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マイクロ・ユニットはハワイで成功するか

ゼネコンのLさんの野望

ゼネコンとは、general contractorを短くしたものです。日本語では、総合建設請負業者と訳されるそうですが、誰もが大会社を想像します。しかし、アメリカには一人でやっているゼネコンがたくさんいます。一軒家の建築工事を請け負って、そのために必要な業者をすべて手配するのが、ゼネコンの仕事です。自分の会社がすべての工事をすることができなくても、立派なゼネコンなのです。

ハワイにもこのようなゼネコンは山ほどいます。その一人のLさんは、市内の便利な場所に自宅を所有していました。ゾーニング(都市計画建築規制)はアパートですが、彼の家はゾーニングができる前に建てられました。そのため、建築許可の必要な改築はできませんが、修理しながら住むことはできます。

1939年に建てられたこの家は、メンテができていないので、大規模修繕をするか、取り壊して新築しなければならない状態です。そうなるとアパートを建てなければなりませんが、737米の敷地は平らではなく、駐車場も必要ですので、小さなアパートしか建てられません。そこで考えたのが、マイクロ・ユニットです。

マイクロ・ユニットとは?

マイクロ・ユニットって何?と思うかもしれませんが、簡単に言えば日本のワンルームです。米国にもワンルームのアパートやマンションはありますが、通常、日本の倍くらいの広さです。それを日本並みの狭さにしたのがマイクロ・ユニットですが、ニューヨークなどの土地の高い市場では、もう出始めています。それをハワイでもやったらどうかということなのですが、具体的に見てみましょう。

まず、面積ですが、ほとんどのユニットが14平米。これは、日本でも小さいですが、何と4階建てにして70室建築可能。流しは洗面と台所併用です。台所は非常に小さく、IH式の小さなヒーターがあるだけです。ガスはありませんが、これはハワイでは普通です。壁に収納することができるマーフィー・ベッドがあります。バスはシャワーのみですが、これも珍しいことではありません。

ホノルルのゾーニング(都市計画建築規制)の問題

実は、このようなユニットは居住系とはみなされません。というのは、居住系とみなされるためにはフルキッチンがなければならないからです。とすると、何とみなされるのかということになりますが、実は商業系です。老人ホームは人が住んでいても商業系とみなされるのと、ちょっと似ています。そのためには、この区画のゾーニングを変えてもらわなければなりません。

私は、ホノルル市はそんなことはしてくれないだろうと思っていました。その一番大きな理由は、商業系にすると、駐車場の数をうんと減らすことができるからです。部屋数は増えるのに、駐車場が足りなければ、路上駐車の取り合いになるでしょう。ただでさえ路上に停めることが困難なこの地域に、これ以上車があふれるようでは困ります。ところが、市はこれを歓迎してくれたそうです。交通渋滞が悪化しているホノルル市は、いたるところにレンタル自転車の駐輪場を設置し始めており、最初から車を持つことを想定していないアパートができることは、むしろ好ましいというわけです。

資金が尽き家を失ったLさん

そこで彼は設計士を雇い、大きな建築業者を手配し、マイクロ・ユニットを多く手掛けてきた全国的に有名な不動産会社を雇って分析をしてもらって予算を立て、ロイズ・オブ・ロンドンからプロジェクトの保険を出してもらおうとしたのですが、途中でお金が無くなり、家のローンの支払いが滞ってしまいました。この開発のために家を担保にして第二抵当まで借りていた彼は、不履行になって家を失ってしまったのです。

しかし、そこで話は終わりません。銀行は、売って借金を回収すればいいだけだと思うかもしれませんが、そう簡単には行かないのです。アパートのゾーニングに建っている倒れそうな家を、誰が買うでしょうか。ずっと安く売れば買ってくれる人はいるでしょうが、それでは借金が回収できません。しかし、残高以上で売ろうとすれば、その家をわざわざ直して住みたい人が買ってくれる可能性はあまりありません。ということは、取り壊してアパートを開発しようという投資家でなければ買わないということです。

というわけで、銀行は、ローン残高+アルファで売りに出し、それは固定資産税の土地の評価額と同額でした。ある現金のバイヤーと売買契約を交わしたのですが、この狭い土地にどのように駐車場とアパートを確保するか、試行錯誤を繰り返すうちに期限切れ。銀行はエスクロー期間を延長し続けることはできないという理由で、この契約をキャンセルしたのです。

2ヶ月で20万ドルの投資利益??

しかし、このデューデリを必要としていない人がこの世に一人だけいます。そうです。Lさんです。彼は、私に、買ってくれる人がいたら、すぐに自分が開発ローンをもらって売買費用を引いて20万ドル高く買い戻すというのです。なぜ銀行から直接買い戻さないのか聞いたところ、銀行は彼とはもう取引をしたくないとのことでした。売値は約130万ドル。2か月ほどのエスクロー期間で20万ドル儲けたいという方がいたら、手を上げてください。もし誰もいらっしゃらないようなら、私が契約をして、彼の言っていることがどこまで本当なのか、デューデリを始めようかと検討しているところです。

 

*2019.3.22 追記:この案件は終了しました。