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グリーン知事がハワイ住宅難解決?イヴィレイの27,500戸は第2のカカアコか

 このレポートは、ハワイ州の住宅問題に対応するため、ジョシュ・グリーン知事が主導する広範な住宅イニシアチブに関する詳細をまとめたものです。

1. グリーン知事の住宅に対する取り組みと優先事項

 グリーン知事によると、住宅問題は引き続き最優先事項であり、「アフォーダビリティ、つまり生活費と住宅が、依然として州民の二大関心事であり、我々の最優先事項である」と述べています。知事の頭の中の不動産に関する話題の「半分」は常にこの問題で占められている、とも述べています。

 知事は、2023年8月のマウイ山火事への対応や、観光への悪影響を補うための宿泊税法の成立、さらには生活困窮者向けの減税法案など、他の重要課題にも力を注いできました。しかし、住宅問題が依然として最優先事項であることに変わりはありません。そのため、知事は「住宅危機」という言葉を頻繁には使わないものの、住宅に関する緊急宣言を継続しています。

住宅市場の現状と課題

 知事が就任した2022年12月以降、市場には改善の兆しがほとんど見られません。一戸建て住宅やコンドミニアムの再販価格は横ばいになったものの、家賃は17%増加しています。また、世論調査では、住民の53%が住宅費に負担を感じており、28%が深刻な費用負担を感じていると示されています。

2. 64,000戸のパイプラインと構成

 グリーン知事は、ハワイには現在「アフォーダブルハウジング開発パイプライン」に64,000戸があると発表しています。しかし、この名称にもかかわらず、計画に含まれるすべての住戸が手頃な価格で提供されるわけではありません。ハワイ州が公式に認めている現在の住宅不足は約50,000戸とされており、このパイプラインは理論上、現在の不足数を上回るものです。しかし、この64,000戸のうち約31,000戸はまだ初期段階にあり、土地利用許可やその他の認可を得るための骨の折れるプロセスを経る必要があり、実現には数年かかる可能性があります。

 また、このうち24,000戸は州有地に計画されており、内訳は以下の通りです:

  • ハワイアンホームランズ局(DHHL)(ハワイ先住民の血を引く人々を対象に、居住用の土地を提供する州の機関): 7,000戸
  • ハワイ住宅金融開発公社(HHFDC): 4,000戸
  • ハワイ公営住宅局(HPHA)による建て替え賃貸住宅: 12,000戸

3. 主要な開発イニシアチブ

イヴィレイ(Iwilei)再開発計画

 グリーン知事は、ホノルルのチャイナタウンに隣接する鉄道沿線の労働者階級の地域であるイヴィレイに対して大きなビジョンを持っています。

  • 規模と費用: 州の納税者資金で推定6億6,700万ドルを要する大規模なインフラ整備を計画しています。
  • 効果: これにより、27,500戸の新しい住宅と50億ドル以上の投資が見込まれます。
  • パイプラインとの関係: イヴィレイで構想されている27,500戸の住宅のうち、現時点で州のパイプラインに含まれているアフォーダブル住宅はまだ約3,000戸です。
  • 既存住民への影響: 現在、イヴィレイには約12,295人の住民が4,297戸の住宅に住んでいます。この地域を包含するリリハ・ヌウアヌ地区の平均家賃は約1,400ドル/月であり、オアフ島の世帯平均収入(91,000ドル)よりもはるかに低い中央世帯収入(45,400ドル)であるため、住民は住宅費のストレスに直面しています。

4. 政策ツールと法的な勝利

HHFDCの権限強化と「アフォーダブル」の定義を巡る議論

 知事のイニシアチブの柱の一つは、既存の州法に基づき、ハワイ住宅金融開発公社(HHFDC)に広範な開発権限を与えることです。HHFDCは、特定のアフォーダビリティ要件を満たすプロジェクトの資金調達を支援します。

