ハワイの新築コンド(分譲マンション)の中央値は$67万です。UHERO(ハワイ大学経済調査協会University of Hawaii Economic Research Organization)の調査によると、その58%にあたる$38.7万が、州や市の規制によってかかる余分な費用です。
いくらなんでもそれはないだろうと思うかもしれませんが、多分、一番大きいのが市のインフラ改善のために払わされる費用です。と言っても、そのコンド開発によって直接必要になるインフラだけではありません。
例えば、私が以前働いていた、ある大きな教会は、カネオヘのコオラウ山脈に沿って走るH-3という高速道路の隣の土地を借りて、教会堂を建てました。その周辺は、ウィンドワード(風上)地方と呼ばれ、貿易風が海から吹いてきて切り立った山に当たり、暖かい湿った空気が急上昇して冷えて、にわか雨がよく降ります。谷々に即席の滝ができて、とてもきれいです。
しかし、その水は山の急斜面を下って、住宅地に流れてきます。それを食い止めるために、教会の敷地の地下に巨大な貯水槽を建設することが教会堂建設の条件になりました。確かに、開発によって水の流れは速くなりますが、その費用は建物自体の建築費よりも高かったのです。信じ難かったのですが、ハワイではそれが当たり前なのです。58%というのは全米一で、住宅価格が高いのは当然です。
ハワイ大学のジャスティン・ティンドール助教授は、「一般固定資産税を通じてインフラに資金を提供するのではなく、インフラのコスト負担を開発者に課すことにより、住宅生産コストが大幅に上昇し、事実上、新築住宅購入者に新しいインフラの費用全額負担を求めることになります。」と述べています。
ハワイは固定資産税が全国でも最低レベルです。これは、納税額と査定価値の割合が低いということで、査定価値自体が全国一高いのだから、納税額は決して低くはないとも言えますが、増税したほうがいいかもしれません。
規制によるコストが高いもう一つの大きな理由は、建築許可にかかる期間です。集合住宅の場合、平均400日以上です。なぜそんなにかかるのか。最大の理由は、給料が低いことによる市の担当職員不足です。初任給は$39,816で、約600万円。悪くないと思うかもしれませんが、これはホテルのハウスキーパーやスターバックスなみの給料です。
HUD(住宅都市開発省)によると、$73,400(約1100万円)以下が低所得、$45,850(約690万円)以下が非常に低所得とみなされます。この部署は給与が18段階に分けてありますが、最初の八つは、それらの段階の最高額が$73,400に届きません。州の失業率は3%以下で、求職の申し込みをしても、面接をする前に他の仕事を見つける人がほとんどだそうです。そのため、現在空きが24%、去年1年間で3人に一人が辞めました。
建築許可に時間がかかると、その間、購入した更地のローンを支払わなければなりません。待っている間に建築費も上がるし、リスク・プレミアムも高くなります。AIなどを取り入れて、何とか簡素化しようとしているようですが、規制自体を軽減したほうが早いのではないでしょうか。
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