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アメリカで3番目に買ったハワイのマンション

高値で買ってしまったハワイのマンション

 私たち家族は、1991年にハワイに引っ越してきました。知り合いの奥さんが不動産エージェントでしたので、勧められてすぐにマンションを買いました。当時は、まだアメリカ経済のことや不動産市場のことなど、あまりよく分かっていませんでしたので、今になって思うと、移住したばかりで土地勘もないところにマンションを買うというのは、あまり賢い決断ではなかったかもしれません。

 当時、米国では湾岸戦争が始まったばかりでした。ブッシュ大統領は支持率が高かったのですが、92年の総選挙のころには、戦争の経済負担などで米国経済は傾いていました。また、ハワイは日本経済のバブルがはじけて、長期的な不況に突入しました。私は、買ったときには安く買えたと思って喜んでいたのですが、実は不動産の値段が下がり始めた頃に買ってしまったのです。

 購入した物件はカイルアにあるウィンドワード・ハーバーというまずまずの物件でした。当時のカイルアは、まだまだ観光客から脚光を浴びておらず、落ち着いた静かな町でした。プール、ジャグジやテニスコート付きで、全ユニットのラナイ(ベランダ)は、目の前が池。111平米の3LDKで、購入価格は22万ドルでした。土地付きではありませんでしたが、当時はそれが普通でしたので、特に気にしませんでした。

 数年後、土地が売りに出されるというので、迷わず5万ドルで購入しました。購入してから11年後、職場もホノルル市内に変わり、市内で家を買うために売ったときには、23万ドルでしか売れませんでした。5万ドルで土地を買ったのですが、借地にそれだけの価値がなかった可能性もあり、4万ドル損をしたということになります。ハワイでもそんなことがあるのかと思うかもしれませんが、私は、ちょうどピークで買って、底値で売ってしまったわけです。

当時のハワイの不動産市場

 ハワイの市場は、私が購入した1991年ころから2000年まで、ゆっくりとではありますが、下がり続けました。ハワイには、軍事、観光、農業の三つの産業がありますが、軍はソ連との冷戦が終わり軍縮、農業は外国の安い作物と競争することができなくて、衰えていきました。その上観光や不動産でお得意先の日本経済が不況になり、長期的な低迷が続いたのです。

 ホノルル・ボード・オブ・リアルターでは、1997年以前の情報がデータ化されていませんので、91年からの推移をみることはできませんが、底をついた2000年以降の価格の推移を見てみましょう。以下のグラフをご覧ください。これは、分譲マンションと戸建てをまとめた中古住宅の売値の中央値です。

 住宅の中央値は、これを見ると、(私がこのマンションを売ったと同時に購入した市内の家が、約2.6倍で売れた理由がよくわかると思います。)リーマン・ショックの時には既に45万ドルに達していました。その後少し落ちましたが、40万ドルを切ることはありませんでした。ほかの市場に比べて、ハワイがリーマン・ショックに持ちこたえた理由はいくつかあります。一つは、ハワイの高級物件や、外国投資家は、現金で購入することが多いので、ローンがなかったということです。もう一つは、ハワイは地銀を守るためにメインランドの銀行が参入できなくなっているのですが、それらの銀行がサブプライムローンを出していなかったということです。さらに、ハワイは世界が市場ですので、いつもどこかの誰かが買ってくれます。

市場の周期

私はずっとハワイに住んでいますので、ハワイのマンションを売って、同じハワイの戸建てを買ったわけです。マンションはほぼ底値で売ったわけですが、ということは戸建ても底値で買ったということですので、同じ市場で売買する限り、市場周期のことはそれほど心配しなくてもいいかもしれません。しかし、これをお読みの皆さんのほとんどは事情が異なりますので、いつ買うかは気になるところだと思います。

 不動産は流動性の低い投資です。そう簡単に売り買いできないということは、デメリットと考えられることが多いですが、逆にこれはメリットなのかもしれません。ある実験によると、面白い結果が出ています。ファンドに投資をした人の半分に毎月レポートを送り、残りの半分は年に一度だけレポートを送りました。毎月レポートをもらった人の方が、情報が多いので、より良い買換えの決断ができると思うかもしれません。

しかし、実際には、年に一度しかもらわなかった人の方が、収益率が高かったのです。毎月もらっていた人は、ちょっと下がると心配になって、他の成績の良いファンドに買い替えてしまいます。安く売って高く買ってしまっているわけです。年一度の人は、ほとんど忘れてしまっているので、買い替える人が少ないのです。不動産も、簡単には売れないので自然と長く持つようになり、それがキャピタルゲインにつながるのかもしれません。もちろん、これは日本のように人口の減っている国には当てはまらないでしょう。

後悔している2つのこと

最後に、このマンションの売却について、二つほど後悔していることを書きます。一つは、これを売らないと戸建てを買えないだろうと思って売ってしまったことです。当時のアメリカはローンをもらうのが非常に楽で、戸建てのローンは、私の収入の確認さえしませんでした。マンションを貸して、持ち続けることは可能だったと思います。そうしていれば、今なら60万ドル以上で売れるでしょう。

もう一つは、マンションを売るときに、不動産業者に頼まないで、自分で売ったことです。私は、当時不動産業者ではありませんでしたし、不動産の知識も限られていました。6のコミッションを払わなくても済むと思ってやったことですが、自分でできるマーケティングには限度があります。今は、ネットがありますので、以前よりはいいと思いますが、アメリカでは買主はコミッションを払わなくていいので、ほぼ全員エージェントを雇います。私の場合は、買主が同じマンションの一室を借りていた方だったので、コミッションを全然払わなくて済みましたが、通常は、自分で売りに出しても買主側のコミッションは払わなければなりません。コミッションを半分にするだけのために、自分で売るというのは、止めた方がいいでしょう。

ちょっと話がずれますが、事業用不動産に関しては、業者に頼んで売ってもらう場合でも、市場に出さないで、いわゆるポケット・リスティングで売る場合がよくありますが、ある調査によると、そのような売り方をする場合、売値が平均して10%近く下がるそうです。コミッションの方が安いということですね。

 

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