信用が失墜してしまったトランプの今
1月6日の議会襲撃事件後、多くの銀行や法人がトランプと距離を置くようになったそうです。トランプは、「私は負債の王様だ。…負債のことを私より良く知っている人はいない。私は負債で富を築いたのだ。」と言ったそうですが、レバレッジをかけて不動産投資をするのは当たり前のことです。90年代初頭、トランプは、レバレッジをかけた投資で大損しましたが、現在、同様の問題を抱えているようです。
借り換え出来る銀行がない
彼の資産はほとんど不動産に投資されており、COVID-19のおかげで大きな打撃を受けています。負債は$10億以上。その多くは支払期日が近づいています。この場合、支払とは毎月の支払いのことではなく、いわゆるバルーンのこと。ローン期間が割賦償却期間より短いため、例えば毎月の支払いが30年ローンで計算されていても、5年後とか10年後に最終残高の一括払いがあるのです。ということは、ローンの借り換えが必要になるのですが、国会襲撃事件のおかげで、貸してくれそうな銀行がないとのこと。
COVID-19が不動産に与えた深刻な影響
ホテルやゴルフコースなど、彼の資産は$20億以上と言われていますが、その60%はサンフランシスコとニューヨークの5棟のビルに投資されています。ニューヨークにある4棟は、トランプタワーとその隣にあるナイキタウンですが、ナイキは立ち退いてしまいました。6番街とウォール街の高層ビルは、オフィスビルで、現在稼働率は過去最低。これらのビルの価値は下がっているはずで、ローン残高より低いかも。他にも同じようなビルをたくさん所有しています。
トランプに融資する銀行はあるのか
ということは差し押さえられるのでしょうか。それは最終残高一括払いがいつ来るのか、銀行がどれだけ厳しく対処するか、トランプが他の物件を売ることができるか、あるいはほかの銀行から融資を受けることができるかどうかにかかっています。しかし、銀行間での彼の評判は最悪。彼のカジノが破産したときに取った彼の行動を見て、彼に融資する銀行はないだろうとのこと。
付き合いの長いドイツ銀行も、娘のイヴァンカがかつて理事を務めていたシグニチャーなど、取引のあった他の3行も、彼と縁を切りました。これらの銀行は、融資するどころか、彼の口座を閉じたのです。つまり、銀行は評判を気にしますので、トランプのお金は預かりたくもないということ。
スコットランドの不動産も不調
スコットランドのホテルと有名ゴルフコースはどうでしょうか。これらの資産は国外からのローンはないそうですが、全然儲かっておらず、税金も1銭も払ってないとか。損失は、5500万ポンド、日本円で80億円近い額です。ホテルは、年間の結婚式が数件だそうです。
トランプの資金はどうなっているのか
というわけで、スコットランドでは、彼の資金繰りはどうなっているのかという話題で持ちきり。ロシア、アゼルバイジャン、グルジアなど、資金洗浄をしている人物から来ているのではないかという噂です。トランプがそのお金の出どころを開示できなければ、差し押さえもあり得るとのこと。未公開株式投資会社やヘッジファンドは、トランプがこれらの不動産を安く売らざるを得なくなるのを、手ぐすね引いて待っているそうです。
トランプは、選挙をひっくり返すための資金として、支持者から何億ドルものお金を集めたのですが、そのために使ったお金はごく一部だったので、不動産ローンの返済に充てるのではないかという噂もありましたが、政治以外のためにそのお金を使うことは違法です。
税金問題と破産宣告
もう一つの問題は税金。申告では資産を少なめに評価し、ローンを借りるときには大目にしていたことが、深刻な問題になり得るとか。これは脱税にもなり得るそうですが、そこまで行かなかったとしても、$1億ほどの追加課税。
では、破産宣告はできるのでしょうか。トランプの資産は、全体的に見ると破綻はしておらず、現金もある程度はあるそうですが、問題は彼が素直にそれを払うかということです。トランプの息子エリックは、ニューヨークタイムズに、会社は安定しており、キャッシュフローも安定しているし、相対的に見ると負債も少ないと述べていますが、去年の収入は35%も減っています。
勧告されても不動産事業を続けたトランプ
ということは、融資してくれる銀行がなければ、トランプ帝国は大幅に縮小するということ。彼は、大統領になることと、不動産事業を続けることに、利益相反があり得るので、会社をいったん清算することを勧告されていたのですが、ちゃんとそうして株にでも投資していれば、何億ドルも儲けていたでしょう。トランプが就任してから、株は80%も値上がりしています。
ちなみに私は、もちろん誰かに勧告されたわけではありませんでしたが、私にとっては大金を去年3月に株に投資をして、1年足らずで70%の値上がりでした。それでも不動産投資をやめられない理由は、レバレッジと安定性と節税ですが、その話はまた別の機会に。
*今回の記事はPBSのニュースを引用・参考にしています。
参考 Trump leaves office facing mounting debt, devalued assets and scarcity of willing lendersPBS