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バイデン大統領就任に至るまでの背景50年:福音派キリスト者としての意見

多くのドラマがあったアメリカ新大統領就任

今回の大統領選は、新大統領就任式までいろいろなことがあり、日本の皆さんもかなりハラハラなさったと思います。大統領選にまつわる陰謀論が広まり、今まで米国の政治にそれほど興味を持っておられなかった方の中にも、今回ばかりはいろいろと調べられた方も多いのではないかと思いますが、長い歴史の中の数カ月だけをスライスしても、全体像が見えなければ、よく理解できないのではないかと思います。また、日本には情報がないということもよく聞きました。

私自身、ニュースは平均的なアメリカ人よりはよく見ていますし、政治に興味はある方ですが、人が政治の話をするのを聞いてよい印象を持つことはほとんどないので、自分も控えるようにしてきました。大統領選後まもなく、陰謀論が出回るようになったので、その背景についてブログを書きましたが、国会襲撃のような大事件もあり、米国の将来について皆が真剣に考えなければならないと感じています。

クリスチャンは政治運動に関わるべきか

もう一つ、この文章を書こうと思った理由があります。私は福音派のクリスチャンですが、トランプ当選後の福音派の動きを憂えている一人です。何度かお会いしたことのある有名な福音派のドイツ人牧師が、最近、米国の福音派指導者たちに、自分たちの過ちを認め、謝罪し、方向転換を勧める文章を発表しました。

それを読みながら思ったことですが、私がこの4年間政治について黙っていたことは、決して良いことではなかったと思ったのです。私は教会が政治運動に関わることは躊躇しますが、誤った関わり方をしている同胞に対して沈黙を守ることも、決して良いことではないと気付かされました。私の文章を読んで彼らが考えを変えるとは思いませんが、自分たちとは違う意見の人もいるということを知ってもらった方が良かったでしょう。

というわけで、この長ったらしい文章を書くことにしたのですが、短い文章では説明しきれないと思うのです。私自身、高校を卒業してからほとんど米国に住んでいるわけですが、今のこの拙い理解に達するまで、何十年とかかり、その間には紆余曲折がありました。私の現在の米国政治に関する知識にたどり着くのは長い道のりでしたので、幼稚な知識とはいえ、そう簡単に説明できるとは思えません。

私は政治を専門的に勉強したわけではなく、平均的な米国の一住民として、米国政治の流れを書いているだけですので、間違いも多くあると思いますが、何か気付かれたことがございましたら、ご教示ください。本来であれば、全文「だそうです」とか、「と思います」と書くべきですが、読んでいて煩わしいだけだと思いましたので、断定的な表現にしたことをご了承ください。

1960年代公民権運動の時代背景

現在の米国の政治を理解するためには、少なくとも1960年代の公民権運動辺りまでは遡らなければならないと思います。当時は、リンカーンの共和党も、まだ南部が地盤であった民主党も、同じように公民権法の可決を望んでいたと思います。民主党が黒人の味方という印象がありますが、それは民主党のジョンソン大統領が音頭を取って64年に公民権法を通したことよりも、同年の通称「貧困との闘い」法案を通したことが大きな理由ではないかと思います。

当時、圧倒的に民主党が多数派でしたが、公民権法に関する最終決議で賛成票を入れたのは、上院は民主党が69%であったのに対し共和党は82%、下院では同じく63%と80%で、共和党議員の方が賛成票を入れた割合が多かったのです。65年の、黒人の投票権を守る投票権法も、上院では民主党75%、共和党94%、下院では民主党78%、共和党82%でしたので、賛成票の割合は共和党の方がかなり高かったのがわかります。公民権法や投票権法に関して言えば、民主党対共和党という対峙よりも、北部対南部という南北戦争の構図が根強く残っていました。

黒人問題を深刻化させた「貧困との闘い」

もう10年近く前のことですが、私が属しているCCIM(全米認定不動産投資顧問協会)のバイロン・スミス講師が、当時の米国経済について講演をしてくれたことがあり、私が通訳をしました。その中で、貧富の差が広まっていることに触れたのですが、彼が何も解決案を提案しませんでしたので、後で個人的に聞いたことがあります。彼は黒人の弁護士ですが、自分にも解決案はないと述べた後、貧困との闘いにふれ、民主党は良かれと思ってやったことだと思うが、これは政治の予期しない結果を生み、黒人問題はより深刻化したと述べたのです。

