米国で流行りの「オンライン仲介サイト」
家内の知り合い夫婦が、コンドを売ることにしました。奥さんの反対を押し切って、ご主人は最近流行り始めたオンラインの仲介サイトを使うことにしました。米国では、通常売主が売主側と買主側の両方のコミッションを払いますが、このようなサイトを使うと、売主側の仲介業者のコミッションが少し安くなるのです。コミッションの相場について話すことは米国では違法ですので、具体的なことは書きませんが、それほど大した違いではありません。
このサイトは、米国で非常に有名な不動産サイトの一つで、マイホームの購入を考えている人が良く使うサイトです。最近になってこのサイト専用の仲介会社ができ、エージェントを雇うことができるようになりました。サイトはすでにたくさんのユーザーがいますので、簡単に宣伝できる代わりにコミッションを安くするということでしょう。
この仲介業者を使わなくても、どうせこのサイトはMLSに載る全ての売り家をサイトに載せてくれるので、宣伝効果はどの仲介業者を使っても同じではないかと思いますが、有名なサイト専属のエージェントが安いコミッションで売ってくれるので、利用客が増えているのかもしれません。
成約後のエアコンの故障
ご主人はインテリア・デザイナーで、コンドの中は彼がデザインして改装してありましたので、すぐに同じサイズのほかのユニットより高く成約しました。ところが、成約したとたんにエアコンが壊れてしまったのです。すぐに修理に来てもらったところ、新しいものに取り換えるよりほかないとのこと。見積は$2,000ちょっとでした。
それはいいのですが、最近、そのコンドの組合が厳しくなって、新規に取り付ける場合は建築許可がいるというのです。ここでちょっと説明しますが、建築許可は市からもらうもので、組合が発行するものではありません。このような新しい空調の取り付けには、確かに建築許可が必要なのですが、市は人手が足りなくて、エアコン一つの許可を出すだけでも最低3か月はかかるのです。
馬鹿正直にそんな許可を待ってはいられないということで、ほとんどの人は許可を取らないでやります。どの業者に頼んでも、「3か月かかりますけど取りましょう」と言う業者はいません。ましてや、みんなが本当に建築許可を取り始めたら、市はパンクしてしまうでしょう。しかし、組合が要求しているとなると、見つからないようにこっそりやるわけにもいかないので、取るよりほかないのです。許可に必要な図面などを書いてもらう費用も入れると、なんと3倍以上になりました。
まったく話を聞いてくれないエージェント
そこで、買主の取得費用を5千ドル払うから、それで勘弁してくれないかと交渉したそうです。買主は、そんな面倒な作業はしたくないので、何とかしてエアコンをつけてくれとの一点張り。しかし、もう2-3週間で引渡なので、できるわけがありません。売主のエージェントは、新しいエアコンを取り付けないとだめだと繰り返すだけで、何を聞いてもろくに応えてくれなかったそうです。
どうしようもなくなって、私に相談に来たというわけですが、買主は、引き渡しをした後、何とかこの夫婦に新しいエアコンをつけさせようと策を練り、売買契約の修正案を送ってきました。通常、引き渡しの時点で約束した修理などができていない場合、その修理の見積の1.5倍を売却益の中からエスクローが預かり、約束期日までに修理をすれば、エスクローがその修理代を払い、残りを売り主に返してくれます。期日までに直らなかった場合は、全額が買主のものになり、そのお金を使って必要な修理をすることになります。買主は、その条項を修正して、取り付けを半永久的に売主の責任にしようとしたのです。
この条項が使われることはあまりなく、あっても大した額ではありませんし、修理の期日は長くても数日です。今回の場合、エアコン取付費用の1.5倍は1万ドルを超え、引き渡してから少なくとも3か月かかります。こんな話は、聞いたことがありません。しかし、買主はそれを要求し、売主のエージェントもそれに承諾するしかないというのです。でも、この夫婦は早くこの頭痛の種から解放されたかったのです。
私は、契約の修正をしなければ、売却手取り金の中から1万ドルあまりのお金をエスクローが預かり、期間内にエアコンを取り付けることはできないので、それは全部買主に取られてしまうが、少なくともエアコンをつける必要はなくなるということを説明しました。ご夫婦は、エージェントの上司と直接相談し、そうすることにしたのです。その条件は、買主も諦めて受け入れてくれました。
良いエージェントを選ぶ重要性
不動産の売買にはトラブルがつきものです。この話の教訓は、まず、良いエージェントを選ぶということ。このエージェントは自分のことをベテランだと言っていたそうですが、契約の内容をちゃんと理解できてはいなかったようです。一番困ったのは、何を聞いても自分の意見を主張するばかりで、会話にならなかったそうです。経験も大切ですが、もっと大切なのは信頼関係でしょう。
従来の仲介業者より安い仲介料しか払ってもらえないのですから、このようなビジネスモデルの会社に、あまり良いエージェントは集まらないでしょう。また、このサイトのように有名な大会社だからと言って、必ずしも良いとは限りません。日本人は、大きな会社なら安心だと考える傾向がありますが、そのような考えがいかに間違っているかを話し始めたら、ブログではなく本が書けるでしょう。
融通の利かない組合は頭痛の種になる
もう一つは、コンドの組合の内規やハウスルールです。法律通りに建築許可を取らせるというのはいいことですが、現実的にはこの法律は機能していないと言っていいと思います。もちろん、家の建築や大規模修繕には必要ですが、エアコン一つ取り付けるのに3カ月などと言うのは、馬鹿げています。数か月前、これに関して市民の意見を聞く聴聞会があり、中には困り果てて泣きながら証言をした方もいたと聞いています。
あまりにも厳しくて融通の利かない組合を持つコンドは、買ってから頭痛の種です。コンドを買うときに内規やハウスルールをすべて読むのは大変ですが、ちゃんと読んだ方がいいでしょう。自分では分からない場合は、法律文書ですので、正式には弁護士に読んでもらうべきです。でも、良いエージェントであれば、全部読んでそれなりのアドバイスはしてくれると思います。