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正直不動産第9話:利回り

 登坂不動産で営業トップの永瀬財地(山下智久)は、詐欺まがいの商法で成績を上げてきました。ところが、ある日突然、たたりで嘘がつけなくなり、成績が急降下。第9話では、いよいよドラマもクライマックスを控えて、盛り上がってきます。

 登坂不動産の業績は、競合ミネルヴァ不動産の工作により、悪化の一途をたどります。その裏には、ミネルヴァ不動産鵤社長と、登坂不動産登坂社長との、数十年に渡る因縁があり、永瀬も否応なしに騒動の渦へと巻き込まれていきます。そんな中、長瀬の部下、月下も、ミネルヴァ不動産の営業社員・花澤涼子と、富士山が見える物件をめぐって対峙することに。

 ま、その辺は見逃し配信を見て、楽しんでください。今回のビデオで注目したいのは、怪しいセミナーに出て不動産投資を理解したと思い込んでいる変なお兄ちゃん。やたらと英語を使いたがるかぶれたキャラですが、利回り10%の5,000万円の物件を探してくれというのです。長瀬は、そんな物件などあり得ないとぼやくのですが、テロップにその説明が出ます。

500万÷5,000万=0.1(10%)

 5,000万円の物件を買って、年間500万円の家賃収入があれば、500万÷5,000万=0.1で利回り10%です。これを表面利回りと呼びますが、通常、日本の不動産業界で利回りというと、この表面利回りのことです。月の家賃にすると、約42万円になります。確かに、5,000万円の物件で家賃月42万円は難しいです。

 しかし、表面利回りはあまり役に立つ数字ではありません。満室賃料で、すべてのユニットが年間12か月稼働しているという前提です。空室になると、家賃は入りません。また、稼働していても、必ずしも入居者が家賃を払ってくれるわけではありません。つまり、空室損だけでなく、未回収損もあるかもしれません。

 それだけではありません。不動産投資には必ず運営費がかかります。修理の必要が全くなかったとしても、固定資産税や保険は必ず必要です。管理会社に頼めばもちろん管理費を取られますし、分譲マンションであれば共益費がかかります。

 最後に、税金です。不動産投資は、建物の価値を減価償却できますので、特に高額所得者の場合、赤字でなくても節税できる、あるいは繰り延べられることはあります。これは、投資家によって異なりますので、今回は計算に入れないことにしましょう。

 さて、5,000万円の物件を買って、どれだけの支出があるかは、物件次第ですが、具体的な話を始める前に、このお兄ちゃんが探している10%ではなく、もう少し現実的な数にしましょう。家賃が月25万円なら、年間300万円で、表面利回りは6%です。これでもいい方です。

25万円×12か月=300万円
300万円÷5,000万円=6%

 しかし、実際には、空室や未回収損もあり、運営費もかかります。空室損や運営費などは、場所や建物の種類などによって違いますが、年間50万円だとしましょう。すると、手元に残る営業純利益は年間250万円で、250万÷5,000万円=5%です。これを、キャップレートと言いますが、総収益率(OAR = Over All Rate)やFCR(Free and Clear Rate)と呼ばれることもあります。

300万円(収入)-50万円(運営費等)=250万円
250万÷5,000万円(物件価格)=5%

 さらに、ローンの支払いをこれから引きましょう。20%の頭金1,000万円で、残りの4,000万円借りたとしましょう。金利2%で35年ローンなら、毎月の支払いが132,505円で、年間で1,590,060円になります。2,500,000-1,590,060=909,940円が毎年のキャッシュフローです。

5,000万円(物件価値)×20%=1,000万円(頭金)
5,000万円-1,000万円=4,000万円(ローン)
金利2%、35年ローン、毎月の支払い=132,505円
132,505円×12か月=1,590,060円(年間支払額)

2,500,000-1,590,060=909,940円

 これを率で表す場合は、購入価格の5,000万円で割るのではなく、頭金の1,000万で割りますので、9.1%になります。これを、キャッシュオンキャッシュ収益率(cash-on-cash rate of return)、投資利益率(ROI = Return On Investment)、自己資本収益率(ROE = Return On Equity)などと呼びます。キャッシュオンキャッシュは、自分が投資している額の何%のリターンがあるかを計算するものです。

909,940円÷1,000,000万円(頭金)=9.1%

 ここまでをまとめると、通常日本で使われる利回り、つまり表面利回りでは、実際の利回りがわかりません。運営費を計算に入れて出したのがキャップレートで、これがその物件の実際の利回りです。

 さらに、どのような条件のローンを借りるかは、その投資家次第です。投資家が自分のお金をどれだけ投資して、どのような条件のローンを借り、その結果リターンがいくらあるかを計算したのがキャッシュオンキャッシュです。ですから、これは物件の利回りではなく、その投資の利回りです。同じ物件を買っても、ローンの条件次第で、キャッシュオンキャッシュは変わります。

