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割引キャッシュフロー攻略⑪IRR(内部収益率)

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割引きキャッシュフロー攻略①~⑩

IRR(内部収益率)とは

FCR(抵当がない場合の収益率)とCCR(自己資本の収益率)は単年の収益率ですが、不動産投資は通常1年では終わりません。ですから、保有期間を通して毎年何%の割合で投資が増えて行ったかを計算する必要があります。これをIRRInternal Rate of Return)、内部収益率というのですが、FCRCCRと違って、複数年の収益率ですから、計算はずっと複雑になり、このシリーズでご紹介したローン計算ができる金融電卓のサイトでは計算できません。実際にやってみたい方は、HP10BII+いう金融電卓のスマホ用エミュレーターが売られていますので、購入して見てください。千円もしませんので、実物を買うよりずっとお得で、しかも画面が大きいので、使い勝手もいいです。

いくつかの初歩的な注意点を指摘しておきます。まず、これは自己資産の収益率です。つまり、自分がどれだけのお金を投資して、そこから毎年、そして売却時にどれだけのキャッシュフローがあったかで決まるものです。ですから、物件自体の価値や営業純利益は、現金で購入したのでない限り、計算には使いません。IRRの計算に使うキャッシュフローは、NOIではなくて、ADS年間負債支払額)を引いた後の数値です。また、売却時も、売却額ではなく、ローン残高を引いた後の手取り金です。

ちなみに、キャッシュフローとは、正確にはすべてのお金の流れを指して使う言葉ですので、初期投資や売却手取り金もキャッシュフローですが、不動産の保有期間中の毎年のキャッシュフローのみを意味することが多いです。

内部収益率の予測は売却が前提

次に、内部という言葉が使われている理由ですが、これは物件の中に投資されているお金の収益率であるという意味です。例えば、不動産投資の場合、通常毎年キャッシュフローがありますが、それは不動産投資から出てしまったお金ですので、出た後どうなるかは計算に入れません。そのお金を再投資し、それが何倍にも膨れ上がったとしても、ギャンブルに全部使ったとしても、それはIRRの計算には無関係です。

最後に、実際に売るか売らないかにかかわらず、内部収益率を予測するときは、売るという前提でないとできません。10億円で買った物件が10年後に5億円で売れるか20億円で売れるかによって、内部収益率は全く異なります。CCRは低くてもIRRは高い、つまり、毎年のキャッシュフローは少ないが、売却手取り金が大きいということもあれば、その逆もあります。ですから、実際に売る気がなかったとしても、何年か後に売るとすればいくらの手取り金があるかを予想する必要があります。また、売る時期が何十年も先になる場合は、予想が極めて困難になります。米国では、5-10年程度の期間で計算することが多いです。

IRRを計算してみよう

それでは、極めて簡単な例を計算してみましょう。1億円の投資で、毎年のキャッシュフローが1千万円、売却手取り金も1億円です。これはキャッシュフローが一定ですので、金融電卓のリンクをクリックして、ローン計算と同じように入力してくださっても結構ですし、HP10BII+あるいはそのエミュレーターに入力してくださっても結構です。

金融電卓

0年目のキャッシュフローは-100,000,0001年目から5年目までのキャッシュフローは10,000,0005年目の売却手取り金は100,000,000です。これでIRRを計算すると、10%になりました。

金融電卓で計算する場合は、Nが保有期間、I(金利)がIRRPVが初期投資、PMTが毎年のキャッシュフロー、FVが売却手取り金になります。この場合、売却手取り金が初期投資と同じで、毎年のキャッシュフローが一定ですので、IRRCCRと同じになります。

では、1億円の初期投資でキャッシュフローがなく、売却手取り金が161,051,000ならIRRはいくらでしょうか。0年目に-100,000,0001~5年目のキャッシュフローは0で、5年後の売却手取り金に161,051,000と入力してIRRを計算すると、これも10%と出てきました。

それでは一つ問題です。同じ1億円の初期投資で、毎年のキャッシュフローが1千万円、売却手取り金が161,051,000円ならどうなるでしょう。毎年1千万円のキャッシュフロー10%、売却手取り金が161,051,000円で10%の収益率でしたので、両方合わせると20%でしょうか。入力してIRR計算すると18.46%になりました。

IRR=CCR+初期投資とキャッシュフローの増加率

では、どうすれば20%になるでしょう。そのシナリオは無限にあるのですが、IRRがどのようなものであるかを御理解していただくために、キャッシュフローの1千万円を毎年10%ずつ増やしてみましょう。2年目に1100万、3年目1210万、4年目に1331万、5年目に1464.1万円と入力してみてください。これは、ローン計算のサイトでは入力できませんので、HP10BII+、そのエミュレーターを使ってください。

そうするとIRR20%になりました。つまり、IRRCCRプラス初期投資とキャッシュフローの増加率ということが言えます。もちろん、現実の世界でこんなぴったりの数になることはないですが、概念的な理解の助けになるかもしれません。と言うことは、物件をローンなしで購入し、キャップレートが一定だとすると、IRRは、キャップレート+物件価値の上昇率ということになります

このように、不動産投資の収益を図る率は、FCRCCRIRRの三つですが、IRRが複数年であること、また、FCRと違ってローンを計算に入れますので、通常、三つの中で最も重要だと言えます。しかし、FCRCCRが向こ1年の予想で済むのに比べ、IRRは、保有期間全体のキャッシュフローや売却手取り金の予想をしなければなりませんので、それが間違っていると、IRRも間違った数値になります。