もう10年ほど前のことでしょうか。日本の大手不動産管理会社の方が、カナダのバンクーバーに見学に行かれたのを通訳したことがあるのですが、カナダの木材を使って十数階の木造ビルを建築することができると聞いたことがありました。その後、あまり耳にすることはなかったのですが、日本でも最近話題になっていますし、米国でも、ミルウォーキーで現在25階建ての木造ビル建築工事が進められていますので、それについて解説したいと思います。
参考 Ascent - New Land Enterprises米国で最も高い木造高層ビルとは
このアセントと呼ばれる建物は、来年7月竣工予定ですが、米国で最も高い木造ビルになる予定です。高級住宅地に建造中のこのビルは、高級アパートです。日本ではアパートと言うと木造で、鉄筋コンクリートの場合はマンションと呼びますが、これは全くの和製英語で、米国ではすべてアパートです。マンションとは大邸宅と言う意味です。下6階の駐車場、プール、エレベーター・シャフト、階段、基礎は鉄筋コンクリートですが、それ以外は木造です。
現在、米国には、建築中のものを含めると576棟の木造ビルがあるそうですが、現在のところ、木造ビルで最も高いのはノルウェーの18階建てで、米国では10階建てほどです。この規模の木造建築は、米国では前例がなく、建築許可、耐火性、設計など、どれを取っても初めてのことばかりだと、発案したニュー・ランド・エンタープライズのティム・ゴーマン氏は述べています。アセントの設計をしたジェイソン・コーブ氏は、当初木造高層ビルに関する知識は今の5％くらいしかなく、2年間大学院に行って勉強したそうです。
木造高層ビルの特徴
建材は、Massive timberの短縮形で、巨大な材木と言う意味のマスティンバーを使いますが、巨大なベニア板のように縦横交差して糊付けしてあります。しかし、鉄筋コンクリートほどの強度はなく、柱の少ない広い部屋を作ることは困難で、エンパイアステートビルのような超高層ビルは、現在の技術ではまだ無理だということです。
地球温暖化防止にも役立つそうです。鉄とコンクリートの製造は、世界の二酸化炭素排出の15％ほどにあたるそうですが、樹木は逆に二酸化炭素を木の中に閉じ込めてしまいます。しかし、伐採し過ぎると温暖化につながりますので、環境団体は、木造高層ビルが増えることに関して懸念を抱いているそうです。というわけで、アセントでは、持続可能な管理がなされているヨーロッパのシロトウヒの木を輸入したそうです。
常識的に見て、最も心配されるのが火災です。9本の木柱を摂氏1100度の加熱炉で3時間燃やす実験をしたところ、焦げましたが燃えないことが分かりました。焦げた部分が中身を守るのです。そのため、柱は数インチ太めにしています。
木造高層ビルの建築について
建築現場での作業は、鉄筋コンクリートとはかなり異なります。従来の工事では、鉄筋やコンクリートに配管配線用の穴を現場で開けなければならないのですが、マスティンバーの場合は、あらかじめ穴を開けたものを組み立てるだけです。ねじの場所さえあらかじめ全部設計しておくことが必要で、許される誤差は3ミリだそうです。全く同じ柱、梁、パネルは二つとないので、どこにどれを設置するかを間違えないようにすることが重要です。
工期は通常のビルより4か月ほど短縮され、労働力は約4分の3、しかも作業は鉄筋コンクリートよりかなり楽だそうです。ある作業員は、作業服がコンクリートまみれになってないので、本当に仕事に行っているのか奥さんに疑われたそうです。
工期と労働力が減る代わりに、マスティンバー自体は、ウッドショックの影響もあり、鉄筋コンクリートより10％高いそうです。しかし、供給が増えるにつれて、それも下がるとのこと。この夏、カナダのストラクチュリアム社が、アーカンソー州のウォルマート本社の近くにマスティンバーの工場を建てましたが、ウォルマートも、22万平米の新しい本社ビルをマスティンバーで建てる予定だそうです。
木造高層ビル、賃貸の申込み状況は
ゴークマン氏には、木造高層ビルに関する多くの問い合わせが寄せられており、近い将来、米国は木造ビルのリーダーになるだろうと予想しています。通常なら、竣工の半年以上も前から賃貸の予約が入ることはありませんが、既に10%のユニットが契約済みだそうです。
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今日は、米国で建築中の25階建て木造ビルについて解説しました。またこの動画が良かったと思ったら、グッドボタンを押して頂ければ励みになります。このチャンネルではハワイの物件情報や、アメリカ・ハワイの不動産マーケットの情報をお届けしています。アメリカの不動産に興味のある方、ハワイで不動産を持ちたい方は是非チャンネル登録をお願いします。
