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売主にも買主にも人気の、住宅ローンの金利を下げる方法

 最近の金利の上昇で、ローンが借りられなくなっている買主が増えています。ホノルルで百万ドルの物件を買うとしましょう。頭金は20%で$20万、ローンは$80万だとします。30年ローンで金利6.875%なら毎月の支払いは$5,255.43です。しかし、買主が借りることのできるローンの支払いが月$5,000までだったら、どうしますか。

 米国のローンにはポイントと言うものがあります。1ポイントはローンの額の1%。住宅ローンには、必ずこのポイントがいくらであるか書いてあり、その額をローンが出る日に支払わなければなりません。

 ポイントはローンの手数料だと思っている人もいますが、手数料は別に取られます。これは前払いの金利です。1970年代後半、金利があまりにも高くなり、これではだれも借りてくれないのではないかと案じた銀行が、ポイントをチャージする代わりに金利を下げたのがその始まりです。

 これは狡猾な手段でした。というのは、前払いですので、1カ月後に完済しても、30年かけて完済しても、ポイントの額は同じです。米国では、金利が下がるとローンを借り換えますので、ほとんどのバイヤーが数年のうちに借り換えるだろうと言うことを計算に入れたかけでした。通常、7~10年で借り換える、あるいは物件を売って、完済します。当時は金利が急騰していましたので、近い将来下がって、借り換える人が増えるだろうと言うことは、容易に予測できたはずです。

 先程の例を使って説明しましょう。金利6.875%ならポイントは0だとします。1ポイント、つまり$8,000余分に払って金利を0.5%下げてもらったとします。ポイントをいくら余分に払うと金利がいくら下がると言うのは、特に決まりはなく、金融機関によって異なりますので、具体的には利用する金融機関に問い合わせてください。この場合、金利は6.375%になり、毎月の支払いは$4,990.96になって、これなら借りることができます。

 しかし、実効金利は6.375%ではなく、6.471%です。$80万借りると言っても、そのために$8,000払っているわけですので、実際に借りる額は$800,000-$8,000=$792,000です。借入額が$792,000で、毎月の支払いが$4,990.96なら、金利を逆算すると6.471%になるのです。

 もとの6.875%より低いからいいじゃないかと思うかもしれませんが、将来金利が下がったらどうなるでしょうか。金利はほんの数カ月で倍以上になったわけですが、1年後に2%下がって4.875%になり、ローンを借り換えたとしましょう。しかし、前払いした$8,000はもう戻ってきません。たった1年借りただけなのに、$8,000もの利息を余分に支払うことになるのです。

 その場合どうなるか計算してみましょう。まず、1年後の残高ですが、$790,844.03になります。金利6.375%で$800,000の30年ローンを借りて、1ポイントの$8,000を払い、1年後に$790,844.03の一括返済をした場合の実効金利は、何と7.421%です。これなら、ポイントを払わないで6.875%のローンを借りたほうが得です。2年後に返済すると実効金利は6.918%で、ポイントを払わない場合の6.875%にかなり近くなります。3年後だと6.75%に下がり、得をします。極端な例ですが、借りてすぐ$80万完済すれば、金利は∞%です。

 ですから、ポイントが高くて金利の低いローンを借りることは、必ずしも買主にとって良いことではありません。しかし、ローンの支払いが高すぎて物件を購入できないときには、そうするよりほかないでしょう。

売主がポイントを払ってくれる?

 ところが、最近、そのポイントを払ってもよいと言う売主が増えています。ローンを借りられない人が多いので、何とかして売るためには、ポイントを払ってもよいと言うのです。

 その分家の値段を下げればいいではないかと思うかもしれませんが、それではローンの支払いはほとんど変わりません。$80万借りる代わりに、売主が家の値段を$8,000下げて、$792,000借りたとしましょう。毎月の支払いは、$5,202.88で、たったの$52.55しか下がらないのです。

 ポイントを売主が払うことを禁じている金融機関もあるそうですが、問題ないでしょう。売主が買主にするこのような支払いをクレジットと呼びますが、通常、何かの修理代として支払うことが多いです。例えば、成約後の点検で何かが壊れていたことが判明したとしましょう。売主は、それを修理することもできますし、修理代をクレジットとして買主に支払うこともできます。

 また、例えばカーペットが古いので、取り替えるために何千ドルかをクレジットとして買主に払いますと言うことを最初から宣伝することもあります。これも、その分家の値段を下げればいいではないかと思うかもしれませんが、頭金が足りなくて困っている買主が多いので、それを少しでも助けるための手段です。金融機関が、売主がポイントを支払うことを許さないのであれば、何かほかの理由でクレジットを払ってもらえばいいでしょう。

金利の一時的バイダウン

 ポイントを払って金利を下げることをバイダウンと呼びますが、バイダウンで金利を一時的に下げることもできます。最も多いのが、2/1バイダウンと呼ばれるもので、1年目に2%、2年目に1%下げ、3年目から本来の金利に戻ると言うものです。これは、実際に金利が下がるわけではなく、売主がローンの支払いの一部をエスクロー(第三者預託)に入金し、金利の割り引かれた分、そこから補填されるだけです。

 先程の$80万、金利6.875%のローンを例に説明しましょう。最初の1年間は金利が4.875%になり、毎月の支払いは$4,233.67になります。本来$5,255.43のはずですので、差額の$1,021.76は毎月エスクローから支払われることになります。

 これは、最初の2年間、支払いが少なくて助かると言うだけの話で、ローン審査とは関係ありません。買主が借りることのできるローンの支払いが月$5,000までであれば、初年度の支払いが$4,233.67でも、借りることはできません。

 ここがリーマンショックの時のサブプライムローンと違うところです。変動金利ローンは、金利変動のリスクを買主が負いますので、金利が少し安くなります。しかし、それだけで、借りられないローンが借りられるようになると言うことはそう多くないので、それをさらに割り引いたのです。割り引かれた金利に基づいて計算された支払額を支払う能力があると判断された人に、ローンを出していたのです。

 例えば5年後に金利が変動するとして、その時の金利がローンを借りたときと同じであったとしても、その時には割引がなくなりますので、金利はその分上がります。これでは支払いができなくなって当然です。しかし、2/1バイダウンにはそういう問題はありません。

 なかには、不動産業者がコミッションからポイントの一部を払ってくれると言うこともあるそうです。私は、そこまでして仲介をしたいと言うハングリー精神はありませんが、具体的なローン計算をしてほしいと言う方はご連絡ください。金融機関に実効金利を聞いても、買主の審査をするローンオフィサーが、そんな計算をしてくれることはあまりありません。

 ローンに必ず表示されているAPRは、annual percentage rateの略です。これは、ローンのポイントだけでなく、すべての手数料などを計算に入れた実効金利に近いものです。ですから、ローンを比較するときはこれを参考にしてください。ただし、ポイントを払って金利を下げて、何年支払いをしたら得をするかと言う計算は、APRを見ただけでは分かりませんので、ご注意ください。

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