ハワイの住宅難緩和のための法案
ハワイ州上院で、信じがたい法案が可決されました。米国市民や合法居住者でなければ、築5年以上の住宅を購入できないという法案です。ハワイ法人であっても、非居住者の外国人がコントルールしている場合は、購入できません。下院も通らなければ、法律にはなりませんが、上院では満場一致で通ったそうです。可決前に、発行日を2050年に変更したそうですので、私が生きている間は大丈夫そうですが、外国人が買えないようにすることによってハワイの住宅難緩和を図る法案のようです。
ハワイの住宅難は、今解決しなければならないことですが、30年後にこの法律が有効になると分かっていれば、今から購入意欲が削がれるということなのでしょうか。非居住者によるハワイの住宅の購入は、そのほとんどがメインランドのバイヤーであり、外国人は3%にすぎません。しかし、新築コンドは、多くの外国人が購入していますので、築5年までなら購入を許可しないと、売れなくなって困るということなのでしょう。しかし、米国の外交政策と矛盾するこの法案は、違憲である可能性さえあると思われます。
日本人の迷惑行為も一因
丸源ビル社長の川本源司郎さんに対する反感も、この法案ができた一つの理由だと聞きましたが、彼は、日本より、むしろハワイの方で有名かもしれません。彼は、ハワイで、1980年代に200戸、2000年代にも30戸の住宅を購入して話題になったのですが、特に高級住宅地のカハラで購入した家など、空き家のままで、ちゃんと管理しておらず、近所の人に迷惑をかけています。
米国のゾーニング(建築規制)
話は変わりますが、日本人が米国で物件を購入するときに、こんなに敷地が大きいのだから、分けて2戸建てられないのですかと聞かれることがよくあります。州によって法律は異なりますが、ハワイの場合、居住系のゾーニング(建築規制)には、何種類かあります。R-3.5、R-5、R-7.5、R-10など、色々ですが、Rはレジデンシャルの頭文字で、数字は面積を表しており、1が千平方フィートですので、R-3.5なら3500平方フィート(100坪弱)に一戸という意味です。ですので、それぞれ、その倍の面積がないと、二つに分けて2戸建てることはできません。
ところが、最近、ミネソタ州ミネアポリス市が、住宅難緩和のために、戸建てのゾーニング自体をなくしてしまったのです。もちろん、高さ制限やセットバックはありますが、一つの区画に何戸建ててもよくなったのです。現在、ハワイでは、基本的にアパートのゾーニングでなければ、複数の住居は建てられません。例外はありますが、話がややこしくなりますので、ここでは割愛します。
ゾーニングの規制と緩和
ミネアポリス以外にも、住宅のゾーニング規制を緩和した都市がいくつかあります。米国は日本ほど早く建て替えしませんので、既存の家を取り壊して集合住宅を建てるケースが急増するということは望めませんが、老後、子供たちと一緒に住むための2世帯住宅が増えるのではないかと思われます。住宅難の緩和という同じ目的ですが、規制を強化する自治体と、和らげる自治体の差が、はっきりと出ています。ちなみに、規制が少ないことで有名なテキサス州では、元々このようなゾーニング規制がないと聞きました。
この法律には、他にも利点があります。戸建て地域とアパート地域に分かれると、低所得者はアパート地域に集中します。このようにして、人種の分離が促進されているのです。経済的地位の向上に最も大きな影響を与えるのは、結婚(母子家庭にならないこと)と、生まれ育った場所だそうです。エコノミック・モービリティー(経済的移動性)は、レジデンシャル・モービリティー(住居移動性)によるところが大きいというわけです。ゾーニングは、差別が目的で作られたものではありませんが、これも、政治の予期せぬ結果の一つの例です。
住宅難地域で規制を強化して起こること
3月11日のIREMニュースレターでも紹介されましたが、規制が多いので有名なサンフランシスコでは、最近、お手頃価格の住宅(主にコンド)を建てないと、オフィスビルを建てられないという条例ができたそうです。サンフランシスコは、大の住宅難で、平均的収入しかない家族は、家を買うことが非常に困難ですので、それを緩和しようというわけです。
しかし、専門家の多くは、逆効果になるだろうと考えています。今まで、オフィスビルを開発する場合、お手頃価格の住宅開発のために、いくらかのお金を市に支払えばよかったのですが、オフィス開発をするにはお手頃コンドも開発しなければならないということになれば、オフィス開発が減るでしょう。また、オフィス開発から出ていたお手頃価格住宅開発の助成金が減りますので、コンドの開発も減ることになります。もともと家賃規制をして住宅開発が減ったわけですが、正に「規制」ラッシュです。
ハワイの規制の行方
ハワイのこの法律も、外国人の購入意欲を削ぐことになれば、開発は減るでしょう。外国人市場が減れば、高級コンドの開発は鈍ると思われますので、これも逆効果になる可能性ありです。一般市民は高級コンドにはどうせ住めないから、関係ないと思うかもしれませんが、現在は、高級コンドを開発する場合、お手頃価格のものも開発しなければならないことになっています。つまり、高級コンドの開発が減れば、お手頃コンドの開発も減るということです。
規制したほうがうまく行くものと、しない方が良いものとの識別は、簡単ではありませんが、この法律がハワイの住宅難の解決になるとは思えません。古い家を解体して、一区画に2戸建てたらどうかという日本人の質問を聞いて、小ばかにしていた私ですが、このアイデア、まんざらでもなさそうです。