2月6日、民主党のブレントン・アヴァ州上院議員が、外国人がハワイの物件を買えなくする法案を提出しました。今日は、KHON、KITV4、ハワイ・ニュース・ナウなどで放送されたニュースをもとに、この法案を解説します。
アヴァ氏によると、フロリダ州でも、中国人が住宅や土地を購入することを禁じる法案が通ったそうですが、裁判になっています。ほかにも、20以上の州で外国人が不動産を購入することを制限する法律がありますが、それらは、米軍基地周辺や農地などです。中国人が米国で多くの農地を購入するようになり、食糧安全保障問題になりかねないということで、制限されるようになりました。
この法案に関する公聴会では、対面や文章で2,000もの証言がありました。その一人がハワイ州法務長官で、この法案には反対です。法務長官の意見では、このような法案は違憲であり、どうせ裁判になって、弁護士料や賠償にお金を無駄遣いするだけだというのです。米国連邦政府の公正住宅法は、国籍や出身地を理由に差別することを禁じています。そのため、この法案が通る可能性は低いと言われています。
これに対し、ハワイ大学法学部のアンドレア・フリーマン教授は、連邦国会でこのような制限を認める法律を作ってもらったほうが、裁判で覆される可能性が低いと述べています。
ハワイの国会議員は全員民主党ですし、民主党のほうが規制を好みますので、このような法案を提出するのは民主党になると思います。しかし、数少ないハワイの共和党州議会議員の一人、ダイアモンド・ガーシア議員も、この法案には賛成で、多くの州民が支持していることが伺えます。
また、有名な開発業者のピーター・サヴィオ氏も法案に賛成です。開発業者にとって、この法案は不利になるはずですが、氏は、違憲かどうかなんてどうでもいいと述べています。外部からの需要で不動産がこれだけ高騰しているのだから、州民のために何とかしないといけないというのです。
法案の詳細は、現時点ではまだわかりませんが、これは、個人だけではなく、法人にも適用されます。法人自体が米国の法人であっても、その所有者が外国人であれば、購入できないということではないかと思われます。そうでなければ意味がありません。
ハワイでバケレンその他の投資物件を購入なさる方は、賠償責任を制限するために、ハワイで有限責任会社(LLC)を作り、LLCが物件を所有しているという方が多いと思います。私のクライアントの中にも、物件を売るのではなく、会社ごと売る方がいらっしゃいますが、それもできなくなるのかどうかはわかりません。
もうすでに不動産を所有している外国人は得だと思うかもしれませんが、果たしてどうでしょうか。この法案は、不動産価格を下げることが目的です。別荘として購入したもので、投資目的でない場合でも、所有している物件の価値が下がるのを喜ぶ人はいないでしょう。
ハワイの一般的な住宅は、メインランドの約2.5倍もの値段です。私も一ハワイ住民として、不動産価格が一般市民の手の届くレベルに下がることを願っていますが、この法案には疑問を感じます。ハワイの住宅不足は、外国人による購入だけが原因ではなく、ハワイの住宅規制が最も大きな原因ではないかと言われています。規制に規制を重ねるのは、社会をゆがめる結果になるのではないかと懸念します。
ハワイの不動産を最も多く購入しているのは日本人で、23年1~9月の統計によると、総額$1億3720万です。それに続いてカナダが$1620万、韓国$880万、台湾$170万、オーストラリア$150万です。しかし、これらは米国で有限責任会社などを作ってその名義で購入されたものは含まれていません。
法案を出したアヴァ氏本人が言うように、ハワイ州以外の購入者のほとんどは、外国人ではなく、メインランドのバイヤーです。その中で最も多いのがカリフォルニア州で、総額$5億6540万です。それにワシントン州の$9300万、フロリダ州の$6380万、テキサス州の$5510万と続き、外国人バイヤーを締め出しても、大した効果は望めないのではないかと思われます。
この法案は通らないとは思いますが、ひょっとしたらひょっとするかもしれないと思わせる情報があれば、またお知らせします。
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