Youtubeで不動産コラムをながら聴き

ジローのゼスティメートがファンタジーからリアリティーに?ゼスティメートの評価額で物件オーナーに購入オファー

AIの物件評価ゼスティメートは信頼出来るのか

 米国最大の物件サイトであるジローには、ゼスティメートと呼ばれる物件評価があります。これが如何に頼りないかに関しては、ジローに関するブログだけでなく、実際の物件を使って何度か例を挙げました。1週間ほど前にも、そのようなブログを書いたばかりなのですが、その時には、ジローが転売のために物件を購入する際は、結局鑑定士の評価に基づいてオファーをすると書いたばかりです。

ジロー(Zillow)は不動産仲介業のロビンフッドになれるか

ゼスティメート評価額で買い取りして収益が上がったというのは本当か

ところが、そのジローがゼスティメートの評価額で実際に物件を買うと発表したのです。ジローが転売目的で物件を購入する市場は、まだ限られていますが、それらの市場においては、誰でも、サイトで自分の家のゼスティメートを見て、その額が気に入ったら、その額でジローが買い取ってくれるというのです。

同時に、2020年第4四半期は、この転売サービスで初めて収益が上がったという報告がありました。これらの発表を見ると、いよいよ夢が現実になってきたと言う感じですが、本当かな?

ジローの利益は大きくない

まず、去年の第4四半期の収支から見てみましょう。1戸当たり$19,206の収益があったそうですが、これは、取得費用、売却費用、修理費、金利など、全ての費用を引いた後の利益です。これを見てもわかるように、日本の業者がやっているような転売に比べると、大した額ではありません。ジローによると、米国の住宅の中央値は$266,222で、日本よりかなり高いことが分かりますが、だとすれば大した儲けではないことが分かります。ジローが参入しているのは、大きな市場が多いので、中央値はさらに高いでしょう。

ジローのビジネスモデルとは

しかし、ジローの再販モデルは、いかに安く仕入れていかに高く売るかということではなく、薄利多売ですので、意外に多く儲けているという気さえします。その理由をいくつか挙げてみましょう。

ひとつは、エスクローや権原保険などのサービスを一括で提供していることです。つまり、$19,206には、従来の仲介業者の収益以外のものも含まれているということです。もう一つは、ビジネスモデルの調整で、どの程度まで修理費をかけるのが最も費用対効果が良いかなどの微調整が進んだことです。

しかし、最大の原因は、2020年の第4四半期の不動産市場が、非常に良かったということです。$266,222という中央値も、前年比で8.4%も上がっています。(ちなみに2021年は10.5%も上がるという予想ですので、早く買った方がいいですよ。)つまり、2020年第4四半期はだれもが儲けたわけで、ジローだけの手柄ではありません。不動産市場が落ち着いてきたら、ジローの1戸当たりの収益も減るでしょう。

ジローは将来に投資しているのか

もう一つの指摘は、$19,206という1戸当たりの利益に、直接費は含まれていますが、間接費は含まれていないということです。つまり、1戸当たり2万ドルくらい儲けても、会社全体としては儲かっていないということです。これは正当な指摘ではありますが、アマゾンだってそういう時期がかなり続きました。それは、仕方なくしたことではなく、将来への投資に大金を使って成功したのです。ジローが儲けるためのビジネスモデルはまだ確立されていませんが、新経済では、この賭けをしないで成功する会社はないのでは?

グレン・サンフォード氏の言い分とジローの反論

ジローの発表にもう一人ケチをつけた人がいます。eXpのCEOグレン・サンフォード氏です。eXp自体、転売ビジネスを始めましたが、ジローを利用した売主は、従来の仲介業者を通して売るより、正味売却益が$1.5~2万低いと述べ、それを計算したエクセルシートを載せて、FBで攻撃。数字なんてどうにでもなるので、果たしてこのエクセルの数が正しいのかどうかは私にはわかりません。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/11nKJB2m3Euwr1wZxED-3Nmtgd2zJgudKpSjgVDGfMsU/edit?fbclid=IwAR2DcOO8WLvkDxy2brf97PBh_wqZoMo_CUjZnu3z2VFBQigqETe0F7nWGU8#gid=0

これに応戦したのがジローの最高事業開発責任者エロル・サミュエルソン氏。ジローのオファーを蹴って従来の仲介業者を通して売った6,300戸の住宅は、平均0.09%しか高く売れていないとのこと。自宅を売って次の家を買うまでの間、共益費、ローンの支払い、家賃など、様々な経費をなくすことができ、さらにジローが自宅売却に必要な手続きをすべてやってくれることを計算に入れるべきだという反論です。第三者の客観的な意見が聞きたいところですね。

最終的には人間が決める

話を肝心のゼスティメートに戻しますが、これは全くの期待外れ。ジローに買ってくれと申し出ても、必ずしもゼスティメートの評価額で買ってくれるわけではなく、最終的には次郎さんと交渉して決まります。通常、米国では、オファー自体が売買契約書ですので、オファーを受け入れた時点で成約です。ゼスティメートの評価額がオファーであると言うと、売主がそれを受け入れると同時に契約が成立という印象を与えますが、そんなことはありません。最終的に人間が決めるのであれば、今までと同じです。私はジローの株に少々投資していますが、それほど喜ぶべきニュースではなさそうです。

参考 Zillow is taking the Zestimate from ‘fantasy to reality’inman 参考 Zillow is testing a closing services platforminman 参考 Zillow and Opendoor, be transparent about iBuyer profitability: DelPreteinman 参考 Don't blame Zillow, blame your leadersinman 参考 EXp CEO Glenn Sanford questions consumer benefit of Zillow Offersinman 参考 The Cost of Zillow Offers vs. a Traditional SaleZillow Group