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コロナ救済措置が終わり住宅供給ショック到来?:問題はその規模

 

コロナ過の住宅ローンの滞納によって差し押さえ物件が増え、超安値で家が買えるのではないかと期待している人もいるかもしれませんが、救済策がいつまで続くか明確でなかったため、予測が困難でした。しかし、救済プログラムが9月30日に新規受付を終了し、現在保護されているマイホームのオーナーたちへの援助の漸減の見通しも立ちましたので、今日は、複数の記事や資料を基に、救済終了の今後の影響を解説します。

COVID困窮者救済プログラム

2008年のリーマンショックのときは、もっとマイホームのオーナーを援助するべきであったというのが、多くの経済学者、また民主・共和両党の政治家の意見です。そのため、今回のパンデミックにおいては、2020年3月、COVID困窮者救済プログラムが制定され、マイホームローンの支払いができなくなった人は、それを延期することができるようになりました。

消費者金融保護局の救済策に関するサイト

 

このプログラムは、何度か更新されましたが、2021年9月30日で終了しました。となると、差し押さえ物件が激増すると思うかもしれませんが、そんなことはありません。リーマンショックでは、多くの不動産の価格がローン残高以下に下がりましたが、今回は値上がりしていますので、マイホームを売ってローンを完済すればよいだけなのです。

差押えを防ぐための政策を伝えるホワイトハウスのサイト

救済プログラムが終了するとどうなる??

 一時は720万ものマイホームのオーナーがこのプログラムによって守られていましたが、現在は約150万まで減少しました。ちなみに、全国のマイホームの数は8000万戸です。問題は、150万戸のうち何%が売りに出されるかです。NAR(全米不動産協会)の調べによると、2021年8月現在、米国の売出物件の在庫は130万戸にすぎません。それが一挙に増えると、今までの売り手市場が逆転し、住宅価格は下がるのでしょうか。

NARの2021年8月の統計サイト

 

しかし、仮にこのプログラムで守られているオーナー全員がマイホームを売りに出したとしても、一度に全部が市場に出るわけではありません。10月以降、新しくこのプログラムに申し込むことはできませんが、既に保護されているマイホームのオーナーは、保護期間が切れる順に出ることになり、9月30日の時点で支払いを再開しなければならない人は、45.2万人です。10月は28.7万人で、グラフを見てもわかるように、徐々に減少して、2022年には完全に終わる予定です。

住宅ローン救済策の保護が終わる月別戸数(フォーチュン誌)

 

また、全員が家を売りに出すわけではありません。収入が回復した人は、その時点で支払いを再開すればよいだけで、滞納分はローン完済時に付け足されます。ジローの経済学者、クリス・グリン氏は、過去の実績に基づいて、25%のオーナーが売りに出すと推定しています。だとすると、この秋に211,700戸ほど売りに出るということになります。現在の在庫が130万戸であり、しかもそれが歴史的に最低レベルであることを考えると、むしろ好ましいことかもしれません。

過去30年間の住宅ローン金利の推移

過去最低金利がマイホーム購入を後押し

 パンデミックで、金利は過去最低になり、初めてマイホームを購入する年代層の人口が多く(コロナ過では約3割が初めての購入)、在宅勤務が可能になって郊外や田舎にマイホームを購入する人が増え、機関投資家も戸建に投資をするようになり、2020年4月から2021年4月までの1年間で、売出物件の在庫は53%も減少しました。それ以降、30%回復しましたが、100%-53%+30%=77%ではありません。100-53=47で、47の30%増えたのですから、回復したのは47×30%=14.1で、2020年の4月を100とすると、47+14.1=61.1にすぎません。

売りに出る物件が10、25、50%とした場合の戸数と、それが在庫何か月分にあたるか

 逆算すると、2020年4月からの在庫減少は、80万戸余りになります。2021年9月30日時点でこのプログラムを利用して滞納している物件150万戸の半分が売りに出ると、去年のレベルに戻りますが、前述したように、一度に全部売りに出るわけではありません。ジローは、半分が売りに出されると市場に悪影響があると予想しています。

住宅供給ショックは起こるのか

 パンデミックが始まって以来、住宅価格は24%上昇し、過去1年だけを見ても17%の上昇率です。夏から秋にかけては、夏休みと新学期で、住宅市場が落ち着く季節です。金利は今2.87%ですが、来年末には3.7%まで上昇し、向こう1年間の住宅価格の上昇率は、3.2%だと言われています。誰も今のペースで住宅価格が上がり続けると思っている人はいないと思いますが、在庫がだぶついて不動産価格が下がるほどの影響があるとは思えません。

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 今日は、複数の記事や資料を基に、COVID救済策終了の今後の影響を解説しました。このチャンネルではハワイの物件情報や、アメリカ・ハワイの不動産マーケットの情報をお届けしています。アメリカの不動産に興味のある方、ハワイで不動産を持ちたい方は是非チャンネル登録をお願いします。

コロナ救済策終了で住宅供給ショック到来か:問題はその規模
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