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農家のおばあちゃんのコンサルで犯した失敗:3千万の税控除がパー

 不動産は、業者や銀行に騙されなければそれですべてがうまく行くわけではない。悪いアドバイスを避けるだけではだめで、正しいアドバイスをしてくれる人を見つけなければならない。

 ある税理士が客を紹介してくれた。若いころ農家に嫁いだおばあちゃんだった。ご主人はもう亡くなり、娘家族と広い古い家に住み、まだ売り残していた農地で少しばかりの畑仕事をしていた。家が古くなったので、農地の一部を売り、そのお金で自宅を新築しようと考えたのだ。

 コンサルをしていてよく思うことだが、この例のように、客には目的があり、その目的を達成するための何らかの手段を既に考えていることが多い。問題は、その手段の多くが間違っていると言うことだ。

 このおばあちゃんの場合もそうだった。農地の一部を売った金で家を建てると言うのは、まずいことが二つある。一つは誰でも気づくことだと思うが、既存の家を解体して建て直す間、仮住まいに引っ越さなければならない。引越も2回することになる。だったら、農地に家を建て、引っ越してから自宅を売ればよい。農地は家の隣だったので、不便はないはずだ。

 そうした方が良い理由がもう一つある。今住んでいる家を売った場合、売却益のマイホーム控除があるが、農地を売ればそれはない。3000万円分の譲渡所得税が節税できるだけでなく、6千万円までは譲渡所得に対する税率が20.315%から14.21%に下がる。建築費は、百万円くらいの手付金だけ払って、残りは家を売ってできたお金で返すと言えば、引き受けてくれる業者もいる。

 河野社長は、我ながらいいアイデアだと思いながら、熱く説得した。おばあちゃんは、差し当たっていくらで売れるか聞きたかったのだが、そんなことはそっちのけだ。

 実は、知り合いの不動産業者の社長に頼まれて、若手の優秀な営業マン12人に6日間の大掛かりのセミナーをしてあげたことがあった。その時にこの事例を使って、君たちだったらどうアドバイスするかという課題を出したことがあったが、この案を思いついた者はいなかった。彼らのアイデアは、アパートを建てたほうがいいとか、業者が儲かる話が多かった。

 普通の不動産屋では気が付かないアイデアだと思い、社長はいつものように天狗になっていたのだろう。税理士も、ほとんどの場合、納税額がいくらになるかと言う計算をしてくれるだけで、こういう提案ができる人はあまりいない。おばあちゃんと話した後でこの提案を連絡して、税理士さんも喜んでくれたが、中にはお前は頼まれたことをすればそれでいいと怒る人もいる。

 ところがこのおばあちゃん、その後連絡がなくなった。他の不動産屋に相談して、自分のアイデア通り農地を売ってできたお金で旧居を建て替えてしまったのだ。そのことを知った税理士が、なぜ河野社長の話を聞かなかったのかと尋ねたところ、圧倒されて何か売りつけられそうな感じで怖くなったのだと言う。

 これにはさすがの社長もショックを受けたようだ。自分が儲けられなかったからではない。調子に乗って熱弁をふるったおかげで、このおばあちゃんに大損をさせてしまったからだ。「空気が読めない」とは、このことだ。

 このおばあちゃん、実際どのくらい損したか計算してみよう。まず、農地売却の譲渡税から。

 譲渡税は6,923,791円だ。次に代替借家費用。これは1,468,000円。合計で8,391,791円だ。

 では、農地に住宅を建てて、旧居を売った場合の譲渡税を出してみると、228,100円にしかならない。この場合も、一度は引っ越さなければならないし、上下水道を引かなければならないが、すぐ隣なので30万円ほどだ。それらを足しても778,100円。と言うことは、差額は8,391,791-778,100=7,613,692円の損と言うことになる。

弊社に相談に来られる方は、河野社長に惑わされないよう、くれぐれもご注意頂きたい。

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農家のおばあちゃんのコンサルで犯した失敗:3千万の税控除がパー
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