?

 宣伝文句だけを信じるのは危険です。契約書の細かい文字(Fine Print)にこそ、重要な情報が隠されています。

  • 一般的な対象外項目
    • 契約前の故障 (Pre-existing Conditions): 加入時点ですでに壊れていたものは対象外です。
    • メンテナンス不足: エアコンのフィルター掃除を怠った、などが原因の故障は保証されません。
    • 二次被害: 水漏れで床が水浸しになった場合、水漏れ元の修理は保証されても、床の修復費用は対象外です。
  • 最重要チェックポイント:保証上限額

 各項目には、支払われる金額の上限が設定されています。例えば、エアコンの交換には数千ドルかかることも珍しくありません。上限額が低すぎると、差額の大部分を自己負担することになり、ワランティの意味がなくなってしまいます。

結論:契約前に必ず自分の目で確かめよう!

 ホームワランティは、賢く使えば予期せぬ出費に対する強力な盾になります。しかし、そのためには安易な契約は禁物です。契約する前には、必ず以下の点を自分の目で確認してください。

✅ 保証範囲と除外項目: 何が含まれ、何が含まれないのか?

✅ 保証上限額: 修理や交換に十分な金額か?

✅ サービスコール料金: 業者を呼ぶたびにいくらかかるのか?

✅ 企業の評判: BBBなど第三者機関への苦情件数やレビュー内容はどうか?

 価格の安さだけに惹かれず、契約書の隅々まで読み込み、信頼できる会社を慎重に選ぶことが、あなたのマイホームと家計を守るための最も確実な方法です。

米国「ホームワランティ」の賢い使い方と落とし穴:本当に必要?
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