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公正住宅法と米国障害者法:知らないで犯していませんか?

 米国では州が不動産の資格を出します。その資格を維持するためには、継続教育を受けなければなりません。州の資格ですので、継続教育は州内の法人が提供することが多いのですが、複数の州の継続教育授業をオンラインで提供している会社もあります。その一つであるエクシードCEから、ハワイ州で始める継続教育の教材の監修校正を頼まれ、いくつかの授業を見直しているところです。

 その中に、公正住宅法や米国障害者法など、不動産業者だけでなく、投資家や消費者にとっても興味深い授業がありますので、ごく簡単にご紹介したいと思います。公正住宅法とはアメリカの住宅購入・賃貸取引において、人種・宗教・性別・出身国・身体的障害・家族構成等で、差別をしてはならないという、アメリカ不動産取引における差別を禁ずる法律です。また米国障害者法は、障害者の差別禁止、及び障害者が他者と同じくアメリカでの生活を営むことができる機会を保証する公民権法です。

 このような法律は、日本より米国の方が、整備が進んでいますので、日本人の皆さんから見ると、ちょっと驚くような内容もあると思います。詳しくは、授業を取ってくださいと言いたいところですが、残念ながらすべて英語です。

 授業の試験問題を10問選んで、内容を少し変えて出題しますので、試しにやってみてください。7問以上正解なら合格です。さて皆さん、パスできるでしょうか。

1.障害のある方のために、オーナーがしなくてもよいのは、以下のどれですか。

 A バスルームに取手を取り付ける。

 B 玄関のドアにのぞき穴をつける。

 C 流しの下のキャビネットのドアを除去する。

 D 要請があれば、妥当な範囲でこれらすべてをしなければならない。

 これはちょっとトリッキーな質問ですが、正解はDです。難聴の方は、訪問者の声が聞こえにくいので、誰が来たのかわかりません。のぞき穴をつけるのはそのためです。車いすを使う方は、車いすに乗ったまま作業ができるように、キャビネットのドアを取り除く必要があります。

2.最近車いすを使うようになった方が、アパートの入り口に傾斜路をつけてほしいとオーナーに申し出ました。アパートのオーナーは、費用よりも、見栄えが良くないので、設置したくありません。どうすればよいでしょうか。

 A オーナーの費用で傾斜路をつけ、退去後、オーナーの費用で除去する。

 B テナントの費用で傾斜路をつけ、退去後、オーナーの費用で除去する。

 C テナントの費用で傾斜路をつけ、退去後、テナントの費用で除去する。

 D 設置義務があるのは、テナントが住んでいるユニット内だけで、共用部分を改装する義務はない。

 まず、要請が妥当なものである限り、設置しないという選択はありません。この場合、物理的に設置場所がないなどの正当な理由がない限り、断ることはできません。費用はすべてテナント持ちです。ですから、あまりにも費用のかかる工事をテナントが強要することはなく、法律的にも、妥当な範囲の改装に限られています。テナントが退去した後、除去する必要はありませんが、除去したい場合は、除去費用もテナントが出します。答はCです。

3.あるアパートのオーナーが、テナントの一人がエイズ患者であったことを知り、管理士に退去させろと言いました。管理士はどう答えればよいでしょうか。

 A エイズ患者は障害者ではないので米国障害者法で守られてはいない。

 B 医者に連絡して判断を仰ぐ。

 C エイズ患者は障害者とみなされるので、退去させることは差別になる。

 D テナントがエイズであることを隠して入居したので、退去させられる。

 米国障害者法では、エイズ患者、アルコール依存症などは障害とみなされますので、それを理由に退去させたり、解雇したりすることはできません。実は、私は大学院でアルコール依存に関する授業を取ったことがあり、糖尿病のように体質の影響が大きいことを知りました。人種によっても、依存症になりやすい人種とそうでない人種があり、米国ではエスキモーやアメリカインデアンは、なりやすい体質だそうです。

 もちろん、職場でいつも飲んで、仕事に支障がある場合などは解雇できますし、アパートでいつも騒いだり物を壊したりする人は、退去させることができます。しかし、エイズやアル中であるという理由だけでは退去させたり、賃貸を断ったりすることは違法です。答はCです。

4.高級住宅街にある市が、コミュニティーのステータスを維持するために、いくつかの条例を作りました。その一つは、発達障害のある人たちのグループホームを市内に作ることを禁じるものです。投票で決めたことですが、施行可能でしょうか。

 A 条例が連邦法に反しているので、不可能。

 B 投票で決めたことだから、可能。

 C 地元の法律に反しているので、不可能。

 D 土地利用法は連邦法より優先されるので、可能。

 答はAです。ちなみに、私が以前住んでいた6LDKは、子供たちが巣立って行って空き部屋が増えましたので、息子が働いているチャリティー団体に、ホームレスシェルターとして貸しました。ホノルルの法律では、家族親族以外の人が4人以上一緒に住むことは違法ですが、この条例は、シェルターやグループホームなどには適用されません。

5.ユダヤ人が多い地域の売家に満額のオファーがありましたが、売主は、買主がユダヤ人ではないので、住み心地が悪いのではないかと心配し、断りました。これは差別になりますか。

