CCR(キャッシュ・オン・キャッシュ配当率)
CCR(Cash on Cash Rate of Return)は、ROE(Return on Equity)自己資本配当率などとも呼ばれます。物件全体の収益率ではなく、自己資本の部分の収益率です。計算式はキャップレートとよく似ています。
【R=自己資本部分の収益率】
【I=NOIではなくキャッシュフロー】
キャッシュフローは、NOI(営業純利益)からADS(年間負債支払額)を引いた、手元に残る現金です。
【V=物件の価値ではなく自己資本】
税引き前で計算する場合と、後の場合がありますが、ここでは前にします。
これら三つの数の関係は以下の通りです。
R(CCR)=I(キャッシュフロー)÷V(自己資本)
I=V×R
V=I÷R
キャップレートについてはこちらを参考にして下さい。
割引キャッシュフロー(DCF)攻略①キャップレート
計算してみましょう
ここで例を挙げてみましょう。
10億円の物件でキャップレートが5%、銀行金利が3%で30年ローンを借りたとします。この場合のCCRはいくらになるでしょうか。
NOIは10億×0.05=5千万円です。
これからローンのADS(年間負債支払額)を引いてキャッシュフローを出します。LTV(Loan to Value)は、借入金割合とかローン資産価値比率とか訳されますが、いわゆる掛目のことです。これが80%だとすると、ローンの額は、8億円で、毎月の支払いは3,372,832円になり、ADSはそれに12を掛けた40,473,984円になります。
NOIの5千万からこのローンの支払額(ADS)を引くと、キャッシュフローは9,526,016円です。これを自己資本の2億円で割ると、0.0476となり、CCRは4.76%です。この場合、全部現金で買った場合の収益率(キャップレート)は5%ですが、このローンを借りて買った場合の自己資本の収益率は4.76%ということになりました。
9,526,016(キャッシュフロー)÷200,000,000(自己資本)=0.0476、つまり4.76%
CCRは借入条件で変わる
ここで大切なことは、キャップレートはだれがどのように購入しても5%ですが、CCRはローンの条件によって変わるということです。
例えば、ローンが35年なら、毎月の支払いは、3,078,802円となり、ADSは36,945,624円です。するとキャッシュフローは13,054,376円となり、CCRは6.53%になります。30年ローンを35年に変えただけで、CCRの方がキャップレートよりも高くなりました。ということは、CCRはローンの条件次第でよくなったり悪くなったりしますので、物件自体の収益率を表すものではなく、自分の投資額の収益率を表します。つまり、物件自体の良し悪しの判断は、CCRではなくキャップレートを見るべきだということです。
2年目以降の算出方法とは?
もう一つ大切なことは、キャップレートにしてもCCRにしても、通常購入1年目の数値を使って計算します。2年目以降の計算をする場合、キャップレートは、そのときの価値(V)に基づいて計算するべきです。CCRも同じで、だんだんとローンの残高が減り、あるいは物件の価値が変わって自己資産が変われば、それに基づいて計算するべきです。30年前に安く買ってローンの支払いが終わった物件のCCRを、当時の頭金を使って計算しても意味がありません。
ROIという言葉にはご注意
ここでもう一つよく使われる言葉をご紹介しましょう。ROI(Return on Investment)投資収益率です。この言葉は、キャップレートの同義語として使われることもあれば、CCRと同じ意味で使われることもありますので、私の意見では、避けたほうが良いと思います。
というのは、そのほかの言葉と異なり、これは英語の日常会話で不通に使われる言葉であり、多くの場合、話し手はその正確な意味など考えていません。例えば、「恵まれない子供に教育という投資をすれば、高い投資収益(Return on Investment)を期待することができる」などという表現をします。
ROIに限りませんが、使われている言葉の意味が明確でない場合は、どういう意味で使っているのか、本人に確認してください。