ホノルル・ボード・オブ・リアルターズは毎月住宅統計を発表していますが、これと言ったニュースが毎月あるわけではありません。2022年の前半は、記録更新を続けましたので、毎月のようにご紹介していました。最後に統計に関するブログを書いたのは7月で、久しぶりに記録が出なかったと言う「記録」を報告した次第です。
しかし、12月の統計は、毎年紹介するようにしています。年末ですので、年累計の統計も出るからです。しかし、今回はそれだけが理由ではありません。戸建ての中央値が、2021年12月の中央値を下回りました。2022年の前半は上がり続けていましたので、その上昇分以上に下がったと言うことになります。それでは、いつものように、詳しく見ていきましょう。
戸建ての売買戸数は前年比で46.6%減の202戸、コンドは39.3%減の360戸でしたが、これは減ったと言うより、2021年12月はまだ飛ぶように売れていたと言うことです。中央値は戸建てが0.05%減の$1,049,500、コンドは3.6%増の$502,500でした。売れ行きが悪くなったのは、成約までの日数を見ても分かります。戸建ては25日で、前年比で127.3%増。コンドは21日で、61.5%増でした。
下がったのは売買戸数と中央値だけではありません。売出価格の何%で売れたかを見ると、戸建ては21年12月が102.1%で、売出価格より高く売れていましたが、22年は96.7%まで急降下しました。グラフを見ても分かるように、これはパンデミック以前よりも低い水準です。コンドは、100%から98.5%に下がりました。
年累積
それでは、1年間のトレンドを振り返ってみましょう。戸建ての中央値は、5月に記録を更新して$1,153,500、コンドは6月に更新して$534,000でした。ところが、10月末には住宅ローンの金利が平均7%まで上がり、少し下がりはしましたが、年末は6%台の中ほどです。第2四半期は、戸建ての63%、コンドの44%が、売出価格より高く売れました。第4四半期は、それぞれ29%と25%です。
2022年1年間の売買戸数は3,474戸で、前年比で23.2%減。年累計の中央値は$1,105,000で、21年の年間中央値は$990,000でした。12月は前年比で下がっているのに、年累計だとなぜ12%も上がるのでしょう。これには二つ理由があると思います。
一つは、12月はもともと比較的売買件数が少ないのですが、22年は特に少ない、と言うより前半が多かったので、年累計の統計に占める12月の割合が低いと言うことです。年累計で3,474件売れましたが、12月は202件で、全体の5.8%にすぎません。
もう一つは、以下の図で表すことができると思います。
これは、過去2年間の中央値の推移を、分かりやすく直線で表したものです。21年から22年の前半にかけて、中央値は順調に上がり続けましたが、22年の半ばから下がり始め、12月は21年12月の中央値をわずかに下回りました。しかし、年累計でみると、22年の中央値が21年のそれに比べて、まだかなり高いことがお解かりでしょう。
家の中央値などの推移をリアルタイムで見る時は、年累計や前年比ではよくわからないことが多いです。インフレもそのよい例です。最近、米国の消費者物価指数(CPI)が前年比で6.5%しか上がらなかったと言う「良いニュース」がありました。6.5%も上がったのに、何が良いニュースなのかと思われる方も多いと思います。しかし、過去6カ月のCPIは1.8%の上昇、3か月だと0です。直近のトレンドを判断するために必要なのは、前年比ではありません。
コンドの売買件数は年累計6,353戸でした。21年に比べて11.8%下がりましたが、パンデミック以前でこれほど売れた年と言うと、リーマンショック直前の2007年までさかのぼらなければなりません。パンデミックで戸建てがよく売れるようになりましたが、人混みの多いコンドは売れませんでした。しかし、コロナへの恐怖が収まり、戸建てが高くなってコンドしか買えない人が増えたのが、まだよく売れている原因だと思われます。22年の中央値は$510,000で、21年と比べて7.4%の上昇です。
価格帯別にみると、戸建ては$130~160万が11%増えたのに反して、$60~90万が47%も減りました。価格急騰で、この価格帯の戸建てがないと言うことです。コンドも$70万未満が19%減少したのに反し、$70万以上は15%の増加です。
売買件数は、戸建てもコンドも、ほぼすべての地域で減りましたが、カネオヘとダイヤモンドヘッドが比較的減り方が多く、それぞれ34.4%と31.1%減でした。コンドは、ノースショアだけ17.2%増えましたが、ノースショアはコンドの数が少ないので、あまり参考になる数字ではありません。
まとめ
日本在住の日本人が購入する場合、米国の金利は関係ありませんので、有利かもしれません。しかし、米国の金利が高くなると、円が安くなり、その点は不利です。米国の金利が下がると予想されていますが、同時に日本が本格的に金融引き締めを始めれば、円も上がるかもしれません。
米国に住んでおり、ローンで購入される方の場合、自宅や別荘に関しては、ローンが出るのであれば、金利は気にしないで借りて、下がったときに借り換えればよいと思います。日本で変動金利のローンを借りるのと同じように考えればいいでしょう。
ただし、投資の場合、今のハワイでは、よほどLTV(ローン資産価値比率)が低くない限り、つまり頭金が多くない限り、キャッシュフローは赤字になると思います。赤字の投資は勧められませんし、実際、ほとんど売れなくなりました。
私は、2~4戸の小規模投資物件のデータベースを作っており、毎週更新していますが、12月は、1戸も成約しなかったと言う週がありました。このデータベースを作り始めてからもう数年たちますが、こんなことは初めてです。
長期的には、米国、特にハワイの住宅難は慢性的で、緩和されるとしても、何十年もかかると思いますので、長期的キャピタルゲインを見込むことは問題ないと思います。小規模な投資物件でも、キャッシュで購入される場合は、キャッシュオンキャッシュ収益率(キャッシュフロー÷自己資本)は低くても、リスクは低いと思われます。
このブログを動画でチェック