彼が何を言いたかったかは、聞くまでもありませんでした。政府から援助を受けることができるようになった黒人女性は、貧しい黒人男性と結婚して苦労するよりも、未婚の母になって子供をたくさん産んだ方が安定した生活が送れるようになり、黒人の赤ちゃんの72%は未婚の母に生まれてくるという結果になったのです。両親のいる家庭に生まれた子供も、後で離婚することはあるでしょうから、それも足すと、大多数の黒人は壊れた家庭環境で育っているのです。崩壊した家庭で育った子供が、社会で成功するのは困難です。

ジョンソン大統領はテキサス出身で、自身「ニガー」や「ニグロ」などの差別用語を頻繁に使ったそうです。これらの法律を通すことによって、「私は、ニガーが向こう200年民主党に投票するようにした」と発言するのを大統領専用機のCAが聞いたということが、1995年に出版されたロナルド・ケスラーのInside the White House(ホワイトハウスの内情)に書かれており、今となってはその真偽のほどを調べることはできませんが、彼なら言いそうなことだと考える人は多く、バイロンの「良かれと思ってした」という言葉は、ジョンソン大統領には適用されないかもしれません。

力を持ち始めた最高裁

60年代初頭には、他にも政治に大きな変化がありました。その一つは、公立学校におけるお祈りの禁止です。これを決めたのは、民主党でも共和党でもなく、最高裁でした。それまでの米国は、クリスチャンが圧倒的に多く、公立学校でお祈りをしたり聖書を勉強したりすることは、当たりまえのように行われていましたので、当時のクリスチャンがこれを脅威に感じたことは確かでしょう。私は、議会ではなく裁判でこのような問題に決着をつけることは、できれば避けるべきだと思うのですが、米国で宗教の多様化が進む中、公立学校でキリスト教のお祈りを禁止するということは、当然の成り行きではないかと思います。

もう一つの大変化は、人工中絶の合法化で、私が渡米する前年、1973年のことでしたが、これも最高裁で決められたことでした。去年、選挙直前に亡くなられたリベラルのアイコン、ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事ですら、この重要な法律を、民意を反映する議会ではなく、最高裁で決めたことには批判的でした。

モラル・マジョリティーの台頭

もともと福音派のクリスチャンは、政治に口を出すことはなく、福音派の代表的な存在であり、毎年最も尊敬する人ベスト3に入っていたバプテスト派のビリー・グラハム牧師は、何度か大統領選に出ることを勧められましたが、断り続け、また、福音派でしたが、2018年に亡くなるまで民主党として登録していました(米国では、通常どちらかの党に登録していないと予備選挙で投票できないので、ほとんどの人が登録する)。しかし、60-70年代頃から、福音派の間で、このままでは将来大変なことになるのではないかという不安が広まり始めたのです。

そこに登場したのがジェリー・ファウエル牧師率いるモラル・マジョリティー(道徳的多数派)でした。彼も、もとも政治に関わっていた人ではありませんが、米国の急激な世俗化を危惧して、政治運動を始めたわけです。福音派がビリー・グラハムのように布教活動に専念しないで、本来の活動から逸れてしまったのは、このころからだと思います。福音派がその教えに沿った政策の政党を支持するのは当然ですし、多くの福音派の信徒の中に政治家になる人がいるのも当然でしょう。しかし教会や教団を挙げて政治活動に関与するのはどうでしょうか。

保守的だった南部が共和党の地盤へと変貌したわけ

ちょっと時代は前後しますが、60年代末にもう一つ大きな変化が起きました。もともと米国は無干渉主義で、大西洋と太平洋で守られていると思っていたわけですが、真珠湾攻撃で一変しました。61年に就任した民主党のケネディー大統領は、共和党よりタカ派路線で当選しましたが、60年代後半、ベトナム戦争の泥沼化で、若者は徴兵制度を嫌い、民主党はハト派に移行したのです。

民主党のタカ派は居場所がなくなり、共和党に移りました。レーガン大統領がそのよい例で、彼はもともと民主党でしたが、彼の、「自分が民主党を去ったのではなく、民主党が私を置いてけぼりにした」という言葉は有名です。こうして生まれたのがネオコンです。当時、保守的で民主党の地盤だった南部は、共和党の地盤へと変貌して行くのです。

民主党支持から共和党支持に

ここでちょっと個人的なお話をしましょう。私は、90年代半ばの40歳ころまで、理想主義の民主党でした。政治を、経済、外交、社会問題の三つの分野に分けるとすると、確かに人工中絶などの社会問題に関しては革新的な民主党に賛同することはできませんでしたが、特に経済に関しては、「貧しい人の味方」の民主党を支持していたのです。