 A 宗教、人種、肌の色などを理由とした差別とみなされる。

 B 売主は、ユダヤ人が多いということを知らないかもしれない買主のことを思ってやったことなので、差別にはならない。

 良かれと思ってやったことでも差別になりますので、答はAです。では逆の場合はどうでしょうか。

6.中国系の夫婦が、不動産業者に、中国人が多い地域に家を買いたいと告げました。業者はどうするべきでしょうか。

 A 不動産業者は、依頼人の代理ですので、依頼人が住みたい地域の家を探すべき。

 B 不動産業者は、依頼人に、他にもいい場所があることを説得するべき。

 C 不動産業者は、この夫婦の依頼を受け入れることは違法なので、断るべき。

 実際にあった話をしましょう。メインランドのある学校に、二人の新しい先生が赴任してきました。一人は白人、もう一人はメキシコ系でした。偶然、二人は同じ不動産業者を雇って、新居を購入しました。業者は、メキシコ系の先生に、メキシコ系住民が多い地域の家を紹介し、先生はその中の一つを購入しました。この先生は、白人の先生が同じ業者から白人街の家を買ったことを知り、業者を人種差別で訴え、勝訴しました。

 このメキシコ系の先生は、自分がメキシコ人街に住みたいと思っていたのですが、業者にそう言ったわけではありません。メキシコ人街の家しか見せてくれなかったことが違法だとみなされたのです。仮に本人がメキシコ人街に住みたいと言っても、メキシコ人街の家しか見せないことは違法です。答はCです。

 私は法律の専門家ではありませんのではっきりしたことは言えませんが、中国人が多い地域の家を探すのは違法でも、例えばチャイナタウンの家を探すのは違法ではないでしょう。私もホノルルのチャイナタウンに住んでいますが、それは場所が便利だからで、自分が中国人だからではありません。いくらなんでも、ダウンタウンのコンドを買いたいというのが合法で、チャイナタウンが違法と言うことはないと思います。

7.連邦法によると、以下の情報の中で、銀行がローンの審査に使って差し支えないものはどれですか。

 A 出身国

 B 家族関係

 C 障害

 D ビザ

 銀行は、ローンを申し込んだ人がローンを返済するのに十分な滞在期間があるかどうかを検討することができます。答はDです。

8.レストランは、喫煙者同様、車いすのお客さんに特定の場所に座ってもらうことができますか。

 A いいえ、米国障害者法は、このような差別を禁じています。

 B はい、レストランは私有のビジネスですので、このような規則を作ることは自由です。

 米国障害者法は、これを認めていません。日本のようにレストランが狭いと、好きな席に座ってもらうことは難しいかもしれませんが、米国では場所を指定することはできません。答はAですので、レストランを開きたい人はご注意。

9.売家や貸家の宣伝に使うべきではない表現は以下のどれですか。

 A 家族向け

 B カトリック教会が近い

 C 近くに運動施設のある公園があり、スポーツ好きな人には最適

 D 上記のすべて

 Aは家族でない人に対する差別とみなされます。Bは宗教的差別とみなされます。House of worship(礼拝所)という特定の宗教に限られない言葉を使うことは合法です。Cは障害者に対する差別とみなされますが、公園があること自体は宣伝してかまいません。したがって、答はDです。

 日本では、ファミリー向けなどと言う宣伝文句を使うことが多いですが、実はこれは米国でも徹底されておらず、こういうキャッチフレーズを見かけることは多いです。売主や大家さんは気を付けてください。

10.以下で、公正住宅法の保護対象となる家族構成はどれですか。

 A 大人と、近親関係はないがその大人が扶養権を持っている子供

 B 祖父母と、扶養権を持っていない孫

 C 18歳以上の子供と同居する親

 D AとB

 答はAです。里親などがこれにあたります。

 私たち家族が30年前にハワイに引っ越した時、アパートを見つけるまで、知り合いの不動産屋のご厚意で、短期間ワイキキのコンドをリースしたことがありました。すぐにアパートを見つけ、管理士も肯定的な返事をしてくれました。

 その翌日、管理士から電話があり、小さな子供が二人いるので賃貸したくないとオーナーに言われた、というのです。知り合いの不動産業者から、これは公正住宅法違反だと言われましたが、訴えることはしませんでした。私も大分アメリカナイズされましたので、今ならするかもしれませんが、残念ながら子供たちはもう18歳以上です。

 公正住宅法から逃れる方法を一つ。4戸までの住居を購入し、自分がその一つに住んで他のユニットを貸す場合は、公正住宅法が適用されません。しかし、守らなければならない法律は公正住宅法だけではありませんので、何をやってもいいということにはなりません。米国では、このような小さな物件を購入して自主管理しているオーナーが多く、彼らにこの法律を勉強させて順守させるのは困難だということでしょうか。

 それ以外にも、4戸までなら「優遇」されることがあります。例えば、融資は、投資ローンではなく、金利の低い住宅ローンを出してもらうことが可能です。初心者にはいい投資だと思いますが、日本の投資家は自分が住むわけではありませんし、ローンを借りることも少ないので、あまり関係ありません。

 皆さんも、差別をされたときには、自分にどのような権利があるかを知ってください。また、投資家の方は差別しないように気を付けてください。日本では、差別が横行していますが、米国では許されません。

 オウム真理教のサリン事件があったとき、私の知り合いは、クリスチャンであることを理由に退去させられました。オーナーにとっては、キリスト教もオウム真理教も、関係なかったのですが、こういうことは米国では考えられません。

 また、部落民や外国人、特に朝鮮人に対する差別はひどいものです。弊社では、朝鮮人が経営するパチンコ店が入っているビルを売りに出したことがあり、キャップレート(表面利回りではなく実質利回り)が10%と言うとんでもなく条件の良い物件でした。すぐに買い手が見つかったのですが、銀行から融資が出なくて断念。これが3回続いて、最後には現金購入の投資家に売却しました。経営者の方は、売却後まもなく、韓国籍に変えました。この体験が理由ではなかったかと思われます。

 米国の賠償金は日本とは桁が違いますので、このような差別にはくれぐれもご注意ください。

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公正住宅法と米国障害者法:投資家の皆さん、知らないで法律を犯しているのでは?
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