  • 規制免除: HHFDCの承認を得たプロジェクトは、計画、ゾーニング、区画整備、土地の改良、住居ユニットの建設に関する政府機関のすべての制定法、条例、その他の規則から免除されます。
  • 郡議会の権限縮小: 郡議会は、計画提出後45日以内にプロジェクトを承認、修正、または却下する必要がありますが、期限内に対応がない場合、承認されたと見なされます。
  • 2025年の議会会期において、知事への勝利として、郡議会がプロジェクトのコストを増加させるような修正を加えることを禁止する法案が可決されました。知事は、HHFDCがプロジェクトを承認した後、「追加の条件を追加したくない」とこの法律を擁護しています。

5. 立ち退きと社会的な利益に関する議論

 批評家は、HHFDC法が地方政府の土地利用規制能力を制限し、アフォーダブルハウジングを装って町の高級化を促進していると指摘しています。グリーン知事は、制度上は手頃な価格と見なされても、多くの人にとって手が届かない価格設定である住宅のために、既存の労働者が住める住宅を破壊する結果になったとしても、この法律の使用を擁護しました。

  • クウレイ・プレイスの事例: 一例として、小林グループによるHHFDC承認のクウレイ・プレイスプロジェクトでは、1,005戸の43階建てプロジェクトのために、ワイキキのホテルやレストランの職場から徒歩圏内にある、約120戸の2階建てエレベーターのないアパート(まさに労働者のための住まい)が取り壊されました。
  • このプロジェクトでは約600戸のコンドミニアムがアフォーダブルとして確保されましたが、価格は世帯の人数によって異なり、例えば4人家族の場合は、年収が約104,500ドルから158,600ドルの世帯が対象でした。
  • 知事は、このプロジェクトは社会全体にとって良いことだと判断しました。彼は、これにより新たに数千人規模の人々を収容できる点を挙げ、「それがマクロな住宅提案である」とし、立ち退きを余儀なくされた人々は「社会へのより大きな利益のために比較的にごく少数である」と述べました。

6. 将来の展望:イヴィレイは「第2のカカアコ」になるのか?

 グリーン知事の住宅政策の核心には、大規模なインフラ投資を伴うイヴィレイ地区の再開発計画があります。この壮大な計画は、多くの期待を集める一方で、ホノルルで近年急速に高級化したカカアコ地区の再来となるのではないかという懸念も生んでいます。

  • カカアコとの比較: カカアコ地区の再開発では、多くの高級コンドミニアムが建設され、街並みは一変しましたが、その一方で「アフォーダブル」とされる住宅の割合は全体の供給戸数に対して限定的でした。イヴィレイで計画されている27,500戸の住宅についても、現時点でアフォーダブル住宅の具体的な割合は示されておらず、カカアコと同様に、市場価格のユニットが大部分を占める可能性が指摘されています。
  • 投資対象としての可能性: もしイヴィレイがカカアコのような開発を辿るなら、市場価格で販売されるユニットは、将来的に価値の上昇が見込める魅力的な投資物件となる可能性があります。鉄道駅への近さやチャイナタウンへの隣接といった立地の良さは、資産価値を高める要因となるでしょう。しかし、それは同時に、住宅価格の高騰を招き、地元の労働者階級がさらに住居を確保しにくくなるというジレマもはらんでいます。

 知事の目標は、州外への人口流出を食い止め、地元住民がハワイに住み続けられるようにすることです。しかし、イヴィレイの再開発が単なる不動産投資の対象となり、結果として裕福な層だけが住める街を創り出すことになれば、その目標とは裏腹に、格差をさらに拡大させてしまう危険性も残ります。このプロジェクトの真価は、住宅供給戸数を増やすだけでなく、どれだけ多くの地元住民にとって「真に住みやすい場所」を提供できるかにかかっていると言えるでしょう。

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グリーン知事ハワイ住宅難解決:イヴィレイの27,500戸は第2のカカアコ?
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