不動産を貸している場合の評価は、自分で利用しているよりも、他人に賃貸している方が評価は下がります。これは自分で利用しているときと比べて、第三者が使っている場合は自由に売却したりすることが難しく、一定の制限がかかるためです。そのため税法では賃貸されている土地や家屋については、権利関係に応じて評価額が調整されることになっています。
代表的なものとして貸宅地(底地)があります。土地に家を建てるには土地の使用権が必要です。自分が所有している土地に自分の建物を建てるのであれば、土地の使用に特に問題ありませんが、他人の土地の上に建物を建てる際は、土地の所有者と賃貸借契約を結ばなければなりません。その際に賃貸借契約を結んで、他人に貸す土地のことを「貸宅地(底地)」といいます。
貸宅地の評価方法は更地の評価額-借地権価額(更地の評価額×借地権割合)=貸宅地の評価額となり、借地権割合は30~90%で、財産評価基準書に記載されています。都会では、土地の利用価値が高いとみなされ、利用する権利を持つ借地権の割合は、地方より高く定められています。
例えば、借地権割合90%の評価額1億円の土地を貸すと、借地権価額、つまり借主が持つ権利の価値は9000万円で、貸宅地の評価額は1000万円にしかなりません。都市部で不動産を購入して貸すことが、地方より節税に有利であるのはこのためです。
また自分が賃貸マンション、アパートなどを建てて、その居室を他人に貸している自分の土地もあります。そのような土地を貸家建付地といいます。貸家建付地の評価は、以下のように計算します。
貸家建付地の評価額=更地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合×借家権割合×賃貸割合が、借り主が持つ権利の割合です。建物を100%借りているとすると、借地権割合×借家権割合が借主の権利の割合ということになります。借地の評価額の計算に、なぜ借家権割合を使うのでしょうか。
借地権というのは、その土地を何にでも使える場合の権利ですが、この場合は、所有者が建物を建てており、用途が決められています。借主は、思い通りの建物を建てることはできませんので、その分価値が減り、貸主の貸家建付地の評価がその分増えるのです。
子が親の土地に家を建て、地代を払っていない場合は、使用貸借と呼ばれ、税務上、借地権はありませんので、自用地とみなされます。
定期借家権
以上の説明は、普通借地権と普通借家権に関するものですが、その後、定期借地権と定期借家権が設けられました。定期借地権には、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権の3種類があります。最も多いのが一般定期借地権で、残存期間は50年以上です。
普通借地権割合が70%の地域では、一般定期借地権の底地の割合は55%です。これは、自用地評価額1億円の宅地に50年の一般定期借地権を設定した場合、底地の評価額が5500万円になるということです。評価額が変わらないとすると、その後、残存期間が減るにつれ、だんだんと1億円に近づき、50年後には、土地が地主に戻り、1億円になります。
借地権割合が70%の場合は、底地割合の方が低いですが、60%だと同じになり、それ以下だと底地割合の方が高くなります。また、借地権割合が80%以上の場合は、この計算方法は適用されません。実際には、数多くのシナリオが考えられ、ここですべてを網羅することはできませんので、定期借地権の底地の評価額は、専門家にご相談ください。
200平米以下の貸付用土地に関しては、小規模宅地特例の宅地評価という相続税の特例もあります。
なお、貸家の評価額は以下のように計算します。まず、固定資産税評価額とは自宅として使っていた場合の評価額です。貸家の評価方法は固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)です。借家権割合は、借地権割合と考え方は同じですが、割合は全国どこであろうと30%に統一されています。賃貸割合とは、建物の何%が貸されているかです。課税期間中に貸されていた総面積を建物の総面積で割って出します。
仮に空き家のままで何も貸されてないとすると、借家権割合×賃貸割合は、30%×0=0になります。したがって、評価額は固定資産税評価額、つまり自宅として使っている場合と同じになります。100%貸されている場合は、固定資産税評価額に占める借家権割合が30%、貸家所有権の割合が70%になります。
貸家の一部を自宅として利用している場合は、床面積に従って計算します。階数によって価値を変える必要はありません。
固定資産税評価額2000万円の建物で、1階と2階の面積が同じ建物のどちらかの階を自宅として使っている場合、自宅の階は1000万円、貸している階は1000万円×70%=700万円と評価されます。ちなみに残りの300万円が借家権の評価額ですが、借家権の対価として「権利金」などの名目で金銭が取引される慣行のない借家の場合には、借家権は相続財産にはなりません。
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