ハワイ・オアフ島の不動産オーナーさんにとって重要な、短期賃貸(バケーションレンタル、バケレン)に関するルールの変更は、非常に複雑で分かりにくいですよね。
特に、2025年9月から施行される予定の新しいルールでは、住居地域での最短賃貸期間が30日から90日に変更され、影響が出そうです。なぜこんなことになったのか、時系列で見ていきましょう。
【問題の始まり:15年以上前】
- 理由: 15年以上前から、住居地域でAirbnbやVRBOのような短期レンタルが増え始めました。元々、リゾート地域や一部の特別な許可が下りた物件は1泊からのバケレンが認められていましたし、今も認められていますが、違法なものが増えたのです。これにより、その地域に住む住民にとっては「住宅がバケレンに使われて住宅難がより深刻になる」「騒がしい」といった問題が発生しました。
- 結果: こうした状況に対し、ホノルル市長や市議会は、短期賃貸への規制を強化しようと動き始めました。ホノルルの住宅難はもともと深刻で、多くの高級物件はオーナーが州外です。一般的な住居がバケレンに使われるようになっては、地元住民のための住宅供給が減ります。
【規制強化への最初の試みと挫折】
- 2019年(法案89):
- 内容: 「住居地域での30日未満の賃貸は違法である」という、数十年前から存在したルールを改めて確認しました。また、そのような物件を広告するだけでも多額の罰金対象としました。
- 理由: 既存のルール通り、住宅地での無秩序な短期レンタルを取り締まるためです。これは新しい禁止事項ではなく、既存ルールの厳格な運用を改めて示したものでした。
- 結果: 住宅地での30日未満の短期レンタルは禁止されました。しかし、罰金を設定したにもかかわらず、数百万ドルの罰金の取り立てができておらず、当初意図された厳格な施行は達成できていません。
- 2022年(法案41):
- 内容: 「住居地域での賃貸はこれまで30日でしたが、90日未満の賃貸を違法にする」試みでした。一時的な労働者や転居中の家族など、一部例外も設ける予定でした。
- 理由: 短期レンタルをさらに厳しく制限することで、住民のための住居を確保し、家賃の高騰を抑えようとしました。
- 結果: しかし、この法案は施行直前(2022年10月)に連邦裁判所によって差し止め命令が出され、無効となりました。裁判所は、「ハワイ州の法律では、以前から合法だった住居の使い道を、市のゾーニング(土地利用ルール)で禁止することは制限されている」と判断したためです。この時点で、「30日→90日」への変更はストップしました。
【状況の変化:市の権限強化】
- 2024年(法案017):
- 内容: ハワイ州知事が署名し、新しい州法が成立しました。この法律は、短期賃貸に関する規制について、各市に「完全な管理権限」を与えるというものです。
- 理由: 州全体として短期賃貸への規制を強化する方針を打ち出し、その権限を市に移譲しました。
- 結果: これが非常に重要なポイントです。この州法により、ホノルル市を含む各市は、以前の州法による制限を受けず、短期賃貸の期間や方法を自由に管理できるようになりました。長年合法であった、リゾート地域などの30日未満の短期賃貸ですら、段階的に廃止する権限を持つことになりました。しかし、そこまでするかどうかは疑問です。
【そして再び90日へ:最新の法案62】
- 2025年1月3日(法案62の成立、9月施行):
- 内容: 市長が法案62に署名し成立しました。この最終版に、「住居地域における最短賃貸期間を90日未満は違法とする」という条項が、事前の告知や十分な議論がないまま、不意打ちのように組み込まれていました。また、2022年の法案41にあったような一時滞在者のための例外規定は設けられていません。
- 理由: 公式な説明は少ないですが、考えられる理由を述べましょう。2024年の州法によって短期賃貸への強い規制権限を得た市が、改めて住民のための住宅確保を目的とした90日化を試みたと思われます。しかし、当時の現行法であった30日未満の賃貸禁止を厳格に施行する法律も、実際には厳しく施行することができませんでした。期間を90日に伸ばしても、それに従うのは善良な市民のみと言う結果になるかもしれません。
- 結果: 2025年9月以降、住居地域にある物件は、原則として90日以上の契約でしか貸し出せなくなります。これに違反した場合の罰金は高額で、初回最高5,000ドル、広告ごとに1日最大10,000ドルです。リゾート地域など、合法的に日単位で貸せる物件以外は、広告も期間や料金の表示が規制されます。
【なぜ日数が色々あるのか?】
- 180日: ハワイ州の税法では、180日未満の賃貸が短期宿泊税(TAT)の対象となります。また、カカアコなどのハワイ地域開発公社(HCDA)管轄エリアでは、州法に従って、180日未満の賃貸が許可されていません。市長も当初、最短期間180日を目指していました。
- 30日: これまで住居地域での最短賃貸期間で、これ未満は違法です。
- 90日: 今回の法案62で新たに(そして再び)住居地域に導入される最短賃貸期間です。
- 30日~89日(「ギャップ」期間): 以前は合法的な「月ごと」の賃貸として、30日以上滞在したい旅行者や、巡回看護師などの短期滞在者に利用されていた期間です。今回の法案62は、住居地域からこの期間の賃貸を排除します。市は、これが住民のための住宅を増やすと主張しています。
【今後の見通しと市場への影響】
- 法的な異議申し立て: この新しい90日ルールは、「財産権の違法な収用」として弁護士たちによって裁判で争われる可能性が高いです。
- 結果の不透明さ: これが最終的にどうなるかは、まだ予測できません。数ヶ月かかる見込みです。
- 今回の市の強さ: しかし、2022年の裁判で市が敗訴した時とは状況が異なります。2024年の州法(法案017)により、市は短期賃貸を規制するより強い権限を持っています。そのため、今回は訴えられても市が勝訴する可能性が十分にあります。
- 過去の実績証明:前回の法案41の施行予定日だった2022年10月23日以前から、最短30日以上の賃貸を行っていたことを証明できれば、もしかしたら新しいルール施行後も継続できる可能性があります。当時の契約書や広告記録など、証拠をしっかり保管しておくことが重要になります。
- 市場への影響: 新しいルールにより、合法短期バケレン物件、および一部のコンドテルの賃貸需要と価値が高まる可能性があります。
- 市の執行能力: 一方で、市が過去の違法行為を取り締まるのに苦労している現実があり、新しい90日ルールをどこまで執行できるかは依然として不透明です。
この新しい条例は、オアフ島の住居用不動産のオーナーさんにとって大きな変更点であり、今後の裁判の動向を注視する必要があります。
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