 この例では、キャップレートが5%で、キャッシュオンキャッシュが9.1%ですから、ローンを借りることによって利回りは上がりました。これは、キャップレートに比べてローンの金利がかなり安いのでこうなったわけです。金利が高い、あるいはローン期間が短い、あるいはキャップレートが低いなどの理由で、キャッシュオンキャッシュがキャップレートより減ることもあります。

 例えば、同じ金利でも、ローンが25年だとしましょう。毎月の支払いは169,542円になり、年間では2,034,504になります。キャッシュフローは、2,500,000-2,034,504=465,496円で、キャッシュオンキャッシュは4.65%になり、キャップレートより低くなります。このような場合は、一概には言えませんが、ローンを借りないほうがいいかもしれません。

ローン期間25年の毎月の支払いは169,542円
169,542円×12か月=2,034,504
2,500,000-2,034,504=465,496円
465,496円÷1,000,000円(頭金)=4.65%

 そこでですが、地方の物件と比べるとどうでしょうか。地方なら、同じ年間300万円の満室賃料の物件が、3,000万円くらいで買えるかもしれません。これなら、表面利回り10%です。運営費は東京でも地方でも、基本的には同じですが、北国では雪かきなど、余分な費用が掛かります。また、人口が減っていますので、空室損は増えます。空室損と運営費が100万円だとすると、営業純利益が200万になり、キャップレートは200万÷3,000万=6.67%になります。

300万円÷3,000万円=表面利回り10%

空室損と運営費=100万円
300万円(満室賃料)-100万円=200万円
キャップレート=200万円÷3,000万円=6.67%

 20%、600万円の頭金で35年ローンを借りるとすると、ローンの額は2,400万で、支払いは79,503円、年間で954,036円です。キャッシュフローは2,000,000-954,036=1,045,964円で、キャッシュオンキャッシュは1,045,964÷6,000,000=17.43%にもなります。だったら田舎の方がいいじゃないかと思うかもしれませんが、本当にそうなるかどうかを知るカギは、長瀬がこのあんちゃんにした質問にあります。

20%、600万円の頭金、35年ローン
ローン額2,400万、支払い79,503円
79,503円×12か月=954,036円

2,000,000円-954,036円=1,045,964円
1,045,964÷6,000,000=17.43%

 投資の目的はインカムですかキャピタルですかと聞かれて、あんちゃんはインカムと答えるのですが、それは毎年のキャッシュフローが多いほうがいいという意味です。キャピタルとは物件の価値の上昇です。しかし、ご説明したように、東京ではキャピタルは期待できても、インカムはそう高くはありません。

インカムとキャピタルの両方を計算した収益率を、内部収益率(IRR = Internal Rate of Return)と呼びます。この計算はちょっと複雑ですが、やってみましょう。

また、今までの計算は、計算を簡単にするため、取得費用を計算に入れていませんでした。表面利回りやキャップレートの計算には、取得費用を入れないこともよくあります。しかし、IRRの計算には、取得費用だけでなく、売却費用も必要です。両方とも無視すると、計算結果が実際よりかなり高くなりますので、計算に入れましょう。

取得費用は、東京の物件が価格の6%、地方の物件が12%ということにしましょう。首都圏は評価額と市場価値の乖離が大きいのですが、取得費の中には評価額に基づいて計算されるものがあるので、割安になります。実際の取得費は、かなりばらつきがありますが、売却費はほぼ一定で、3.3%で計算しましょう。

5年後に売るという前提で、東京の5,000万の物件は5,200万で売れ、地方の3,000万の物件は2,800万で売れるとします。

 例に挙げた東京の物件の場合、1,000万円+300万円(5,000万円×6%)=1,300万円の初期投資で、毎年909,940円のキャッシュフローがあります。5年後に5,200万円で売れたとすると、売却手取り金は、52,000,000円-1,716,000円(売却費用)-35,849,060円(ローン残高)=14,434,940円です。内部収益率は8.85%になり、投資したお金が、毎年8.85%の複利で増えていくという意味です。

0            (13,000,000)

1            909,940

2            909,940

3            909,940

4            909,940

5            909,940 + 14,434,940 = 15,344,880

 地方の物件の場合は、600万円+360万円(3,000万円×12%)=9,600,000万円の初期投資で、毎年1,045,964円のキャッシュフローがあります。5年後に2,800万円で売れ、売却費用は2,800万×3.3%=924,000円です。売却手取り金は、28,000,000円-924,000円(売却費用)-21,509,436(ローン残高)=5,566,564円です。IRR2.98%です。

0            (9,600,000)

1            1,045,964

2            1,045,964

3            1,045,964

4            1,045,964

5            1,045,964 + 5,566,564 = 6,612,528

 これは、単なる例で、東京の物件の方がいいと言っているわけではありません。検討なさっている物件が本当に良いかどうかは、一つ一つ調べてみるよりほかありません。このような分析を依頼したい方は、正直不動産のアーバンレックにお問い合わせください。

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