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アフォーダブル(お手頃)住宅政策がハワイの住宅供給に与えた影響 ーハワイ・ビジネス・マガジン(2022年1月25日)

今日は、ハワイ・ビジネス・マガジンの複数の記事を基に、州や市の住宅政策で、何がうまく行っているか、いないか、より良い方法はないか、異なる観点から解説します。今までにも、ハワイの住宅難に関するいくつもの問題にブログで触れたことがありましたが、今日は、より総合的にまとめたいと思います。

住宅難解消のための建築規制:アフォーダブル物件とは

マウイ島では、アフォーダブル物件不足解決のために作られた条例のお陰で、2006~2014年に建てられたアフォーダブル物件は3戸でした。中間所得層対象の建築規制と呼ばれ、開発業者は、建売であろうと賃貸であろうと、開発戸数の5割を「アフォーダブル物件」にしなければならないというものでした。その後、諸要件が緩和されてからは、460戸建設され、現在建築中計画中のものは、701戸あります。

「お手頃」とは、色々な定義がありますが、HUD(住宅都市開発庁)によると、ローンや家賃の支払いが、月収の30%以内です。ハワイ改定法201Hによると、収入中央値140%以下の世帯が買える、あるいは借りることのできる物件です。具体的な額は、地域によって異なり、$99,000~$169,000になります。

規制が逆に住宅価格を高くしている

開発業者は、アフォーダブル物件を安く売らなければなりませんので、損する分を、市場価格の物件に上乗せしなければなりません。彼らに言わせると、この政策は逆効果だというわけです。例えば、90平米のコンドを100戸開発し、1戸当たり$45万かかるとします。その3割にあたる30戸を、$30万で売らなければならないとすると、$15万×30戸=$450万の損が発生します。と言うことは、$450万÷70戸=$64,000を市場価格のコンドに上乗せしなければなりません。

TZエコノミックスのポール・ブルーベイカー氏によると、ハワイの出生率が減り、人口が減っていなければ、住宅難はもっと深刻になっていただろうと述べています。氏によると、住宅供給が減った理由は、このような規制だというのです。

中間所得層対象の建築規制は、1960年代にメインランドで始まり、ハワイでは1980年代に取り入れられました。ハワイ大学でアフォーダブル物件について教えているフィリップ・ガーボデン教授によると、2000年ころから急増したようです。今では800以上の市で取り入れられています(土地政策リンカーン協会)。

中間所得層対象の建築規制:オアフ住宅市場への影響(ハワイ大学経済研究組織)

少々古いですが、2010年のハワイ大学経済研究組織の報告によると、中間所得層対象の建築規制は、オアフ島だけでなく、全国的に住宅価格を吊り上げ、供給を減らしています。

カウアイ島では、開発する住宅の3割がアフォーダブル物件でなければいけないという条例を出しました。2007~2020にかけて、この条例に沿って建てられたアフォーダブル物件はゼロです。条例が適用されるのは10戸以上の開発ですので、住宅が1戸も建てられなかったというわけではありません。実際に建てられたアフォーダブル物件の戸数は、2011年以降に限っても、約500戸あります。それらの多くは、カウアイ郡と民間のパートナーシップによって可能となりました。

マウイ島でも、収入中央値60%以下の貧困層向けの28戸入りアパートが建築されました。元々、コンドが計画されていたのですが、50%がアフォーダブル物件という要件を満たしたのでは採算が合わず、$940万の連邦低所得者住宅税額控除を使って建てたのです。開発したのは、カリフォルニア州とハワイで開発をしているEAH(合同キリスト教住宅協会Ecumenical Association for Housing)と言う非営利団体です。

開発業者は規制よりインセンティブを好む

どの開発業者も、規制よりインセンティブを好みます。税額控除は国のものですが、州や市としてできることには、密度の増加、自治体に支払う料金の免除、建築許可の簡素化などがあります。そのよい例が2006年に制定された201H法で、所得が中央値140%以下でも買えるアフォーダブル物件が、この法律を利用して年に約千戸建てられています。ハワイ州米国上院議員ブライアン・シャッツ氏の奥さんで、シャッツ協力会会長であるリンダさんは、以下のように述べています。

「201Hは、私たちが持っているツールの中で最も強力なものです。悪い言葉を使いますが、これは実に規制を撤廃してくれるのです。文字通り住宅規制を解除してくれて、住宅建築を合法化してくれるのです。」

なぜ規制を撤廃することが悪い言葉なのかは、政治的背景を説明しなければ分からないでしょう。ハワイは、米国でも有数の民主党基盤です。人口が少ないので、あまり国政に影響力はなく、カリフォルニアのように強いイデオロギーを持っているわけではないので、あまり目立ちません。民主党は、何事にも政府がより大きな役割を果たすべきだと考えますので、規制を増やします。つまり、これは州住民の大多数が民主党支持であることを考慮した上での発言なのです。

EAHが開発できるのも、201Hによる、高さ制限、セットバック、駐車場要件、固定資産税などの緩和があるお陰です。

カカアコの開発は、EAHが開発する低所得者向けのものとは違い、その多くが高級コンドです。しかし、再開発で建てられた12,600戸の中の4,200戸はアフォーダブル物件で、その中の1,400戸がお手頃賃貸物件です。ハワイ・コミュニティー開発局のディーパック・ネウパネ事務局長は、インセンティブを増やして、より多くのアフォーダブル物件が開発できるようにしたいと述べています。

(ハワイ・ビジネス・ニュース、2015年5月15日)

201Hを利用して開発する場合、50%以上がアフォーダブル物件でなければなりません。ところが、マウイ島のマイク・モリナ市議会議員は、2020年、75%以上にするという法案を出し、可決されましたが、市長が拒否権を行使しました。拒否されていなければ、また開発が止まったかもしれません。世の中、政治家の思い通りにはなりません。

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アフォーダブル(お手頃)住宅政策がハワイの住宅供給に与えた影響
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