それが90年代の半ばに変わった理由は、ケーブルテレビです。アメリカ人にそう言うと、誰もが保守派のフォックスニュースの見過ぎだと思うでしょうが、そんなことはありませんでした。地上波のテレビ番組に、良い政治番組がないわけではありませんが、ニュース専門のケーブル・チャンネルは、いつでも時間のある時に見ることができます。革新派のCNN、MSNBC、また保守派のフォックスと、同じように見ていたのですが、それまでと比べて格段に政治に関する知識が増えたのです。

知識がますにつれ、政治に理想を求めていたことが間違いだと思い始めました。前述したバイロンの意見がそのよい例です。歳を取るにつれて、より現実的な共和党になる人は多いと思いますが、私もその一人でした。

民主党と共和党 二大政党のメリットとデメリット

ここで、民主党と共和党について、もう少し述べたいと思います。政策の多くは、右寄りか左寄りか、つまり保守的か革新的かという1次元上に表すことができると言っていいでしょう。二大政党制の良いところは、革新的になり過ぎれば保守派が選ばれ、保守的になり過ぎれば革新派が選ばれますので、いつもバランスが取れており、民意を反映しているということです。

しかし、欠点もあります。米国には、予備選挙があり、それによって両党の候補を決めますが、問題は、予備選挙で大統領が決まるわけではないので、投票率がかなり低いのです。つまり、予備選挙で投票する人には、政治熱心な人が多く、政治熱心な人には、両党とも両極端な意見の人が多いので、極端な意見の候補が選ばれやすいのです。

なぜ予備選挙で勝てても総選挙で勝てないのか

2016年と20年の大統領選を見ても、自称社会主義者であり、民主党員ではないサンダースが民主党の予備選挙であれほどの票を得たことは、皆さんよくご存知のことと思います。16年には、ウィキリークが民主党全国委員会のメールを漏らし、中立であると言いながら、裏ではクリントンが勝つように工作していたことが発覚して、委員長のデビー・ワッシャーマン・ショルツが辞任しました。左翼のサンダースは、予備選挙で勝てても、総選挙では勝てないと分かっているからです。

共和党は、トランプまでは非常に穏健な人が選ばれてきましたが、当選しませんでした。2008年のマッケインは、マスコミのダーリンと呼ばれ、かなり中道の人で、共和党に盾を突くことが多かったので、そのほとんどが民主党寄りである主要マスコミのお気に入りだったのです。もちろん、いったん共和党の大統領候補になると、味方はしてくれませんでした。

2012年はミット・ロムニーでしたが、彼もかなりの穏健派で、後にトランプ大統領を非難した数少ない議員の一人でした。穏健派で、保守派支持層の投票率が低かったことが一つの敗因だと言われていますが、逆にトランプは支持層の投票率が高くて当選したと言われています。

米国政治に強い影響力を持つ最高裁判事

世論調査によると、トランプに投票した人の最も大きな理由は、前述した最高裁です。学校の祈りや人工中絶だけでなく、最近では同性愛者の結婚が同じように最高裁で可決され、保守派の中には、4-8年しか任期のない大統領より、終身の最高裁判事の方が、米国政治に対して強い影響力を持っていると言う人さえいます。

保守派の判事は、憲法を文字通り解釈し、時代に沿わないと思うのであれば改正すれば良いという考えですが、革新派の判事は憲法を生きた文書と考え、時代の変化とともに、憲法の精神を解釈し、文字通りに解釈する必要はないと考えます。どちらが正しいか別として、革新派判事は憲法の時代に沿った解釈に基づいて判決を下すことにより、人工中絶や同性愛者の結婚などを、議会を通さないで決めることができるわけです。

バイデン・ルールの逆用と「ボーク」

保守派はそれを恐れ、何としてでも保守派の判事を増やしたいと思っていたのですが、 オバマ大統領の任期の最終年だった2016年2月、保守派の代表的な最高裁判事であったアントニン・スカリア氏が亡くなってしまいました。オバマ大統領は、後任に革新派のメリック・ガーランド氏を指名しましたが、11月の大統領選までまだ8か月以上あったにもかかわらず、上院多数派の院内総務ミッチ・マコネルは、大統領選で民意を問うべきと主張し、ガーランド氏承認の審理さえしなかったのです。

