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コンド組合の弁護士が弁護士料を取り立てようとしてどうなったか

 「犬の飼い主への$150の罰金で始まった訴訟の債権回収法違反で、ポーター・マックガイア・キアコナ法律事務所に$47.5万の損害賠償判決」

 なんのこっちゃと思うかもしれません。事の始まりは、介助犬の扱いが不適切であったと言う理由で、カピオラニ通のプルメリア・ハレ・コンドのオーナー、ワータさんが$150の罰金を科されたことでした。コンドは、組合法専門のポーター・マックガイア・キアコナ法律事務所を雇って、罰金を取り立てたのです。

 法律事務所は、督促状をワータさんに送りましたが、ワータさんによると、訳のわからない文章で、金額も、罰金の$150だけではなく、多額の弁護士料が足されていました。取立費用も取り立てるのは普通で、その方がもともとの請求額より高いと言うことはよくありますが、ちょっと高過ぎたのでしょうね。その支払いをしなかったため、請求額が雪だるまのように増えて行ったのです。

Lien(抵当権)

 ポーター・マックガイア・キアコナは、2016年にワータさんを訴え、弁護士料の請求だけで$14,000になりました。弁護士料はさらに膨れ上がり、2019年にワータさんのコンドに$29,000の抵当権が設定されました。ワータさんは、法律事務所の取り立てが悪質であるだけでなく、訴訟で個人情報であるワータさんの医療記録を公開したとして、反訴したのです。

Punitive Damage(懲罰的賠償金)

 陪審員は、取り立てが悪質であったことに関して、$5万の損害賠償を言い渡しました。個人情報の公開に関しては$2.5万の賠償責任ですが、さらに懲罰的賠償金として$40万を言い渡しました。懲罰的賠償金とは、実質損害以外に、被告に罰を科して同じようなことを繰り返さないようにするためのもので、米国ではこれが大きいのです。大会社が悪質なことをしても、数万ドルの賠償金で済むのなら、抑止効果がないと言うことです。

Compensatory Damage(補償的損害賠償)

 2012年のサンディーフック小学校の大量殺人事件はデマ、と言う陰謀論を広めたアレックス・ジョーンズ氏に、今年10月12日、$9.65億の補償的損害賠償が言い渡されました。彼を訴えたのは犠牲者の親たちで、精神的苦痛だけでなく、陰謀論を信じた人からの嫌がらせや脅しを頻繁に受けたのです。

Net Worth(純資産)

 この賠償金は米国史上最高です。懲罰的賠償金はこの上にさらに足されることになりますが、まだ決まっていません。法律では補償的損害賠償の最高10倍までだそうです。ジョーンズ氏の純資産は$1.35~2.7億と言われていますので、所詮払える額ではありません。

Settlement(示談)

 話をハワイに戻しますが、興味深いことに、地裁のレスリー・コバヤシ判事は、陪審員が決めた賠償金を科す前に、示談交渉をするよう命じました。通常、示談は判決の前にするものですが、ポーター・マックガイア・キアコナが控訴する可能性があるので、それを避けるための処置だと思われます。

Rules of Professional Conduct(職業倫理規定)

 ワータさんの弁護士、ジャスティン・ブラケット氏によると、ポーター・マックガイア・キアコナは、いつもこのパターンで住民を困らせてきたと言うことです。ハワイ職業倫理規定によると、弁護士は、妥当ではない弁護士料や法的費用の契約、請求、取り立てをしてはいけません。ブラケット氏は、たった$150の罰金の取り立てにこれだけの弁護士料を請求するのは妥当とは言えない、と述べています。ポーター・マックガイア・キアコナは、この規定を犯しているかもしれないということです。

Legal Aid Society(法律扶助協会)

 ハワイ法律扶助協会住宅消費者班のダン・オメラ弁護士によると、組合管理専門の弁護士にとって、罰金や共益費の滞納金などの取り立てはドル箱だそうです。

 私自身、ポーター弁護士には会ったことがあります。私のクライアントを巻き込んだ些細な訴訟の弁護士だったのですが、あまり良い印象は持ちませんでした。ポーター・マックガイア・キアコナに個人的な恨みがあるわけではありませんが、これで少し懲りてくれればいいなと思っているのは、私だけではないでしょう。

 米国では、信用できない職種のトップに挙げられるのが中古車のセールスマンと弁護士です。また、日本では原告が被害者で善人、被告が加害者で悪人と言うのが普通ですが、米国ではその逆が多いのです。弁護士選びは、不動産エージェント選びよりも慎重に。

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コンド組合の弁護士が弁護士料を取り立てようとしてどうなったか
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