今日は、CBREの5月の報告書から、エネルギー・コストがハワイの事業用不動産に与えている影響について解説します。
2月のロシアのウクライナ侵攻に伴う制裁で、ロシアからの石油輸入が止まり、米国のエネルギー価格が上昇していますが、特にハワイに大きな影響を与えています。レポートによると、ハワイの石油の約3分の1はロシアから輸入されており、ハワイのエネルギーの80%は石油に頼っているのです。
ハワイ唯一の石油精製工場を所有しているパー・パシフィック・ホールディングスが、、3月にロシア原油の購入を停止してから、ハワイのガソリンとディーゼルの価格は最高値を更新しました。レポートによると、
「米国エネルギー情報局の報告によると、ハワイは、発電の60%が石油輸入に頼っており、電気代は米国最高で、平均の3倍近い価格です。ロシアがウクライナを侵攻したことを受けて、ハワイ電力は、電気代が10～20%上がると消費者に警告しています。ジョーンズ法の規制があるため、米国の石油生産量が増えても、メインランドからの輸送費が高すぎて、ハワイの救済にはならないでしょう。」
ジョーンズ法とは、米国内の地点間の物品の輸送を行う船舶は米国船籍で、1）米国人配乗、2）米国人所有、3）米国建造でなければならない、という法律です。これと似た法律は、日本を含めた諸外国にありますが、国内建造でなければならないというのは異例です。
ハワイ州エネルギー課のデータによると、ハワイのガソリン代と電気代は、原油価格と正比例しており、輸送費と設備費用に影響があります。CBREキャピタル・マーケット・インスティテューショナル・グループのマット・ビティック上級副社長によると、
「エネルギー・コストの上昇は、事業用不動産全体に影響を与えます。ハワイ住民はエネルギーのコストの高さには慣れていますので、適用できると思います。地上、海上、空輸の流通コストの上昇は、消費者に転嫁されています。流通サプライ・チェーンの簡素化は、効率を上げます。投資家や開発業者は、ホノルル港やカラエロア港に近い場所にフォーカスして、新しい戦略を導入し、エンドユーザーの需要を満たし、全体的に運営費を下げるでしょう。」
それでは、エネルギーのコスト上昇がハワイの事業用不動産の各セクターにどのような影響を与えるか、見てみましょう。
工業系
輸送費は、通常会社の流通費用の45～70％を占めています。これを下げるため、倉庫や流通の面積を増やして、在庫を増やす会社もあります。
レポートによると、石油価格と州の工業系の吸収は正比例しています。吸収とは、一定期間中に空室になる面積と稼働する面積を差し引きしたもので、正味吸収が正であれば、稼働している面積が増えたことを意味します。
「州の工業系の吸収は、去年の464、561平方フィート（43、159平米）を、2022年の第3四半期に越えると予想されており、在庫さえあればもっと増えるでしょう。しかし、空いているハワイの工業系スペースは200万平方フィート余り（約20万平米）で、その中にはかなりの改装を要するものもあります。」
「また、流通費の25%は設備費で、電気代の高いハワイでは、工業系スペースを増やしても、あまり効果はないでしょう。」
店舗
報告によると、ハワイの店舗系市場は、リーマンショックからの回復同様、2021年第3四半期から回復し続けています。2010～2015年のエネルギー価格の上昇は、店舗系市場に悪影響を与えることはなく、この期間の毎月の総家賃は、平方フィート当たり$3。94から$7。46に上昇しました。
「エネルギー・コストは記録的上昇が続いていますが、消費者は、オンラインだけでなく、店舗にも戻ってきて、少なくとも向こう1年、店舗系は上昇傾向にあります。需要とエネルギー価格でまた総家賃が上がり、長期間、高止まりするかもしれません。」
オフィス
しかし、エネルギー・コストの上昇は、パンデミック後のオフィスの回復には悪影響があるかもしれません。ハワイ州のオフィスセクターは雇用が増えていますが、CBREによると、オフィスの回復を湿らせる要素が二つあります。
「一つは、ハワイのガソリン代が高いので、従業員はオフィスに通勤するのを嫌がり、テレワーク、あるいはハイブリッドを好むでしょう。また、オフィス面積の縮小と、従業員のテレワークで、必要な駐車スペースが減り、従業員に駐車場をシェアさせるテナントも出てくるでしょう。二つ目は電気代の高騰で、特に大きな事業所は、運営に必要な面積のみをリースし、省エネを図るでしょう。」
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