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家賃規制してもお手頃家賃にはならない

 2023年IREM会長で、去年のIREMジャパン総会にも来てくださったレネー・サベッジさんの記事がIREMニュースレターに載りましたのでご紹介します。サベッジさんは、商業系および集合住宅の不動産セクターをサポートするコンサルティング会社、SavageCRE Inc の社長であり、34 年以上の経験を持っておられます。

 米国は、全国的な住宅不足で、家賃が高騰しています。これに対抗するために、いくつかの州や地方自治体は、住宅をより手頃な価格にするためのレントコントロール(家賃抑制策)を提案しています。しかし、過去の実績を見ると、家賃規制は想定どおりには機能しません。その理由をまとめましょう。

  • 既存の利用可能な住宅の数を減らす — 家賃がなかなか上がらなければ、入居者は引っ越しをする可能性が低くなり、その結果、新しいテナントが住宅を確保する機会がさらに少なくなります。引退して、本来ならもう少し郊外に住んで、家賃の安い住宅を借りてもよさそうな人が、何十年も都心の高層住宅に安い家賃で住み着きます。また、マイホームを購入する動機も薄らぐでしょう。
  • 必要のない居住者に補助金を支給 — 全米アパート協会(NAA)による最近の調査によると、住宅供給業者の 60% 近くが、家賃規制の恩恵を受けている入居者の中に高収入の人もいると述べています。家賃規制は主に中所得から低所得の家族に住宅支援を提供すると思っている人が多いですが、そんなことはありません。
  • 利用可能な住宅の質の低下 — 運営費は上がる一方ですが、賃貸収入が制限され、利幅が縮小します。そのため、必要なメンテナンスの経費削減を余儀なくされ、物件の改善がより困難になります。NAA の調査によると、住宅供給業者の 67% が、どうしても必要なものでない限り、メンテナンスや改善を延期した、あるいはする予定があると述べています。 
  • 新規建設の制限 — 賃貸料が管理されている地域では、不動産開発のインセンティブが低くなります。 NAA の調査で調査対象となったデベロッパーの多くは、賃料管理が実施されている場所への投資を避けると述べています。彼らは、地域の経済的要因次第で、家賃を自分でコントロールできるエリアに建設することを好みます。家賃規制をしている自治体は、開発規制も厳しいところが多く、誰も家賃が抑制されている中低所得家庭向けの新しい住宅を建てたいとは思わないでしょう。

全国で広がりつつある

 ところが、全国で家賃規制の法案が大幅に増加しています。 2022 年には、いくつかの州が家賃規制措置を導入しましたが、2023 年にはさらに多くの州が同様の法律を導入すると予想されます。そのいくつかをご紹介しましょう。

 コロラド州: コロラド州では今までにも何度か家賃規制法が提案されました。今のところ、可決されてはいませんが、2023年にもまた法案が出る可能性があります。

 フロリダ州: セントピーターズバーグとタンパの議会では、2022 年、家賃規制法案を有権者の直接投票で決めようとしましたが、実行できませんでした。オーランドを含むオレンジ郡では、家賃規制を実施する投票法案が可決されましたが、州の裁判官は、選挙当局が投票結果を認証することを阻止しました。2023 年には、これらの都市や郡が再び家賃規制策を追求する可能性があります。

 メリーランド州: ワシントン郊外のモンゴメリー郡は人口100万人以上で、家賃規制の取り組みを継続する予定です。

 マサチューセッツ州: ボストン市議会は最近、ミシェル ウー市長の家賃規制案を州議会に提出することを可決しました。この提案は、ボストンの家賃値上げの上限を消費者物価指数+6%とし、10%を超えないように制限するものです。

 ネバダ州: ネバダ州では、強力な料理労働者組合 (CWU) が州全体の家賃規制の支持者を支援しています。また、CWU が支援して選出された役人が州全体の法律制定を強く推進してきました。しかし、現職の知事で家賃規制の実施を支持するスティーブ・シソラック氏が共和党のジョー・ロンバルド氏に選挙で敗れたことが、大きな打撃となりました。それでも、2023年の州議会でまた強くプッシュすると予想されます。

連邦レベルでの家賃規制案

 残念なことに、現在、連邦レベルでも家賃規制の提案が検討されています。 1月、ホワイトハウスは「賃借人の権利章典の青写真」を発行しました。これには、テナント保護を強化し、家賃の手頃な価格を促進すると政府が考える一連の法案がリストされています。その中には、連邦住宅金融庁による賃借人保護と、法外な家賃の値上げの制限が含まれています。

IREMの主張

 IREM は、全米不動産協会 (NAR) と協力して、不動産管理会社が自主的に入居者を支援する慣行を取り入れるよう呼びかけています。これには、有効であることが実証されている様々な例が含まれています。例えば、政府が低所得者に出している住宅補助金が管理物件で使えることの宣伝、政府賃貸支援に関する情報提供、詳細な信用履歴のない申請者でも使える信用調査などです。

 また、IREM は、そのほかの不動産団体と連携して、国の提案が、州法や地方法と矛盾・重複し、混乱をきたす可能性についても声明を発表しました。 レネー・サベッジさんは、今年6月に大阪で開かれるIREMジャパンの総会にもいらっしゃる予定です。会員でなくても出席できますので、ご興味のある方はIREMジャパンにお問い合わせください。

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家賃規制してもお手頃家賃にはならない:IREM会長レネー・サベッジ
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