2018年10月ホノルル・ボード・オブ・リアルター・レポート
「最近中央値が史上最高値を更新したことを考えると、住宅の売買戸数が減ってはいるものの、10月の中央値は相対的には安定しています。売り物件の在庫は増えており、購入者のオプションは増え、売れるまでの期間が長くなっています。オアフの住宅市場は、売り手にとっても買い手にとっても、安定した状態です。」
ホノルル・ボード・オブ・リアルター会長ダリル・マチャ氏
統計の見方
まず、中央値と平均値の間にかなりの差があることを不思議に思っている方がいらっしゃると思いますので、その説明から始めたいと思います。中央値と言うのは、売れた家を売値の順番に並べて、ちょうどその真ん中にある物件の売値と言う意味です。戸建ての場合、10月には309戸売れましたので、高い順に並べて155番目の家の値段ということになり、その家は、安い順に数えても同じ155番目です。
ハワイの場合、飛び抜けて高い豪邸が毎月いくつか売れますので、それら数戸の物件が平均値を大きく上げてしまいます。皆さんも、学生の頃、平均点が30点などと言う難しい試験を受けたことがあるでしょう。自分は25点しか取れていないので、平均以下だとがっかりしたことがあると思いますが、数人の成績上位者が満点に近い点を取っているので平均点が上がっているだけで、25点は中央値だったかもしれません。
それでは、この統計を見る上で、一つ肝心なことをご説明します。これは、10月に売買契約が終了した物件の統計です。エスクローの期間は通常45日くらいですので、成約したのは8月か9月です。ですから、2か月前の統計を見ていると考えた方がいいでしょう。
売値の中央値の推移
それでは、マチャ氏のコメントを一つずつ見てみましょう。この統計を見ると、戸建ては去年の10月に比べて中央値も平均値も上がっていますが、分譲マンションは去年とほぼ同じです。それでは戸建てと分譲マンションの過去2年間の中央値の推移を見てみましょう。
青い線が戸建て、赤い線がマンションです。戸建ての方は、8月と9月に記録を更新し、それに比べると少し下がっていますが、毎月記録を更新することを期待するのは無理ですし、全体的に見るとまだ高い水準で、堅調だと言えそうです。しかし、マンションの方は、前年の10月に比べるとほとんど変わりありませんが、今年の9月に比べるとかなりの下がり方ですし、過去2年間でほぼ最低の水準です。これは、金利の上昇で、戸建てを買うだけの収入のない人のローンの貸出限度額が減っていることが原因ではないかと思われます。
成約までの日数の中央値の推移
もう一つ注意したいのが、売買契約成立までにかかる日数です。これで見ると、戸建ての方は、成約までの日数が17日から29日に跳ね上がっています。マンションも20日から25日に増えており、過去2年間においても、これだけ急に上がったことはなく、最高水準です。つまり、今までのようにすぐには売れなくなっているということです。高水準の値段を保っている戸建ての方が急上昇したのは意外ですが、値段の高いものほど時間がかかりますので、それほど驚くに値することではないかもしれません。
在庫期間の推移
次に、在庫が何ヶ月分あるかを示すグラフを見てみましょう。これは、今のペースで住宅が売れていくと、現在売りに出ている物件がすべて売れるまでに何か月かかるかを示しています。戸建てもマンションもちょうど3か月になっています。去年の暮や今年の年頭は2か月くらいしかありませんでしたので、かなりの上昇傾向です。3か月と言うのは買い手市場なのでしょうか。そんなことはありません。バランスの取れた市場は平均6か月だと言われています。ということは、まだまだ売り手市場だということですが、金利の上昇はこれからも続くと思われますので、高すぎてマイホームが買えない家族がこれからも増え続けるでしょう。
戸建て・分譲マンション 売値中央値の推移
最後に、1987年からの戸建てとマンションの中央値の推移を見てみましょう。今までは、かなり短い期間の推移を見て、これからどうなるかを予想しようとしているわけですが、長い目で見て過去30年を振り返ってみると、それほど心配なさそうだということがわかります。アメリカ、そしてハワイ経済の基礎的条件が整っている限り、長期的に見れば、価値が上がっていくということです。1年や1か月の動向を見て、あまり神経質になることもないかもしれません。