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割引キャッシュフロー攻略③レバレッジ

レバレッジの正と負

 前回の「割引キャッシュフロー攻略②キャッシュ・オン・キャッシュ配当率」で、ローンの条件によってCCRがキャップレートより高くなったり低くなったりすることがあるという話をしました。

割引キャッシュフロー攻略②キャッシュ・オン・キャッシュ配当率

高くなる場合はレバレッジが正、低くなる場合はレバレッジが負であると言われることがあります。「言われることがある」といった理由は、実は意見が分かれているからです。今回は、そう言われる場合ついて説明しましょう。

K%(ローン定数とは)

 ADS(年間負債支払額)がローンの額に占める割合をK%Loan Constant)、ローン定数と呼びます。Mortgage Constantなどと呼ばれることもあります。ローンの支払いには、金利と元金が含まれていますので、K%は、通常ローンの金利より高くなります。当然のことながら、ローン期間が短いと、元金の支払いが増えますので、K%は高くなります。K%がキャップレートより低いと、CCRFCRより高くなります。前回の記事で使った例をもう一度見てみましょう。

正のレバレッジ・負のレバレッジ

 この10億円の物件のキャップレートは5%ですので、NOI営業純利益)は5千万円です。もしある投資家が、自分が2億円出して、もう一人他の投資家に8億円出してもらって、共同で投資をしたら、自分は1千万、もう一人の投資家は4千万のNOIをもらえることになります。ところが、8億出した投資家が、自分は投資家としてのリスクを負いたくないので、8億円を3%の金利で貸してあげると言ったらどうでしょうか。35年のローンですと、彼は36,945,624円のADSしかもらえないわけで、本来もらえるはずの4千万円より3,054,376円少ない額をもらうことになります。なぜわざわざ少ない額でいいというのか、と思う人もいるかもしれませんが、8億円をローンにすると、NOIがいくら減っても、36,945,624円を支払ってもらえますので、ローンにした方が、リスクが少ないわけです。この場合、余分な3,054,376円は、2億円出した投資家がもらうことになりますので、その分、2億円の投資、つまり自己資本の収益率は上がります。これを正のレバレッジということがあるわけです。

CCR = (10,000,000 + 3,054,376) ÷ 200,000,000 = 6.53%

 ところが、ローンが30年であれば、ADS40,473,984円になり、8億円が投資であった場合に受け取るべき4千万NOIより多くなります。となると、2億円の投資家は、自分が受け取るべき1千万円の中から、差額の473,984円を8億円の貸手に支払わなければなりませんので、2億円の自己資本の収益率は減るわけです。これを、負のレバレッジと言うことがあります。

CCR = (10,000,000 – 473,984) ÷ 200,000,000 = 4.76%

収益率が全く変わらないということは滅多にありませんが、その場合は中立のレバレッジです。

レバレッジをかける理由

 このように、正のレバレッジを掛けることによって、自己資本の収益率を上げることができます。レバレッジを掛ける理由は、それだけではありません。最も多い理由は、現金で買えないからローンを借りるというものです。その場合は、正であろうが負であろうが、レバレッジを掛ける以外に方法はありません。もう一つの理由は、仮に現金で買うだけの十分な資金があったとしても、ローンを借りることによって複数の物件を買うことができるというものです。一つのものに全額投資するのではなく、複数の不動産のポートフォリオを持つことによって、リスクを分散することができますが、ローンを借りることにはリスクが伴います。それについては、次にお話ししましょう。