これは良くないと思うでしょうが、マコネルに言い分がないわけではありません。1992年6月、大統領選の5カ月前、ブッシュ(父)大統領の時ですが、こともあろうに当時上院議員だったジョー・バイデンが、もし最高裁に空席ができたら次期大統領が就任するまで後任を指名するべきではないと述べたのです。これはバイデン・ルールと呼ばれるようになりましたが、実際にそのような規則を民主党が採択したわけではありません。単なる彼の意見だったのですが、マコネルがそれを逆用したのです。

しかし、もっと大きな理由がありました。1987年、マコネルがまだ新米の上院議員だったころ、レーガン大統領がロバート・ボーク氏を最高裁判事に指名しました。彼は保守派の非常に優秀な判事でしたので、民主党は彼を恐れ、何としてでもそれを遮ろうとしたのです。これは、あまりにもあからさまで、ボークという彼の名前が、「上院の承認をやめさせる、就任を阻止する、執拗に中傷する」という意味の動詞として使われるようになったほどです。ガーランド氏の指名を阻止したのは、その報復だったのでしょう。

トランプ当選の一因ともなった最高裁判事候補者リスト

私は彼のしたことを認めはしませんが、結果的には同じことになっていたのではないかと思われます。前例を見ても、このような状況下で上院の多数派が大統領の党と異なる場合は、指名者が承認されないことが多く、ましてや今のように最高裁判事の重要性が強く意識されている時代に、ガーランド氏が承認されたかどうかは疑問です。

このような状況の中で、「最高裁で革新的な法律が成立」することを恐れた保守派、特に福音派は、何が何でもスカリア判事の後任に保守派が指名されることを望んでいたわけですが、トランプが最高裁判事候補者リストを選挙前に発表したことが、彼の当選に大きく役立ち、当選後そのリストの中から翌年ゴーサッチ氏が指名され、承認されたのです。

福音派はなぜトランプを支持したのか

トランプが大統領選に出ると言ったことは何度もありましたが、いつも失言で皆が呆れて相手にされなくなるということを、長年繰り返してきました。16年にそうならなかったのは、よほど国民が政治家に嫌気がさしていたからでしょう。結局予備選挙でのトランプの得票率は45%で、勝運を占う最初の3州は、それぞれ24%、35%、33%でした。もともと17人もが立候補し、実際に予備選挙が始まった時点でまだ12人も残っていたのですが、体制派の候補者が票を取り合っていなければ、トランプが選ばれなかった可能性はあったかもしれません。

共和党の体制派同様、福音派も、何とかトランプが代表になることを阻止しようとしていましたが、共和党候補になることが決まった後、福音派の著名なリーダーたちが彼と会見し、福音派の条件を呑んでもらって、彼を支持することを決めたそうです。民主党のヒラリーに政権を取られることは、どうしても避けたいということだったのでしょう。民主党という共通の「敵」を持つ福音派は、妥協し、トランプのベッド・フェロー(ベッドを共にする人という意味で、不倫相手を意味することもありますが、政治的同志という意味でも使われる)となり下がってしまったのです。

76年に福音派のカーター大統領が民主党候補として出馬したときは、彼に投票した福音派の人も多かったでしょう。しかし、もう時代は変わりました。多くの福音派は、キリスト者であるというアイデンティティーよりも、政治的保守派、あるいは共和党支持者としてのアイデンティティーの方が強くなってしまったと感じます。

まるで神がトランプを支持していると言わんばかりのSNSの投稿が多く、困ったものだと思っていたのですが、今になって、そうは思わない福音派もたくさんいるということを知らせるべきだったと反省しています。私のような穏健派は、政治的意見をSNSで発信することはあまりないので、目立たないと思いますが、自分の身の回りを見ても、熱狂的なトランプ支持者はそう多くはいません。私の教会に限ってみると、1割もいないでしょう。普通の人が、普通の意見をもっと述べていたら、少しはブレーキがかかったかもしれません。

トランプの本質を見抜けなかった責任

今回の国会襲撃事件で、トランプは一線を越えたと言う保守派は多く、福音派も同じですが、私の正直な意見を言わせていただくと、「今更そんなことを言っても遅い」と思います。彼を見て、こういうことになり得るということが分からなかったのでしょうか。私の教会の小中学生たちですら、トランプはおかしいと言っていますが、それも見抜けないような福音派指導者の責任は重いというのが、前述したドイツ人牧師の意見で、私も同感です。

80年代に多くの福音派のテレビ伝道者が流行り始め、私はその多くがペテン師だと思っていたのですが、その多くは脱税などのスキャンダルで失脚したのです。福音派の信徒さんのみならず、牧師たちが彼らを見抜けなかったのを不思議に思っていましたが、今回はその比ではありません。

