ハワイでキャップレート8.5%の物件?:モンスター・ハウス

キャップレート8.5%の謎

カリヒという地域で、ある物件が売りに出されました。5LDK2戸、3LDK1戸、2LDK1戸、1LDK1戸、全部で5ユニットで、419平米です。155万ドルで売りに出たのですが、なかなか売れないので、130万ドルに値下げしました。130万ドルで計算すると、キャップレートは8.5%ハワイでは非常に良い数字ですので、一応見てみることにしました。

まず、カリヒはあまり良い場所ではありませんが、この物件のある場所は、カリヒの中ではよい方です。居住系の投資は、高級なものほど長期で借りる人が少ないので、投資には向いていません。中の下くらいが一番良いと思いますが、この物件の場合は下の上くらいでしょうか。エージェントは、NOI(営業純利益)は実数だと言っていましたが、よく話を聞いてみると、一部は親戚に貸してして、それらのユニットは市場より安くしているとのこと。NOIは全部市場家賃で貸した場合の数でした。

モンスター・ハウスとは

本当の問題が何かは、見に行く前から見当がついていました。MLS(マルチ・リスティング・サービス)から、固定資産税など、いろいろな情報をすぐに調べることができるようになっていますが、それによると、この物件は一戸建てなのです。それを5戸に分けたのです。ハワイは住宅難ですので、このような物件が多く、大きいのでモンスター・ハウスと呼ばれ、問題になっています。物件の敷地のゾーニング(建築用途の規制)は戸建てですので、集合住宅を建てられる場所ではありません。

法的問題を回避する方法がある

しかし、法的問題を避ける方法はあります。まず、法律によると、通常、台所は一つでなければなりません。しかし、冷蔵庫かオーブンどちらかがなければフルキッチンとはみなされないので、鑑定の時に、そのどちらかを台所以外の部屋に移動すればよいだけです。家の外に出す必要さえありません。ばかげた法律だということは鑑定士もわかっていますので、移動していなくても、見て見ぬふりをする人もいるくらいです。このような台所は、通常ウェット・バーと呼ばれます。流しがついているので、濡れている(wet)だというわけです。

また、全部のユニットが内部でつながっていないといけません。これも、割と簡単に回避できます。普通のアパートのように、中に入ったらすぐ廊下という状態にして、廊下から各ユニットに入るようにすればよいのです。しかし、いくら何でも玄関から入ったらすぐ廊下ということは考えられません。そこで、この物件のように、道に面しているユニットは玄関から普通に入るようにして、残りの四つは勝手口から入るようにするのです。つまり、家の横あるいは後ろにある勝手口を開けると廊下があり、その廊下に他の四つのユニットの入り口があります。勝手口が正面のユニットにもつながっていればいいですが、この家はそうなっておらず、正面のユニットだけ孤立していますので、売るときにはそのユニットの後ろの壁をぶち抜いて、その後ろにある廊下につなげなければなりません。買った後でまた壁を元に戻せばよいだけです。

建築許可なしに壁を外したりつけたりすることは違法ですが、その必要がないように作ってあれば、法律的には問題がありません。しかし、上記の条件を満たしていても、建築許可通りに建てられてない可能性が大ですので、それも要注意。また、1戸の住宅に住める家族以外の人数は3名以下と決められていますので、この家のように5戸もあれば、少なくとも2戸は親族が住まなければなりません。これも、自治体がちゃんと調べるわけではありませんが…。

自治体がなかば黙認

自治体は、このようなモンスター・ハウスをちゃんと取り締まることができるはずです。しかし、これらの家が住宅難を少しでも解消していることは確かですので、それが理由であるかどうかは分かりませんが、実際にはあまり厳しくありません。つまり、この物件を買ってアパートとして貸すことは可能ですし、実際そうされてきたのです。

利回り8.5%でも売れていない理由とは

さて、この物件が4か月たっても売れてない理由は何なのでしょうか。このような法律的問題でしょうか。それもあるかもしれませんが、築8年の割には、保守が行き届いてなく、中の状態はかなりひどいものでした。もともと、ご老人のケアホームとして建てたものの、ライセンスを取ることができなくて賃貸することにしたそうで、16の寝室はすべてほとんど同じサイズです。マスター・ベッドルームがない家というのは珍しく、通常寝室が複数ある場合は、その中の一つが主寝室として作られていますが、この家にはそれがないのです。しかも、ほとんどの押し入れはドアが最初からついていません。貸せなくはないし、実際、貸していたわけですが、決して魅力的な家ではありません。

もう一つ理由があると思います。今も、二つのユニットに親族が住んでいますが、彼らは売れたら引っ越します。他人に貸していたユニットは、既に全て退去してもらっています。鑑定するときに冷蔵庫かオーブンを台所から出さなければいけませんので、売れてから退去の通知をしたのでは間に合わないのです。ということは、稼働率0の物件を買うことになります。大規模修繕をするにはよい機会かもしれませんが、通常、空の投資物件は買いたくないでしょう。

投資には向いているが・・・

一つの敷地に複数のユニットのある物件は、投資には向いています。複数のユニットがある家がすべて違法だということではありませんし、違法であったとしても取り締まりは厳しくありません。しかし、少なくともそれらのリスクを知ったうえで、informed decision(詳細な情報を得たうえでの決断)をしてください。