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ホノルル市議会バケーション・レンタル禁止法案可決(ホノルル・シヴィル・ビート2022年4月13日)

 オアフ島バケーション・レンタルの法改正があるかもしれないことや、それがノースショアやワイキキなどのバケーション・レンタル物件にどのような影響を与えるかについては、今までにもブログに書きました。2022年4月13日に可決されましたので、解説させていただきます。

 2019年の法改正で、リゾート地域と、その近辺の指定された場所以外、で、30日未満のバケーション・レンタルをすることができなくなりました。できるのはワイキキのクヒオ通りより南側、コオリナとタートルベイ近辺の一部の地域のみです。

 オアフ島の住宅リースは最短30日ですので、それ以上なら続けることができたのです。欧米人のバケーションは長いので、2~3週間ハワイでバケーションを取りたい人は、バケーション・レンタルを1か月借りたほうが、ホテルに2~3週間泊るより安いのです。

 違反者は厳しく罰せられる予定だったのですが、この法律は結局施行されず、違法レンタルは横行していました。市は、取り締まりのために7人雇用する予定でしたが、その予算を組まなかったのです。また、2021年に市長になったブランジアーディ氏は、リゾート地域外のバケーション・レンタルを止めさせると宣言しました。ホノルル都市計画建築許可局長のディーン・ウチダ氏が先頭を切って、禁止案が提案されたのです。

 当初は、最低リース期間を180日にするという案でしたが、ホノルル住民でもそれより短い期間のリースが必要になることがありますので、90日に短縮されました。90日ものバケーションを取る人はいませんので、バケーション・レンタルを禁止するには十分に有効だというわけです。しかし、観光客でなくても90日未満のリースが必要になることはありますので、反対派はそれでも長すぎると主張しています。

コンドホテルの一室を持っているオーナーは、AirB&Bを使って自分で管理したり、バケーション・レンタル専門の管理会社に管理してもらったりしています。しかし、そのコンドホテルを運営しているホテル会社に、ホテルの一室として運用してもらわなければならないという案も、この法案に含まれていました。しかし、これは法案の意図と関係ないということで、外されました。

 法案の意図とは何でしょうか。一つは、住宅地域を観光客から守るということです。同じようなことが日本でも問題になりましたのでご理解できると思いますが、近所の家やマンションの一室に次から次へと観光客が泊まりに来たのでは、うるさくてたまりません。もう一つの理由は、ホノルルの住宅難の緩和です。バケーション・レンタルとして使えなくなると、住民に賃貸するよりほかないので、少しは緩和されるだろうというわけです。

ホテルと市の癒着?

 オアフ島では、90年代からホテルはあまり増えていません。新しく開発されたホテルの多くはコンドホテルで、オーナーがバケーション・レンタルとして運用することもあれば、別荘として使う、あるいは自分が住む人もいます。しかし、観光客は増えています。観光客が増えてもホテルがそれほど増えないのは、バケーション・レンタルが増えたからです。

 この法律は、バケーション・レンタルが減るので、ホテル業界に有利です。それだけでなく、合法的に運営を継続できるバケーション・レンタルは、ホテルは払わなくてもよい登録料を市に支払わなければならなくなります。

 しかも、ディーン・ウチダ氏の妻が、ワイキキの幾つものホテルを運営しているアクア・アストン・ホスピタリティーの重役ですので、癒着を疑われても仕方がありません。それどころか、例外扱いになったリゾート地域外のワイキキ・サンセットとワイキキ・バニアンが、両方ともアクア・アストン・ホスピタリティーによって運営されているのです。この法律によると、ホテル営業もできなくなるはずですので、怪しまれても仕方がない。

 結局ウチダ氏は、利益相反ではないかとホノルル倫理委員会にクレームがあり、本件に関しては忌避することに。もともと市議会とヒアリングをしたり法案の提案をしたりするのは、ホノルル都市計画委員会の仕事で、ウチダ氏の仕事ではありません。

 ローリー・ウォン・ノウィンスキー市議は、ウチダ氏の妻の雇用条件は本法案に左右されないので、ウチダ氏は間接的な利害関係しかなく、法律違反ではないとのこと。しかし、市とウチダ氏の評判を傷つけないために、十二分な注意を払って忌避を勧めたと述べています。

 確かに法案が通らなくても妻が首になることはないでしょうが、それで利益相反がないということにはならないでしょう。この法案が通れば、ホテル業界、特にアストンが助かることは火を見るより明らか。十二分に注意を払わなくても、そのくらいのことは分かりそうなものです。

影響は?

 この法律は半年後に施行されます。バケーション・レンタルができなくなる物件は、売りに出されるものもあるでしょう。パンデミックでローンが払えない投資物件の多くは既に売られていると思いますので、この法改正が原因でどれだけ新たに売りに出るかは、まだわかりません。

 打撃を受けるのはバケーション・レンタル業界だけではありません。サーフィンで世界的に有名なノースショアには、宿泊施設がほとんどなくなります。サーフィンの大会に来る人が、毎日ワイキキからノースショアまで運転して行くのは非常に困難です。海岸に沿った一本道は、大会中、大混雑です。私も一度日本から来たお友達を連れて行ったことがありましたが、彼は途中で降りて歩き始めました。そのほうが早いくらい混むのです。

 これはどの報道を見ても書いてないのでわかりませんが、90日未満のホームステイも違法とみなされるかもしれません。

 

私がどう思うかはどうでもいいですが…

 近隣を守りたいという住民の気持ちは分かります。しかし、2019年の法改正は、そのための法律であったはずです。それにもかかわらず、それを施行しないで法改正をするのはどうでしょうか。違法バケーション・レンタルを取り締まることによって、住宅難も少しは緩和されたかもしれません。

 住宅難は大きな問題で、この法改正によって、既存法を施行する以上に効果があることは分かります。しかし、ハワイの住宅難の最も大きな理由は、規制だと思います。規制については、ここで扱うと長くなり過ぎますし、今までにもブログを書きましたので、控えたいと思います。規制は、何らかの予想しなかった結果を生み、それを是正するためにさらに規制をしなければならなくなることがよくあります。今回の法改正も、その一つの例かもしれません。

 バケーション・レンタルができる物件が減りますので、そのような物件の価値は上がるかもしれません。しかし、登録費が設けられただけでなく、また法律がどう変わるかわからないというリスクもあります。

 原案では、リゾート地域のコンドホテルは、すべてホテル運営会社の下でホテルの一室として運営しなければならないということでした。そうなったら、コンドホテルの収益は激減するでしょう。法案の目的とは関係ないし、ウチダ氏の疑惑もありますので、別の法案として復活するということはないと思います。政治が裏でどうなっているかは、よくわかりません。

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ホノルル市議会バケーション・レンタル禁止法案可決
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