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お手頃物件が増えると州民が健康になる

 「風が吹くと桶屋が儲かる」式の論理だと思うかもしれません。しかし、ハワイでは、医者が住宅の処方箋を出せるようにしようと言う法案さえありました。と言っても、何のことか分からない方がほとんどだと思います。

 2022年11月の中間選挙でハワイ州知事に選ばれたジョシュ・グリーン知事は、ハワイで最も評判の良いクイーンズ病院の救急医です。ホームレスは、行きつけの医者などいませんので、何かあるたびに救急病院を使うのです。彼らの病気の多くは、ちゃんと家に住んでいれば発症しない病気、あるいは治る病気です。米国は入院期間が短いので、完治しないまま退院し、路上生活に戻って、またすぐに悪くなって救急病院に行きます。

 これを繰り返して、年間日本円で1億円以上の医療費を使うホームレスもいます。米国の法律では、治療を拒否することはできないのです。私が以前住んでいた6LDKの家は、退院するホームレスが完治するまで面倒を見てくれるシェルターに貸しました。家賃を払っているのは病院ですが、年間数億円の医療費を節約できるようになったそうです。

 つまり、入退院を繰り返すより、住む家を与えたほうが安くつくと言うのが、この法案の意図だったのです。グリーン氏も賛同していましたが、健康保険は連邦政府も関わっていますので、州法で勝手に変えられることではなく、実現しませんでした。ホームレス問題がそれほど深刻ではない州では、健康保険で家賃を払うなどと言う法案は正気の沙汰ではありません。

 ホームレスぎりぎりの生活をしている人は多いです。題にある「お手頃物件」の定義は、家賃あるいはローンの支払いが収入の30%以下で住める物件です。しかし、ハワイのほとんどの住民にとっては、衣食住の「住」が占める部分が最も大きいのです。住民の18%は収入の半分以上を「住」に使っています。

 ハワイでアパートを借りようと思えば、時給$40くらいは必要だと言われています。年収$8万で、その30%は$24,000。12で割ると月$2,000と言う計算です。ちなみに、私が住んでいる2LDKは、90平米ほどのごく平均的な分譲マンションですが、貸すとすると$2,500くらいです。息子が最近引っ越した分譲マンションは70平米ほどの2LDKで$2,400。その前に住んでいた1LDKは$1,700でした。

 実際には年収$8万未満の世帯は多く、契約した後で家族親戚も一緒に住むようになったのが大家さんにばれてしまって、退去させられるということもよくあるようです。このようにしてホームレスは増え、健康が損なわれると言うわけです。米国のホームレスの平均寿命は52.6歳。全体では78.6歳です。

 

看護師不足

 住宅難が州民の健康を脅かす理由は他にもあります。看護師不足です。パンデミック以前から、医療従事者の求人は2,200もあり、言い換えると医療従事者が2,200人足りないということです。これは、全体の10%にあたりますが、パンデミック後の2022年は17%に増えました。

 ハワイの正看護師の平均年収は$106,000で、カリフォルニアの$121,000に次いで全国で2番目です。しかし、物価を計算に入れると全国で最低です。物価で最も大きな部分を占めるのが住宅。看護師に限らず、教師や警官など、多くの人たちがもっと楽な生活を求めてメインランドに移住します。私の息子も、高校の教師ですが、最近まで真剣に移住を検討していました。

カイザー・パーマネンテ

 カイザー・パーマネンテは、米国の大きな医療グループで、ハワイにも病院やクリニックがあります。カイザーには、$4億の基金があり、お手頃物件の開発にローンを出しています。最近では、カリフォルニア州オークランドの42戸物件に$520万出したばかりで、ロサンジェルスでもホームレス支援を提供する1,800戸のアパートに$5,000万出す決定をしたところです。

 これらはローンですので、返済されればまた次のプロジェクトに融資することができます。寄付だと、次のプロジェクトを支援するためにはまた寄付を募らなければなりませんが、ローンですので持続可能です。このような慈善活動をしている組織はたくさんありますが、それだけでは追い付かないと言うのが現状です。

 ロサンジェルスは、ホームレスが爆発的に増えており、大きな社会問題になっています。その対策が非常にうまく行っておらず、1戸1億円近い大金を使ってホームレス用の住居を建てていますが、そんなことをしていたのでは、焼け石に水。数年前まで、人口当たりのホームレスの数はハワイ州が全国一だったのですが、カリフォルニアに抜かれてしまいました。カイザーの基金は称賛に値しますが、何かもっと根本的な解決方法が必要だと感じます。

モジュラーハウス

 モジュラーハウスは、工場で家をいくつかの部分に分けて作り、現場に持って行って組み立てると言うものです。従来の工法で家を建てる場合、毎日仕事の準備をして、終わったら後片付けをしなければなりませんが、工場で作るのであれば、その必要はありません。また、雨が降っても仕事はできます。現場で基礎工事が終わるまで待ってから家を建てる必要がないので、工期がずいぶん短くなり、建材の無駄も省けます。技術の発達で、高層ビルもモジュラー建設することが可能です。

 ホノルル市は、市の西部にモジュラーハウスの低所得者受け住宅を開発しました。ハワイにはモジュラーハウスの工場がないので、カナダからわざわざ輸入したのですが、それでも従来の建築様式よりは安くできたそうです。

 ハワイの住宅難の最大の理由は規制だと言うことを何度もブログで書きましたが、政治が変わるのをいつまでも待っているわけにはいきません。誰かハワイにモジュラー工場を作りませんか。私のもう一人の息子はホームレス・シェルターのクリニックで働いていますが、グリーン知事と面識があります。話を持って行けば、何かインセンチブを出してくれると思うのですが、どうでしょう。

 副知事は、州の土地を開放してでも、何万戸もの住宅を建てなければならないと言っていますが、どうやってそんなに建てるつもりなんでしょう。3Dプリンター工法は、まだまだ進んでおらず、複数階の大きな建物が建てられません。その点モジュラーはいいと思うんですけどね。

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