コロナ禍の米国で、小売業者が迫られた事業の転換とはどのようなものだったのでしょうか。
今日は、カナダの投資管理会社であるコリアーズ・インターナショナルの2021年春季店舗系不動産報告書から、店舗の回復、記録的返品、モールでのフルフィルメント、消費者のグリーン化について解説します。
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【コロナ禍で小売業者に起きた変化とは】アメリカ店舗系不動産レポート
小売業の売上げは増加
御覧のように、小売業自体は、まるでパンデミックなど存在しなかったかのごとく、成長しています。2020年1月の時点ではまだその影響がなく、21年1月の時点では、大多数の米国民に送られた夫婦$1,400の給付が、小売りを刺激したようです。しかし、その多くはオンラインで、2020年は、初めてオンラインショッピングをした人が1.5億人もいると言われており、コリアーズは、2021年の全小売の16.1%がオンラインになると予想しています。
小売店に起こった変化
この表の数字を見ても、1年半で小売業者の展望にかなりの変化が起きていることが分かります。
ほとんどの小売業者は、小売店舗が将来なくなるとは考えていませんが、その形態は進化すると考えており、オンラインショッピング、オンラインで注文して店舗でピックアップ、食料品をクーラーに入れて配達など、消費者の選択を増やしています。それでは、具体的にどのような変化を考えているのか、見てみましょう。
小売業者が考えている業態の転換
半数近くが店舗を閉めるか縮小する予定です。また、今までのようにただ店舗に来るお客さんに商品を販売するだけでなく、オンラインショッピングその他の流通ルートを開発するという業者が8割近くあり、メイシー百貨店のように、郊外に小店舗を出すなど、新しい形式の店舗を開店する予定と答えた業者が7割近くあります。
2020年はオンラインショッピングが前年に比べて35%増えましたが、物理的店舗から発送された商品は、それ以上増えました。家電量販店のベストバイは、店舗を縮小してショールームにし、オンラインで注文してもらって商品を受け取るという、新しいフォーマットを試験的に始めています。案外少ないのがキャッシュレジスターなどの自動化で約4割です。将来への不安から、リース期間が短くなる傾向にあり、期間限定店舗なども増えるでしょう。
小売業が抱える返品管理の問題
従来のオンラインショップであろうと物理的店舗であろうと、利用者が増えるにつれて問題になるのが、返品管理です。米国は、日本と違い、何でも簡単に返品することができます。ハリケーンが来ると聞くと、ボトルウォーターなどを大量に購入して、無事に過ぎ去ったら返品するなどということは、よく見かけます。返品されたボトルウォーターは廃棄されると聞きましたが、それを知ってて返品しているのでしょうか。
私の知り合いで、若いころリバティーハウスという百貨店のモデルをしていた人がいるのですが、モデルは、仕事で着た服を全部もらえるそうです。彼は、お金に困ったとき、もらったアロハシャツを何十枚も返品して、換金したそうです。リバティーハウスは、古くても返品OKというポリシーでしたが、それがたたったのか、破産してしまいました。
返品にかかる費用を考えると、その商品をタダでお客さんに上げてしまった方が、かえって安くつくことが多いそうです。今年の1月は、オンラインショッピングが増えただけでなく、返品も23%増えました。特に多いのが衣料品で、たくさん注文して、気に入らないものやサイズが合わないものは、最初から返品するつもりで注文する人も多いようです。
モール利用者減少の影響
モールに行くことが減った理由をアンケート調査したところ、69%が健康上の理由、47%が人数制限、40%が営業停止命令、つまり行きたい店が閉まっていることが理由だと述べており、興味がない、つまり行きたいと思わないと答えたのは15%にすぎませんでした。
パンデミック前は、レジャー目的でモールに行く人が多く、その多くは外食でした。パンデミック中も、レストランを利用する人は多かったですが、終息したら外食を再開すると答えた人は、映画鑑賞やライブミュージックほどではありませんが、少し減っています。それに比べて、フィットネス、ボーリング、レーザータグ(おもちゃのレーザーガンを使って撃ち合うゲーム)などは増えています。
モールの空室をフルフィルメントセンターにするというアイデアがもてはやされていますが、これには反対する人が57%もいます。フルフィルメントセンターとは、通信販売で注文を受けた商品の発送センターのことです。バークレイズの調査によると、そうした場合、家賃収入は60~90%も減るという予想です。
反対の最大の理由は道路の混雑です。お客さんにとって迷惑だということもあるでしょうが、交通量の多いモールを流通センターにするのは非効率的です。もう一つの問題は、商業地域を工業地域のゾーニングに変更してもらわなければなりませんが、地方自治体が必ずしもそれを認めるとは限りません。さらに、モールは流通センターの構造とはかなり異なり、改装の費用がかかるということです。
モールの空室を改装するくらいなら、郊外の土地の安いところに流通センターを建てた方が、費用効率が高いのです。フルフィルメントセンターにコンバートするとしても、オンライン販売をするようになったモールの既存の店舗が使う程度のものではないでしょうか。以下は、モールでフルフィルメントセンターを運営することにどのような問題があるかに関するアンケートの結果です。
若い世代に広がる持続可能性の支持
最後に、小売業者の法人倫理と持続可能性が大切だと答えた消費者が特に若年層で増えています。アメリカ人は、日本人以上に世代の違いを強調します。ベビーブーマーという言葉は日本でもよく使われますが、以下は、年代の若い順に並べた結果です。世代の分かれ目は明確に決められているわけではなく、この統計にも書いてありませんが、いつ頃生まれた人がどの世代に属するか、大体の年代を表に書き加えておきました。
特に若い消費者にアピールするためには、環境に優しい原材料を使った商品、包装、輸送手段を使うことが大切になります。女性用肌着のブランドであるパレードでは、有害な化学物質を使わず、85%リサイクルされたポリアミド製の包装を使っており、堆肥化が可能です。アイリーン・フィッシャーズ、パタゴニア、オールバーズ、グレイツなどのブランドも、持続可能性を強調しています。
店舗系物件は、オンラインショッピングの拡大により、パンデミック以前から需要が減り、パンデミックがそれに拍車をかけたわけですが、逆に、それによって多くの小売店は、ニューノーマルに対応せざるを得なくなり、それができた小売業者は、将来の展望が見えてきたのかもしれません。
モールでの楽しい体験をオンラインショッピングで満たすことはできません。私は、通訳を頼まれることがよくありますが、何度かドンキホーテの通訳をしたことがありました。ドンキホーテは、楽しく買物をしてもらうことをそのモットーとしています。モールは、物理的店舗とオンラインのハイブリッドになると同時に、楽しめる場所になることが生き残りの手段ではないかと思いますが、皆さんはどう思われるでしょうか。
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今日は、カナダの投資管理会社であるコリアーズ・インターナショナルの2021年春季店舗系不動産報告書から、店舗の回復、記録的返品、モールでのフルフィルメント、消費者のグリーン化について解説しました。このチャンネルではハワイでのオープンハウスの様子や、アメリカ・ハワイの不動産マーケットの情報をお届けしています。アメリカの不動産に興味のある方、ハワイで不動産を持ちたい方は是非チャンネル登録をお願いします。