体制派の政治家は巧妙な嘘をつく

私は、決してバイデンを信頼しているわけではなく、特に息子のハンター・バイデン疑惑がバイデンの弾劾につながる可能性はあると思っています。選挙前、主流メディアはこれをほとんど無視しましたが、選挙後、検事局がかなり前から取り調べをしていることを明らかにしました。

トランプは平気で嘘をつきますが、体制派の政治家は巧妙な嘘をつきます。どちらも悪いですが、大きな違いが一つあると思うのです。平気で嘘をつく人を支持すれば、もう真実はどうでもよいということになります。ヒラリーは、少なくともバレたら失脚すると考えていたので、ひた隠しにしたのです。バイデンも隠しているのかもしれませんが、彼らは、少なくとも真実の重みを理解しています。

トランプのロシア共謀説とバイデンの不正選挙疑惑

しかし、これが共和党だけの問題だと考えるのはどうでしょうか。ある調査によると、トランプに投票した人の78%、共和党の68%が、選挙の不正によってバイデンが勝ったと思っているようです。しかし、16年の選挙では、ほぼ同数の民主党が、トランプはロシアと共謀して勝ったと思っていました。実は、私もそうではないかと疑っていたのですが、調査が進むにつれて、裁判所から捜査の許可を得るために、FBIが文書捏造までしたことが発覚し、裏でヒラリーがそれに関与していた疑いが出てきました。

FBIの不正捜査に関する調査はいまだに続いていますが、現在は、民主党の方がそれを阻止しようとしています。いつ結果が公表されるのかはわかりませんが、民主党が暴かれるような結果が選挙前に発表されていたら、トランプが当選していたかもしれません。ロシア疑惑を徹底的に調査したように、不正選挙疑惑も徹底的に調査すれば、納得する人も少しはいるかもしれません。

将来同じような選挙疑惑問題や陰謀説が起きないようにするためにも、した方がいいと思うのですが、襲撃事件後、真夜中に行われた議会で、選挙不正を調査するべきだと主張した議員たちは、トランプの主張を信じた支持者たちがこんな事件を起こしたばかりでしたので、顰蹙を買ってしまいました。

政治の歴史はリベラル化の歴史

私は、政治の歴史と言うのは、リベラル化の歴史だと思います。今、共和党支持者が当たり前のように受け入れている政策の中には、以前とてつもなく革新的なアイデアだったものがいくつもありますが、それは当然だと思うのです。人間社会は時代とともに移り変わり、その中で新しい考え方や政策が生まれてくるのは当然のことです。

じゃあ、なぜおまえは共和党支持なのだと言われそうですが、一つの理由は、私自身がそうであったように、革新派は理想を追い過ぎる傾向があり、その危険性を理解していないということです。民主党には、黒人家族を破壊してしまったという自覚はないでしょう。

民主主義は時限爆弾だという言葉を聞いたことがあります。政治家は国民の支持を得ようとして、何かを与えます。いったん与えてしまったものを取り上げることは非常に困難です。そのようにして福利厚生が巨大化し、最後にはギリシャのように爆発(破産)してしまうというのです。私は革新的なこと=悪いこととは決して思っていないのですが、行き過ぎてしまうと取り返しのつかないことになりかねないので、慎重にやろうというのが私の意見です。

もう一つリベラル化について言えることは、それをどの程度進められるかはその国の国民の成熟度次第だということです。貧しい人を手厚くもてなしても、それを悪用する人がいなければ、問題はないのですが、現実的には、安い給料で働くより、生活保護を受ける方がいいという人はいるのです。いろいろな現実問題を真剣に受け止めないまま政治的理想を追っても、うまくはいかないでしょう。

最高裁判事の見習いたい言葉

最後に、最近亡くなられたお二人の最高裁判事に関するエピソードを一つご紹介します。前述したスカリア判事とギンズバーグ判事は、それぞれ保守派と革新派のアイコン的存在でしたが、非常に仲が良かったことで有名です。家族ぐるみでお付き合いをしていたそうですが、スカリア判事の告別式で、ギンズバーグ判事は次のように述べました。

「私たちは、こんなに考え方が違うのに、どうしてそんなに仲良くできるのかと聞かれることがよくありましたが、スカリア判事はこう言っていました。『私がアタックするのはアイデアであり、人ではない。非常に良い人が、非常に悪いアイデアを持つことはある。』」

参列者は、これを聞いて爆笑しましたが、私たちも、このお二人を見習いたいものです。