登坂不動産で営業トップの永瀬財地(山下智久)は、詐欺まがいの商法で成績を上げてきました。ところが、ある日突然、たたりで嘘がつけなくなり、成績が急降下。第6話では、竹鶴工務店が、所有する土地に家を複数建てるので、長瀬がその家を売りさばくことに。しかし、竹鶴工務店は下請けに安い金額で建築を丸投げしようとしていることが判明。竹鶴はマージンを取るだけで、しかも丸投げは法律違反なのです。
早速建築現場に行った長瀬は、下請けの秋川工務店が接合金物を減らしてコスト削減していることを発見。建築プランの見直しを提案しますが、竹鶴の予算では無理だと、まったく聞く耳を持ちません。減らした金物は別の方法で補強しているとのこと。零細工務店が生き残るためには、仕方がないというのです。
第1話の解説でも、札付きのおせっかいである弊社の河野社長が近所の工事現場で欠陥工事を発見し、工務店のおっさんと似たような口論をした話を紹介しました。当時は接合金物に関する規制が現在ほどきつくはなかったので、木材を使って補強していたのですが、社長曰く、その数が全然足りなかったそうです。秋川工務店が「別の方法で補強している」と言ったのも、この木材のことでしょう。
河野社長が口論した工務店も、大手の下請けでした。発注した○○建築会社は、当時、高かろう悪かろうで有名でした。年老いて農業を止めた地主を、相続税対策になると言って騙してアパートを建てさせていたのです。相続税対策になることは事実ですが、だからと言って損してでも建てればよいということにはなりません。
後にこの会社は上場し、外資も入り、最大手になったのですが、そのくらい上り詰めると、そんな危ない欠陥工事を続けるわけにもいかないのでしょう。今はもう少しまともなものを建てているようです。
話を元に戻しますが、長瀬は秋川工務店の工事を手伝うようになります。その誠実さに心を動かされた工務店の社長は、建築プラン変更に合意してくれるのですが、これはシナリオとしてはちょっと無理があります。販売を依頼された不動産屋の従業員が自分の勤務時間に工務店の工事を手伝うなどということは考えられません。
第6話にはもう一つ似た問題があります。長瀬のライバルで、一見非情なやり手営業マンの桐山は、ご主人を亡くし、家を売ろうとしているおばあちゃんの散歩に毎日付き合っています。長瀬の部下のつきしたは、1億円の価値がある家を7500万で売ろうとしている桐山を疑いますが、このおばあちゃん、気に入った施設に入りたくて、家の売却を急いでいるのです。桐山は、古い家の解体費も差し引いて、7500万にしたのです。
長瀬が工事を手伝う話にしろ、霧山がおばあちゃんの散歩に付き合う話にしろ、NHKはそれを美化していますが、これは疑問です。というのは、この手の親切は、○○建築会社が年老いた農家のご夫婦を騙すのに使う典型的な方法だからです。
○○に騙されたと弊社に相談に来られた方は、○○の営業マンがとても良い方だったので信じてしまったと言います。なぜ良い方だと思ったのですかと聞いたところ、毎朝掃除に来てくれたとのこと。契約が終わったら、ぱったり来なくなったそうです。しかもこの方、農家の老夫婦ではなく、医療関係の仕事をなさっている中年の方でした。そんなインテリ層の人でも騙すのですから、○○も捨てたもんじゃありません。
○○を褒めている場合ではありません。NHKが「正直不動産」を放送する背景には、国民の不動産リテラシー向上がその目的であると思われ、番組の中でも毎回、不動産業界の仕組みや言葉の説明があるます。このような「親切」にこそご注意、というメッセージが欲しいところです。
この○○不動産、かなりブラックなので、辞めて弊社に面接に来る方も多いです。色々な体験談をしてくれますが、その一つをご紹介しましょう。朝、上司が3人の営業マンを車に乗せて田んぼのど真ん中に下ろします。財布と携帯は上司が預かります。3人は一日営業をして、夜10時に上司が朝、下ろした場所に迎えに来てくれるそうです。私の実家の近所にも○○が建てたアパートが何十棟とありますが、このような営業の結果でしょうか。
10年以上も前のことですが、弊社のお金を横領して有罪になった従業員がいました。もちろん首にしたのですが、ある日ばったり焼鳥屋で河野社長と出会います。彼は○○建築会社で営業課長になって、いかに自分が更生してまじめにやっているか、社長に自慢げに話したそうです。確かに、彼がやっていたことは犯罪ではないかもしれませんが、蛇の道は蛇…。
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