Youtubeで不動産コラムをながら聴き

ホノルル・ボード・オブ・リアルターズ 2020年3月レポート

ホノルル住宅市場へのコロナウイルスの影響は?

通常なら、一ヶ月だけの数を見てもあまり参考になりませんので、3月だけでなく第一四半期全体の数値を見るのですが、今回は違います。コロナウイルスの影響が3月のレポートに既に出ているかどうかを調べるのが、今回の主目的です。

去年の3月と比べたホノルル市場は、まずまずで、戸建ての取引数は9.8%増、コンドは12.2%減、価格の中央値は戸建てが3.5%増、コンドも1.4%増でした。取引数は、四半期全体で見ると、戸建ては何と11.6%増、コンドは1%減っただけです。さらに、3月の戸建ての成約までの日数は9日も短くなって15日、コンドは1日増えて23日です。戸建てを好む人が増えていることは以前も書きましたが、売りに出して2週間で成約と言うのは、かなり良い数です。以下に統計をまとめておきます。

 

影響が無いように見えるが・・・

 それでは、いつものようにホノルル・ボード・オブ・リアルターズのトリシア・ネコタ会長に登場してもらいましょう。「数だけを見るといいですが、変化が起き始めています。ほとんどの取引は、ロックダウン(3月23日から)の30日以上前にエスクローに入っていた(成約していた)ものです。3月に売りに出された物件は、10%以上減っています。これは、COVID-19によって市場が変わり、経済の先行きが不安定であることに対するリアクションです。」

つまり、3月に売れた物件のほとんどは、1-2月に成約しているので、3月の統計にはまだコロナウイルスの影響はないというのです。しかし、ネコタ氏の言う通り、3月に売りに出た物件は、戸建てで16.7%、コンドでは14.3%減っています。売りに出したけれどやめた、あるいは一時的に保留にした物件もかなりありますし、値段を下げた物件も多いです。ですから、在庫はかなり減っています。

オープンハウスは3月24日から中止されました。内見はバーチャルが奨励され、物件に実際に行かなければならない場合は、社会的距離を取ることが勧められています。

不況と不動産

先々週のブログにも書きましたが、コロナウイルスの影響で、不動産が株のようにあっという間に3分の1も下がるなどということは考えられません。下がり始めてはいますが、どこまで下がるかは、コロナウイルスの影響がどれだけ続くかによるでしょう。コロナがある程度終息しても、観光に頼っているハワイは、一般の市場より長引くかもしれません。

株式市場は、将来の予想で今の価格が決まりますので、経済はまだ悪くなっているのに、先が見えてきたという理由で既に回復し始めています。不動産は、そう簡単には売りませんし、売れませんので、値段が下がるのも遅いですが、回復も株よりはだいぶん遅れます。どの程度落ちるか、またいつ頃回復するかはわかりませんが、終息後のトレンドはある程度予想できます。

終息後のトレンドは?

まず、終息後も在宅勤務は普及し続け、オフィスビルは稼働率が下がると思われます。小売物件も、既にインターネット商取引への移行で伸び悩んでいるわけですが、ますます悪化するでしょう。居住系は、高層コンドの人気が落ちると思われます。一日に何度も狭いエレベーターに複数の人と乗り、ボタンを押さなければならないのは、危険だと感じる人が多いでしょう。ジムやプールなどのアメニティーの多くも、不特定多数の人と共用しなければなりません。

アメリカの多くの大都市は、スラム化したダウンタウンを再開発して、高級コンドが立ち並ぶようになりましたが、郊外に逆戻りする人が増えるでしょう。特に、在宅勤務のできる職種の人は、田舎に引っ越す人もいるかもしれません。また、在宅勤務をするためには、自宅に書斎があった方が便利ですが、都市部のコンドで一つ余分な部屋を確保することは高くつきます。しかし、田舎や郊外の戸建てなら、一つや二つ使っていないベッドルームがあるのは普通です。

また、コロナが重症化しやすいご老人は、退職してから田舎で生活する人が増えるでしょう。ご老人は、仕事をしていなくても、年金などの収入があり、お金が地元に流れますので、基盤雇用のような役割を果たし、彼らにサービスを提供する雇用が増えます。逆に、人口が多くなければ成り立たないイベント的な業種は、集まる人が減り、衰退するでしょう。大都市の経済基盤乗数が中小都市より高い一つの大きな理由は、人口が多くなければ成り立たない業種があるからですが、それが減少すると、乗数の差自体が縮まり、都市化と過疎化は、さらに歯止めがかかるでしょう。

コロナウイルスのワクチンができて、完全に撲滅できれば、ほとんど影響はないかもしれませんが、インフルエンザの予防注射でも完ぺきではありませんので、根絶とまでには至らないかもしれません。できたとしても、何年か掛かるかもしれませんので、人を避ける傾向が続く可能性が大です。それ自体は決して良いことではありませんが、深刻化する都市化と過疎化に歯止めがかかり、長い通勤時間をゼロにすることができるなら、二酸化炭素の排出量も減り、家庭生活にも時間的なゆとりができて、不幸中の幸いになるかもしれません。

ローン滞納のプログラム

最後に、一つ気になるのは、政府が発表した180日間のローン滞納を許すプログラムで、状況によっては、さらに180日延長されます。これは、180日分のローンの支払いが無くなると誤解している人がいるようですが、ペナルティーなしで滞納をしても良いというだけです。支払えない人は仕方がありませんが、支払えるにも関わらず、これを申し込む人は、実質的に何の得にもなりません。これによって金融市場が必要以上の混乱に陥れば、銀行がローンを出さなくなるかもしれません。借りた翌日に滞納の申し込みをする人もいるそうですが、むやみにこれを利用することは、非常に危険です。今のところ、信用調査の点数にも考慮しないという方針ですが、何らかのペナルティーが必要ではないかという気がします。