「いつかはハワイに住んでみたい…」多くの人が抱く、南国の楽園への憧れ。青い海と空、心地よい風に吹かれながら、自分のコンドミニアムで過ごす時間は、まさに夢のようですよね。
しかし、その夢の実現に向けて物件を探し始めると、多くの人が思わぬ費用の壁に直面します。それが、毎月支払う「HOA費用」。日本では「管理費」や「共益費」にあたるものですが、その金額を見て驚く方が後を絶ちません。
「え、日本のマンションの5倍!?」「高級物件だと10倍以上…?」そうなんです。ハワイのHOA費用は、日本の常識が通用しないほど高額なケースが珍しくありません。この記事では、ハワイ不動産の専門的なレポートを基に、なぜハワイのコンドミニアムの共益費はこれほどまでに高いのか、その謎を分かりやすく徹底的に解き明かしていきます。
まずは現実を知ろう!日米の圧倒的な価格差
論より証拠。まずはハワイと日本の共益費がどれだけ違うのか、具体的な数字で見てみましょう。レポートによると、東京の一般的なマンションの管理費・修繕積立金の合計は、1平方メートルあたり月額約482円。タワーマンションでも約677円が平均です。
一方、ハワイのホノルルではどうでしょうか。比較的手頃な新築物件ですら、1平方メートルあたり月額約1,100円。中〜高級クラスになると約1,920円、そしてリッツ・カールトンのような超高級物件では、なんと約4,130円にも達します。
物件タイプ | 日本 (円/m²) | ハワイ (円/m²) | 差 |
一般的な物件 | 約482円 | 約1,100円〜 | 約2.3倍〜 |
高級物件 | 約677円 | 約2,000円〜 | 約3倍〜 |
超高級物件 | -- | 約4,130円〜 | 10倍以上も |
この驚異的な価格差は、単に「ハワイは物価が高いから」だけでは説明できません。その背景には、ハワイ特有の構造的な要因が複雑に絡み合っているのです。
アメリカ本土と比べても突出!全米トップクラスのHOA費用
「ハワイが高いのは分かったけど、アメリカの他の都市と比べたらどうなの?」そう思われるかもしれません。実は、ハワイのHOA費用は、アメリカ国内でも突出して高い水準にあります。レポートによれば、ホノルルは全米で最もHOA費用が高い都市であり、その平均額はニューヨークやサンフランシスコといった大都市さえも上回ります。
地域 | 月額HOA費用(平均値) |
ホノルル都市圏 | $730 (約11万円) |
ニューヨーク市 | $679 (約10.2万円) |
マイアミ | $647 (約9.7万円) |
サンフランシスコ都市圏 | $400 (中央値) (約6万円) |
全米平均 | $293 (約4.4万円) |
※1ドル=150円で換算
このように、ハワイの費用は全米平均の2倍以上。日本との比較だけでなく、アメリカの基準で見ても際立って高額なのです。では、その具体的な理由を掘り下げていきましょう。
理由1:避けられない「アイランド・プレミアム」
ハワイのコストを押し上げる根本的な原因、それは地理的な孤立です。ハワイは、広大な太平洋の真ん中に浮かぶ島々。建物を建てるためのコンクリートや鉄骨、内装材、さらには専門的な機材に至るまで、そのほとんど全てをアメリカ本土やアジアからの船便に頼らなければなりません。
資材が港に届き、そこから各島、各現場へと運ばれる…。この何重もの輸送プロセスが、コストを雪だるま式に膨らませます。これが「アイランド・プレミアム」の正体です。
さらに、熟練した職人の数も限られているため人件費も高騰します。この「高い建設コスト」は、物件価格だけでなく、建物の価値そのものを引き上げます。結果として、後述する保険料や将来の修繕費用も高くなり、月々のHOA費用に直接跳ね返ってくるのです。
理由2:最大の要因!ハワイを襲う「保険クライシス」
近年のHOA費用高騰の最大の引き金となっているのが保険料です。日本の最大の災害リスクが「地震」であるのに対し、ハワイのそれはハリケーン。そのため、ハワイのコンドミニアムは、巨大なハリケーン損害保険への加入が義務付けられています。
問題は、この保険料がハワイの天候だけで決まるわけではない、という点です。ハワイの保険会社は、巨大災害に備えて「再保険会社」という「保険会社のための保険」に加入しています。そして、この再保険会社は世界規模で事業を展開しています。
つまり、カリフォルニアで大規模な山火事が起きたり、フロリダを巨大ハリケーンが襲ったりと、世界中のどこかで大きな災害が発生すると、再保険市場全体が打撃を受けます。その結果、リスクが高いと見なされているハワイの保険料が、世界的な影響を受けて一気に引き上げられてしまうのです。
さらに、2023年のマウイ島の大規模火災が決定打となりました。保険会社はハワイのリスクを根本から見直し、保険料は過去数年で3倍、4倍、あるいはそれ以上という異常な高騰を見せています。もはやこれは「保険クライシス」と呼ぶべき事態なのです。
理由3:暮らしの思想が違う。「リゾート生活」のサブスク料
最後の理由は、コンドミニアムに求めるライフスタイルの違いです。日本のマンションの価値が、耐震性やセキュリティ、宅配ボックスといった「機能性」や「安全性」にあるのに対し、ハワイのコンドミニアムは「住居としてのリゾート」として設計されています。
- 滝のある豪華なプールやジャグジー
- 最新鋭のフィットネスジム
- テニスコートやゴルフシミュレーター
- 24時間体制の警備員やコンシェルジュ
これらの豪華なアメニティや手厚いサービスは、すべてHOA費用によって維持・運営されています。つまり、ハワイのHOA費用は、単なる建物の維持費ではなく、リゾートのような暮らしを享受するための「包括的なサービス・サブスクリプション料」と考えるのが適切でしょう。
結論:HOA費用は「楽園のコスト」そのもの
ここまで見てきたように、ハワイのHOA費用が高額なのは、
- アイランド・プレミアムによる資材・人件費の高騰
- ハリケーンと世界の災害リスクを反映した高額な保険料
- 豪華なアメニティとサービス、つまりリゾート・ライフスタイルの対価
という複数の要因が絡み合った結果です。それは、日本の感覚でいう「法外な管理費」ではなく、世界で最も魅力的な場所の一つに資産を維持し、楽園での夢の生活を守るために必要な包括的なコストなのです。
これからハワイの不動産を検討される方は、物件価格と同じくらい、あるいはそれ以上にこのHOA費用を注意深くチェックしてみてください。その数字の裏側には、ハワイならではの暮らしの価値と、向き合うべきリスクの両方が映し出されているはずです。
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